――ナレーション初挑戦となった『ザ・ノンフィクション』の印象を教えてください。

共感を超えてしまうほどの生々しい当事者的な感情と、映像の向こうの世界であるという客観的な視聴者の感情の両方が存在する稀有な番組だと思います。まるでこの番組そのものが、生き物のようです。

単にドキュメンタリーというだけでなく“その後”を追い続けることで、人生の波を痛感することができますが、それはとても残酷なことでもあって、その残酷さを全力の愛情で包んでいる番組ではないかと思います。

――ご自身にとって、ナレーションとはどんなお仕事でしょうか?

私は映像の仕事から演技の世界に入ったので、顔の表情が存在しない声の仕事にはコンプレックスがありました。

そのコンプレックスは、私自身が子どもの頃に声や言葉を出すことが難しく、小さな手術やリハビリを繰り返しながら今に至っている経験からも来ていると思います。

ですがつらい時、迷う時、私はこの番組を拝見し、時には録画して見て勇気をいただきました。ある意味、今回のナレーションは恩返しをしたような気持ちです。

――10年前に映画「力俥 – RIKISHA -」に出演していましたが、今回、人力車や俥夫の方の状況に触れ、印象に変化はありましたか?

実は、あれはまさに私が迷っていた真っ最中に出会った作品でした。当時、私はお仕事がなく、年に一回ドラマか映画のオーディションに受かることが目標でした。その目標はかろうじてクリアしていたのですが、「職業」として選べるかどうか分からない。

すごく悩んで「力俥 – RIKISHA -」の現場でもいろいろな方に相談をしながら撮影をしました。あの時出会った俥夫の方のプロ意識は、私の役作りの基本になっていると思います。

――今回のVTRで印象に残ったシーン、言葉は?

「私は娘に、心からおめでとうと言えませんでした」というミイさんのお母さんの言葉が心に刺さりました。親子の言葉ではあるけれど、どの人にも、どのことにも存在する葛藤だと思います。

悩みの種類はいろいろありますが、「どうして悩んでしまうんだろう」という悩みは本当につらいですし、人が人に期待してしまうことは愛情の裏返しでもあり、そのコントロールは家族でも難しい…心に重く刺さりました。

――「人力車に魅せられて」というサブタイトルにかけて、土屋さんが今“魅せられている”ものは?

人の身体のすごさです。今まで私は一般的な「成長」や「年齢」でしか自分の身体の変化を感じることがありませんでした。でも、こんなにも人は短期間で全身の状況や感覚が変わるのかと、日々驚いています。

人の身体はすごいと思ってきたけれど、想像以上でした。そしてすごさのレベルが、もっと細かく、もっと多くて、もっと激しい。瞬間、瞬間、奇跡の積み重ねでできているのが命なんだと実感しながら、その貴重な時間に魅せられています。

<ナレーションの一部を紹介>

<予告動画>

YouTube「FUJITV GLOBAL CHANNEL」で、『ザ・ノンフィクション』の予告動画を配信中!

5月7日(日)14時~「人力車に魅せられて3 ~浅草 女たちの迷い道~ 前編」 予告