伊達公子さんが、20代で抱えていたテニスへの思いを告白しました。
7月17日(日)の『ボクらの時代』(フジテレビ)は、陣内貴美子さん、益子直美さん、伊達公子さんが登場しました。
伊達公子、陣内貴美子に「やっと会えましたね!」
アスリートとして日本のスポーツ界をけん引してきた3人の出会いは、1992年のバルセロナオリンピック。
益子:そう。私が、バルセロナオリンピックの直前リポートで(陣内さんの)取材に行って。
陣内:(この中で)一番最初に現役をやめたのが、益子氏だから。
伊達:結局、何年に(現役を)やめたんでしたっけ?
益子:バルセロナの年。
伊達:その年にやめて、もうその年に(リポーターの)仕事で?
益子:そう。
伊達:早っ。
陣内:だから、同じ年なのよ。
伊達:出会ったのがね。
陣内さんと伊達さんは、同じ会社の「社員」と「プロ契約のテニスプレーヤー」として出会ったといいます。
陣内:(バルセロナ)オリンピックに行くときに、私のスーツケースの中に、伊達さんのタオルとかウエアとかユニホームとか、結構持って行ったんだよね?
伊達:(笑)。
陣内:オリンピックに出る人(自分)が、オリンピックに出る人(伊達さん)のために持っていくっていう(笑)。
益子:社員と…。
陣内:そうそうそう。私は「社員」でしょ。で、(伊達さんは)プロ契約してるじゃない。「これ、持ってきました」って言ったら…。
伊達:「やっと会えましたね!」って言って。「バドミントンの貴美子さんですね」って。
陣内さんは「テニスやってるときは、すっごい怖い顔してるじゃない?なのに、会ったときにめっちゃかわいくて。今日の衣装のような、ビタミンカラーの笑顔が印象的だった」とその出会いを振り返りました。
現役引退のきっかけは「ミス」
20代で現役引退を経験している3人は、そのきっかけを語りました。
益子:私はもう、ずっと引退したかったから。「向いてないな」ってずっと思ってた。スポーツに。勝負事とかがつらくて。やっぱり、自分に自信がなかった。
陣内:何かが、きっかけじゃないの?
益子:きっかけは、本当に‟屁”だと思ってた、天井サーブ(のレシーブ)。
陣内&伊達:(笑)。
益子:ああいうのは、チャンスだと思ってたのに、ミスしたの。
陣内:はじいちゃったの?
益子:はじいた。ちょっともう、「引退だな」って。
陣内:1球だけ(のミス)で、それを思ったの?
益子:うん、1球。
陣内:私はもう、サービスだった。バドミントンってスマッシュが速いとか、コースがどうのこうのとか、攻撃しているところをよくみんな言うんだけど、ダブルスで一番大事なのは、サービスなわけ。最初のサービス。
伊達:へぇ。
陣内:私は今まで、ずっと、自分の狙ったところに寸分の狂いもなく、全部きれいに(狙った場所に)行っていたわけ。100パーセントの確率で。それは、自分の中でも本当の自信だったわけ。それが、オリンピックの何ヵ月か前に「ん?何かちょっと違うな」っていうのがあって。でもそこで、「オリンピックまで頑張ろう」と。それが、やめようと思ったきっかけ。
陣内さんは「原因がわかれば直せたけど、それが何なのかわからなかった」と当時を振り返りました。
「強い伊達公子」に疲れ引退、そして現役復帰
陣内:(伊達さんに)あるよね?1回目(の引退のきっかけ)。
伊達:うーん。ないね。
益子:(笑)。
伊達:そういう意味では、2人みたいなきっかけは、ない。まったく違う種類。
益子:どういう?
伊達:もう、とにかく疲れてた。本当にテニスが、それこそ嫌いだった。
益子:うん。
伊達:もう、最後は。テニスって、毎週ランキングに追われるし、プロに入ったときはランキング表でどんどん上がっていくのが、やっぱりうれしかったし、楽しかった。目標としていたトップ10を目指していたけど、トップ10に入ったとたんに、ランキング表を一切見なくなった。
陣内:ああ、そう!
伊達:もう、嫌で、嫌で。「強くなりたい」とか、「グランドスラム優勝したい」以上に、もう疲れていたから。そこから解放されるんであれば、やめたいと思って。
当時を知る陣内さんは「強い‟伊達公子“っていうのに疲れてたのは、確かだよね」と言い、引退後の伊達さんは、さまざまな習い事や「家にいなきゃできないこと」を「全部やった」と振り返りました。
陣内:じゃあ、復帰したのは何で?
伊達:それはもう、マイク(※)よ。最初は「子どもいらない」って言ってて。「そろそろ子ども作ろうか」って言ったら、できなくて。子どもほしいと思ったらできると思ってたのに、できないっていうことに初めて…。
(※)元レーシングドライバーで、伊達さんの元夫のミハエル・クルムさん。
陣内:気づくよね。
伊達:気づいて。「あれ?こんなはずじゃないんだけど」みたいなことから、「ちょっと運動控えなさい」と言われるようなこともあって。
伊達さんは、「子作りに励んでたけど、あまりにも私がストレス抱えている姿を見かねて『やれば?』」と、元夫から背中を押されたと告白。
「まさか、世界にもう一回行くとは思っていなかったけど…」と、37歳での現役復帰を語りました。
世界のトップでは、相手にされないくらいの負けず嫌い
また、陣内さんは、子どもたちへの指導・育成に関わっている益子さん、伊達さんに質問しました。
陣内:昔と今と違って、こういうこと気をつけているとか、ある?
伊達:今のジュニアの子たちって、すぐ泣くのよね。
陣内:あはははは!
益子:(笑)。
伊達:私、まだ何も言ってないのに、顔見た途端にボロボロボロって泣く子がいるんだけど(笑)。私の昔のコーチみたいに、ガーっと言っても、子どもたちはついてこられないところもあるし。まず、彼女たちに、話してもらうように気をつけているかな。
益子:私たちの時代って、負けたら「何やってるんだ!」って、まず、いきなり「あれがダメだった、これがダメだった」って言われちゃうから、自分で何が悪かったとか考えたことがない。
伊達:うん。
益子:でも、良かったことも必ずあるのに、そこを気づかせてもらえずに、ダメなところばっかり(指摘されて)やってきてたから。(伊達さんの指導で)自分がどういうところを意識してどうだったかって、まず聞くというのはすごく良いと思う。
伊達:本当?良かった。
陣内:楽なんだよね。こうだ、ああだって言われたほうが。それをやればいいだけだから。
益子:各競技で「こんな子が向いている」とか、競技性みたいなのはある?「バドミントンには、こういう子が向いてる」とか、「テニスは、こういうタイプがいい」とか。
陣内:自分のことで言うと、一瞬で決まる競技は、私は向いてないと思ったの。例えば、100メートル走とか。
伊達:うん。
陣内:4年間頑張ってきて、オリンピック出て。スタートがちょっと遅れたとか、フライングとかあったらすごい嫌だなって思うし。でも、バドミントンとかだったら、緊張してたとしても、最終的に相手を利用しながらプレーができるから、バドミントンには向いていたかなっていうのはあったりする。基本的には「負けず嫌い」っていうのは、あったかもね。
伊達:私なんか、すごい負けず嫌いって言われるけど、世界のトップの中に入ったら、こんなかわいい負けず嫌い…。
陣内:えー。
伊達:(自分は)相手にされないくらいの、かわいい負けず嫌いだから。
陣内:それは、自分が思ってるだけじゃなくて(笑)?
伊達:(苦笑)。いや、私もたいてい負けず嫌いだと思うよ。でも、(世界には)「すみません、かないません」っていうような人たちばっかり。
伊達さんは「本当に上り詰めたいんだったら、それくらいの負けず嫌いでないと、って思ってしまう」と語りましたが「でも、錦織(圭)くんは、ひょうひょうとしてるんだよね。そこまで負けず嫌いじゃないのに、いけちゃうタイプ」と語る場面も。
子どもたちに選択肢を与えることが大事
益子:バレーボールは、6人、リベロとかポジションがそれぞれあるから。いいところをそれぞれ出せばいい。私は、ブロックがザルだったんだけど。
陣内:え、そうなの?
益子:全然ブロックが止められなくて。
伊達:へぇ。
益子:ブロックは得意な人にお任せして、その分、レシーブ頑張るからって。補えるところがあるから、背が大きい人も、小さい選手も大丈夫だし、性格がキツくても、弱くても、どんな性格の子どもでも、バレーボールは大丈夫。受け入れられると思う。
伊達:よくいう「ゴールデンエイジ(※)の間に、いろんなことをした方がいい」というのもひとつだし。「テニスが好きだから、子どもをテニスプレーヤーにしたい」って親の思いだけで、うまくいく場合もあるけれど、(子どもの)性格によって何が向いてるかってわからないから。
(※)9~12歳ころの、子どもの身体能力、運動能力が著しく発達する時期のこと。
陣内:わからないね。
伊達:子どもに選択肢を与えてあげるっていうのは、絶対大事だと思うよね。
3人は「もしも自分たちに子どもがいたら…」と思いを巡らせ、「(自分の子どもには)口出ししちゃいそう」「子どもと一緒に走っちゃう」などと言って、笑い合いました。
鼎談の最後は、これからの生き方について語りました。
益子:元アスリートって、本当に強くて、健康なんて心配してないんだろうって思ってる方いっぱいいるかもしれないけど。
陣内:もう、心配だらけですよ。
益子:着実に、年はとっているし。
陣内:とってる!もう、錆(さ)びついてるし。だんだん会話が自分の体のこととか、年金の話とか(笑)。
益子:話題がそっちにいくよね。
伊達:確かにね。
益子:そういう年になったね。
陣内:うん。私らはさ、みんな子どもがいないし。「さあ、どうしますか?」って話じゃない。貯金しててもしょうがないしってとこもあるし。
益子さんの「最近、保険に入った」という報告を受け、伊達さんは「そういうの苦手」と渋い表情。
陣内さんは、伊達さんに「どういうふうになりたいか?」と、詳しいアドバイスを展開し「こんなの、今(テレビで)話す話?」と笑いました。