須賀健太さんが、演出に挑戦する心境を語りました。
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高校バレーボールを題材に、「週刊少年ジャンプ」で連載された古舘春一さん原作の「ハイキュー!!」。これまで小説やアニメ、ゲームなどさまざまなメディアミックスが行われており、アジア、ヨーロッパなど世界でも人気の作品です。
2015年には、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」として、ウォーリー木下さん演出で舞台化。2021年まで、12作品が上演されました。
そして、2023年8月から劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演として、新たな作品の上演が決定。初演から2018年まで主人公・日向翔陽を演じた須賀健太さんが、演出を担当すると発表され話題を呼んでいます。
フジテレビュー!!は、初めて演出を担当する須賀さんにインタビュー。「ハイキュー!!」という作品への思い、どんな演出家になりたいかなどを直撃。また、子役から活動を続け28歳になった須賀さんがターニングポイントだと思う作品や、役者として影響を受けた人、30歳へ向けてやっておきたいことなどを、たっぷり語ってもらいました。
主人公を演じる加藤憲史郎の決め手は「笑顔がかわいい!」
<須賀健太 インタビュー>
──劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演で演出を担当すると2022年8月に発表されてから、何か反響はありましたか?
舞台に出演する際に、演出家の方から「今度、演出をやるんでしょう?」とか、「すごいね」と声をかけていただいています。
今まで、いわゆる2.5次元の作品を見たことがなかったというスタッフさんにも今回の話が伝わっていたことがうれしいですね。
──演出することになった経緯を聞かせてください。
ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」は、2015年から2018年まで僕も出演していましたが、卒業後も公演が続き、2021年に完結しました。ただ、コロナ禍もあって、2021年の作品は全公演を上演できなかったんです。
自分は出演していない公演でしたが、一度作品に関わった人間として、悔しくて。そんなときに、プロデューサーさんから新しい「ハイキュー!!」の舞台を立ち上げたいと聞き、その際に「演出をやってみない?」とお話をいただきました。
もともと映像の監督などクリエイティブなことをしてみたいという気持ちがあって、いろいろな場所で発言していたんです。その思いをプロデューサーさんが汲んでくださって、演出に挑戦する機会をいただけたという感じです。
──稽古前とのことですが、今準備してることはありますか?
キャストオーディションに参加させていただきました。正直言うと、最初は名ばかりというか、そこまで深く演出に関わることはないのかなと思っていて(笑)。でも、300人くらいのキャストをオーディションで見ることになり、本当にやるんだな、と。
今は、脚本の打ち合わせ、音楽家さんとの打ち合わせなどをして、作品の土台を作っている状況です。
──実際にキャスティングする側となってみていかがですか?
オーディションが終わり、主人公・日向翔陽役を演じる加藤憲史郎くんをはじめとするキャストが決まったときは「この子たちと、ハイキュー!!を作るんだな」と、一気に現実味を帯びました。
前作を演出していたウォーリー(木下)さんも、こういう気持ちだったのかなと思う瞬間があって。一つひとつ体験できることが新鮮です。
──日向役に加藤さんを選んだポイントはありますか?
笑顔がかわいい!本人は物静かなタイプで、性格的には日向に全然似ていないし、話を聞くと自分に自信がないらしいんです。でも、日向の持つ人懐っこい笑顔が加藤くんにもあって。
あとは、僕が日向を演じたときは21歳になる年だったんですよね。だけど加藤くんは今15歳ですから、よりリアリティのある表情を見せてくれるんじゃないかなと楽しみにしています。
作品と役者の間に立つことを意識して稽古に臨みたい
──これから始まる稽古のなかで、「こんな演出家でありたい」という理想はありますか?
演出家一本でやられている皆さんのレベルの力を出せるとは思っていないのですが、その中で自分に何ができるのかということは常に考えています。
作品と役者の間に立つということは意識して稽古をしていきたいですね。役を作るうえでの悩みや問題点を共有しやすい環境を作って、役者をやっている僕だからこそ“一緒に深めていく”ということを大事にしていきたいなと思っています。
──春に出演した舞台「幾つの大罪~How many sins are there?~」の作・演出は戸次重幸さんでした。戸次さんも役者でありながら、演出を担当していましたが、何か相談はしましたか?
<戸次重幸「Wikipediaだ!」占い師・シウマに反発>
普通に話しているなかでハッとしたことがありました。
「自分がここに移動すると、相手はこう動く」、「自分がセリフをこういう言い方をすると、相手はこう返してくる」と、いちプレイヤーとして役者もいろいろと考えていることがあるんです。
戸次さんはそういうことを踏まえて「役者も演出している部分があるよね」と言っていらして。確かにそうかもと思いました。
演出とまでは言えませんが、どう見えるかということは僕も大事にしながらお芝居をしているので、言っていることは理解できましたし、あまり「演出だから」と考えすぎなくていいのかな、と。
──これから本格的に動き出す劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演。どんな舞台にしたいですか?
僕が演出をやるということが悪い方向にいかないように、話題作りというだけではなく、ちゃんと作品として面白いものを届けたいと思っています。
「ハイキュー!!」は、宮城県の高校の子たちが、一つのチームを作って、そこで成長し、みんなで頑張る青春群像劇。人間ドラマを大切に、改めて「ハイキュー!!って面白いな」と思ってもらえるような作品にしますので、楽しみにしていてください。
──気が早いですが、今回の公演のその先というのは考えていますか?
続けられたらうれしいですが、今はまだ…(笑)。ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」は、5年半続きましたが、最初はそんなに続くなんて思ってもいませんでした。1作品ごとに全身全霊をかけて作っていたので、まずは今回の作品に全力を注ぎたいと思っています。
30歳に近づき「自分の感性を大事にしてあげること」の大切さに気づく
──今回、演出に初挑戦しますが、何かに挑戦するときに大切にしていることはありますか?
振り返ってみると「あれは挑戦だったな」と思うことが多いので、「これは」と思って取り組むということはあまりないかもしれません。
ターニングポイントになる瞬間って、そう思って取り組むよりも、物事に大小をつけずに真摯に一生懸命向き合うことが、一番大事なのかな、と。
あと、30歳という年齢が見えるようになってきた今、何事も自分の感性を大事にしてあげることも重要なのかなとも思っています。
20代前半のときは「どうしたら面白く見えるかな?」とか、大衆性について考えることが多くありました。でも、自分の肉体を使って演じているので、そこから生まれるのは僕にしかないもの。そこに対する自信は、年々出てきていて。
十人十色ということは、どんな場面でも大事にしたいなと最近思います。
──具体的に、「あれは挑戦だったな」と思う作品は?
今回の取材だから言うわけではないですけど、「ハイキュー!!」は挑戦だったなと思っています。
芸歴20周年の年にも「ハイキュー!!」に出演していたのですが、子役からたくさんの経験をさせていただいて、“これまで”と“これから”を考える年に、この作品に携われてよかったな、と。
言葉にするのが難しいのですが…作品が大きくなっていく感覚を主演で味わえたことが、僕の中ですごく大きかったです。
巡り巡って、演出として「ハイキュー!!」に関われることもうれしいですし、現在進行形で挑戦している感じですね。
──本当にいいタイミングで巡ってきた役ということですね。
そうですね。本格的に舞台に出演するようになったのが18歳ぐらいなのですが、“舞台に立つ”という意識を持ったのがその頃だったんです。
その後いくつか舞台を経験しましたが、「代表作って何だろう」と考えてしまう瞬間もあって。でも、「ハイキュー!!」は間違いなく、僕の舞台における代表作だと胸を張って言えます。
──映像作品におけるターニングポイントとなる作品はありますか?
やっぱり『人にやさしく』(2002年/フジテレビ系)ですね。
それまでオーディションを受けてもなかなか受からなくて、ずっとエキストラをやってという日々で。『人にやさしく』は初めて連ドラでレギュラー出演した作品でした。しかも、毎話セリフもたくさんあって。
僕はあの作品から始まったと言ってもいいくらい、あの作品がなければ今の自分はないと言ってもいいくらい大きな作品です。
──当時のことは覚えていますか?
香取慎吾さん、松岡充さん、加藤浩次さんやスタッフの皆さんに遊んでもらったこととか、現場の雰囲気は覚えていますが、断片的ですね。もう20年前のことですから(笑)。
ただ、すごく楽しかったですし、大人がみんなで一つの作品を作る空気感というか、熱量を感じて、純粋にかっこいいなと思っていましたね。
──5月には「7.2 新しい別の窓」にゲスト出演して、香取さんと再会していましたが、それまで連絡をとることはなかったのでしょうか?
番組で共演ということはありませんでしたが、香取さんはライブや舞台があると声をかけてくださるので、毎回見に行っていました。
それに、今は僕がインスタに何か投稿すると、香取さんが「いいね」をしてくれます(笑)。ドラマ撮影時には考えられなかった超現代っぽいつながりですけど、うれしいですね。
影響を受けた人は森田剛「やりたいことをくれた」
──これまでたくさんの作品に出演していますが、影響を受けたと感じる人はいますか?
皆さんからいろいろな影響を受けていますが…森田剛さんでしょうか。出会いはドラマ『喰いタン』シリーズ(日本テレビ系)でご一緒したこと。
その後、森田さん主演の舞台「新感線プロデュースいのうえ歌舞伎☆號『IZO』」を見て、「劇団☆新感線いいな」と思い、もっと舞台がやりたいなと思ったきっかけでした。
僕の中で森田さんは「やりたいことをくれた人」。純粋に役者としても尊敬しています。
──舞台などを見に行った際には、やはり芝居の話をするのでしょうか?
あまり深くお芝居の話をすることはないですね。ただ、やっている様だけで見せてくれるというか、作品や役に対する思いは話さなくても伝わってくるものがあるので、そこがかっこいいですよね。
──2013年には、舞台「鉈切り丸」で森田さんと共演していますね。
「鉈切り丸」は、PARCO主催の公演でしたが、新感線のいのうえひでのりさんが演出をされていて、森田さんとの共演も新感線の作る舞台に出演するという夢も同時に叶ったので、すごくうれしかったです。
当時はまだあまり舞台出演の経験がなく、声の出し方など舞台に関する技術がまったくないときだったので、基本的なことからいろいろと教えていただいて。日々、目まぐるしかったです。
その毎日のなかで、袖から見る森田さんの芝居はとにかくすごくて。迫力もあったし、改めてすごい人だなと感じました。
今、僕はありがたいことにさまざまな舞台に出演させていただけるようになったので、また共演できたらいいなと思っています。あのころとは違う自分を見せられる機会があるとうれしいですね。
──近年、舞台への出演が増えてきていますが、その魅力はどこに感じていますか?
シンプルというか、潔いところですね。映像と舞台はバレーボールとビーチバレーくらいの違いかなと思っていて。根本は一緒なのですが、環境が違うし、ルールも違う。そうすると、やるべきこと、見せるべきものが変わると思うんです。
もっと言うと、映像作品は何ヵ月もかけて作品を作るじゃないですか。しかも、必ずしも順番通りにシーンを撮ることはできなくて。前後しながら、一つの役の感情の流れを、時間をかけて作る感じ。
でも舞台は、2時間や3時間のなかで起承転結をすべて体験できる。役者として“生きている感”があるのは舞台だなと思います。
そういう違いはありますけど、どっちがいいとかはないですし、どちらも楽しいし、どちらもできるようになるのが僕の目標です。
──では、映像作品の魅力は?
瞬発性とか、思ってもみなかった感情が出てきたり、化学反応が生まれたりすることですかね。
あとは、ドラマはだいたいタダで見られるということも大きくて。より多くの人に届けることができるのは、映像の魅力かなと思います。
キャピキャピ系の恋愛ものの作品に出たい!
──先ほど、年齢の話もありましたが、30歳になるまでにやっておきたいことはありますか?
仕事が増えれば、なんでもいいと思っているところがあるので(笑)、「30歳までに何か…」という感覚はないです。
ただ、自分のやること、言うことに対する責任って、歳を重ねれば重ねるほど増していきますよね。そういう意味では怖いのですが、心地よさもあると思うので、早く30歳になった自分が見てみたいと思っています。
話しながら考えていて気づいたのですが、僕、恋愛漫画の原作ものとか、あまりやったことがなくて。女子高生が映画館に集まるようなキャピキャピ系の(笑)。そういう作品にもっと出たいですし、高校生役とか、役的に期限のあるものは最後にやっておきたいですね。
──恋愛作品でキュンキュンさせたい?
いやいや、それは恐れ多いです(笑)。必ず報われない子って出てくるじゃないですか。そういうポジションで出てみたいです。
──では、30代になったらやりたいこと、目標はありますか?
最近、捜査一課の刑事や会社員の役をやらせてもらうことが増えて、役の幅が広がっている実感があります。30歳になると、もっと増えていくのかなと思うので、役に説得力を持たせられるような人間になることが目標ですね。
撮影:山越隼
スタイリスト:立山功
ヘアメイク:山崎はつみ
<劇団「ハイキュー!!」公演概要>
劇団「ハイキュー!!」旗揚げ公演
原作:古舘春一「ハイキュー!!」(集英社 ジャンプ コミックス刊)
演出:須賀健太
出演:日向翔陽役:加藤憲史郎
【東京公演】2023年8月
公演の詳細は、劇団「ハイキュー!!」公式サイトまで。
©古舘春一/集英社・劇団「ハイキュー!!」製作委員会