『LOVE LOVE あいしてる』の三浦淳チーフプロデューサー(以下、CP)が、KinKi Kidsと吉田拓郎さんの魅力を語りました。

1996年10月から2001年3月まで放送されていた音楽バラエティ番組『LOVE LOVE あいしてる』。KinKi Kids(堂本光一さん、堂本剛さん)と吉田さんという異色のタッグが大きな話題となり、ゲストとの軽妙なトークや、番組オリジナルバンド「LOVE LOVE ALL STARS」の生演奏にこだわったパフォーマンスが好評を得ました。

その『LOVE LOVE あいしてる』が、特別番組『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』(7月21日放送)として、5年ぶりに復活し最終回を迎えます。

<『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』放送決定!>

フジテレビュー!!は、番組を担当する三浦CPにインタビュー。今回の番組が実現した経緯や見どころ、KinKi Kids、吉田さんとの関係性、3人の魅力などをたっぷりと聞きました。

吉田拓郎の「ラストのテレビ出演は『LOVE LOVE あいしてる』」という思いに感激

<三浦淳チーフプロデューサー インタビュー>

──今回の特番は、拓郎さんから番組へ「打ち合わせしませんか?」という声かけがあって動き出したそうですが、その連絡を受けたときはどんな思いでしたか?

以前から「やりたいね」という話は出ていたので、お声がけをいただいたことは、うれしかったです。そして、その時点で拓郎さんがテレビ出演を最後にされるとおっしゃっていたので、『LOVE LOVE~』らしくハッピーな感じで送り出せたらと思い、実現に向けて一段とギアが入った感じがしました。

──三浦CPと『LOVE LOVE~』、KinKi Kids、吉田拓郎さんの関係性を改めてお聞かせください。

『LOVE LOVE~』のレギュラー放送時、番組の担当はしておらず、放送を見て「こういう番組が作りたい」と思っていました。

その後、『堂本兄弟』などで、キンキとお仕事をさせていただくようになって。ちょうど今から5年前、キンキの20周年のタイミングのときに…すでに10年ぐらい一緒に仕事をしていましたが、初めて“お願い”をされたんです。「『LOVE LOVE あいしてる』を拓郎さんとできないかな」と。

キンキから名前を呼ばれたの、あれが初めてだった気がします(笑)。メイク中にいきなり「三浦さん」と呼ばれて、最初は驚きすぎて「え、呼ばれた?」という感じでした。

でも、実は僕自身、キンキへのお祝いとして『LOVE LOVE~』が復活できたらいいなと考えていたので、相思相愛だったんですよね。そこから2017年の『~16年ぶりの復活SP』が動き始めました。

そのとき、拓郎さんとも打ち合わせを重ねていたのですが、最初はマネージャーさんから来ていた連絡が、途中から拓郎さん本人から来るようになって。5年前の番組終了後も「またやりたいね」という話も含めて、年に2、3回メールのやりとりをしていました。

そんな中で、2020年10月『KinKi Kidsのブンブブーン』に奈緒さんがゲスト出演されて、拓郎さんの大ファンだという話で盛り上がって。キンキが「女優の奈緒ちゃんという子がいて、拓郎さんの大ファンなんだって」と連絡を入れたらしいんです。そうしたら、拓郎さんも興味を持ったようで、昨年「奈緒さんを交えて、何かやりたいね」という連絡が僕に来ました。

<『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』あいみょん、奈緒、明石家さんまが登場!>

その流れもあり、キンキも拓郎さんも『LOVE LOVE~』をやりたいという思いは常にお話されていて。最終的に、光一さんが今年の年始に「今年こそ『LOVE LOVE あいしてる』が実現することを心から願っています」とメールを送ったことで、拓郎さんも本格的にスイッチが入ったのではないか、と思っています。

その後、1月末くらいに僕のところに拓郎さんから「できないかな?」というメールが届きました。「90分のスペシャルをやりたい」と。社内で相談をしたら「120分でやりましょう」と言ってくれて、まだ枠は確定していませんでしたが、なんとか実現させようと動き出した感じでしたね。

──「吉田拓郎さんの最後のテレビ出演」というのは、どの時点で決まったことなのでしょうか?

まったく番組の具体的な話がなかった昨年10月の時点で、「ラストのテレビ出演は『LOVE LOVE あいしてる』にする」というお話をされていましたね。それだけの思いを『LOVE LOVE~』に注いでくださっていたことが、すごくうれしいです。

「KinKi Kidsの25周年のお祝い」と「吉田拓郎さんの最後のテレビ出演」という舞台をフジテレビに託されたということは、すごい重責だと思いますが、でも、なんとしてでも実現させたい、と強く思いました。

キャスティングや歌唱曲のセレクトに苦戦「1歩進んで2歩下がる」

──その後、特番は実現に向けてスムーズに進んでいったのでしょうか?

スムーズではなかったですね(笑)。ゲストや番組で歌う歌に関して、いろいろとありました。

拓郎さんのアルバム「ah-面白かった」の題字を書くという光一さんの現場と、アルバム収録曲の編曲とギター演奏に参加されている剛さんの現場に立ち会わせていただいたのですが、そのときに「ゲストはどうする?」という話になって。拓郎さんは「キンキの呼びたい人を呼ぼう」「僕に会わせたい人、いない?」とお話されていたんです。

それで、キンキのお2人には「考えておいてください」とお願いしていたのですが、後日いろいろとお話をしていたら、拓郎さんの中で、すでに会いたい人が明確に決まっていて(笑)。今回出演していただく、あいみょんさんと木村拓哉さんは、毎回話題に上がっていました。

歌に関しても拓郎さんは「この曲が歌いたい」と言いつつ、「キンキにも歌いたい曲を聞いてくれ」と、キンキのことも考えてくださっていて。キンキからは拓郎さんの曲があがってきて「いいですね!」と盛り上がっていると、拓郎さんが「僕の曲はやりたくない」と言いだしたり(笑)。

コロナ禍で、直接会ってみんなで会話ができない状況だったので、スムーズにはまとめられず、1歩進んで2歩下がるということが続きました。それでも、放送する枠が決まったり、何人かゲストが決まったり、1個ずつ決まってくことを拓郎さんも「それはうれしいね」と喜んでくださっていたのが、すごく印象的です。

──改めて今回の特番の制作過程と収録を振り返って、特に印象に残っている場面を教えてください。

バラエティ番組を含めて、いろいろな番組を制作している中で一番ワクワクするのは、番組側が「こうしたい」とか「こうならないか」と考えていることを上回ることが起きたときなんです。

今回で言うと、キンキと拓郎さんが合作した新曲「Sayonara あいしてる」は、その一つ。この日のために、この番組のために生まれたということにグッときましたね。

<KinKi Kids&吉田拓郎が語る、初の合作曲「Sayonara あいしてる」制作の舞台裏>

木村拓哉さんの選んだ楽曲「硝子の少年」もグッときました。

木村さんは当初「なんで僕がゲストなの?」と、驚かれていました。僕がひたすら「拓郎さんの指名で」「拓郎さんが会いたがっている」とお話しても「本当に!?拓郎さんと接点ないですよ?」と、なかなか信じていただけなくて(笑)。

それでも出演をご快諾いただき、「何を歌うか」という話になったときに、拓郎さんの最後の番組出演で、キンキの25周年で、視聴者に向けて「自分ができること」というのをすごく考えてくださったんです。

番組としては、もともとのコンセプトが「ゲストのラブラブな歌をセッションしましょう」ということだったので、「木村さんの好きな楽曲を」と聞き出そうとしましたが、「記念すべき回にやるのはその曲じゃない」と。すごく悩まれていて、悩んで、悩んで、最後たどり着いたのが「硝子の少年」でした。

しかも、「バックダンサーとして踊りたい」と。キンキを立てる演出──自分と、当時キンキのバックをやっていた風間(俊介)さんと生田(斗真)さんを呼んで、バックダンサーに徹したいという話が出てきて。さらに、「キンキにサプライズでやりたい」という話もあって。

木村さんに「バックダンサーを」なんて、僕らからは絶対にお願いできないですし(笑)、すごいものが生まれたなと思いましたね。

風間さんと生田さんに関しても、スタジオトークで「今日はこの2人が来てくれました!」と呼び込むこともせず、歌が始まったらいるぐらいの感じでご出演いただきました(笑)。「あれ!?」っていうぐらいが面白いんじゃないかという、木村さんの提案で。そんなこと風間さん、生田さんに言える人も木村さんくらいしかいないですし、木村さんだからこそ生まれたパフォーマンスでした。

<『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』木村拓哉、生田斗真、風間俊介が登場!>

吉田拓郎とは「自由奔放」その一方で見せる音楽への熱量が魅力

──三浦さんにとって、吉田さんはどんな方ですか?

無邪気というか、ピュアで子どもみたいな方ですね。拓郎さんはよく思い出話をされるのですが、『LOVE LOVE~』のレギュラー当時、初回以降、辞表を常に持ち歩いてそうなんです。「いつでも辞めてやる」という気持ちで番組をやってたという。

テレビに対して「出たい」という欲はなかったと思いますし、曲がったことはしたくないという芯がある方。でも、自分のやりたいことに対しては、すごく自由奔放というか。番組でも、ゲストの話から脱線して面白くなることがありますが、それはだいたい拓郎さんがきっかけ。今回の収録にもそういう瞬間がありましたけど、拓郎さんの魅力はその無邪気さ、自由奔放さにある気がします。

──自由奔放でありながら、自分なりのこだわりを持っているということですね。

そうですね。特に音楽に関しては、強いこだわりがあって今回、2週間前にリハーサルや練習をして…そこでいろいろと決めたのですが、本番当日にもアイディアがどんどん出てくるんです。

「Sayonara あいしてる」の制作に関しても、すごくこだわりと熱量を感じました。番組内で何曲披露するかなど、何も決まってない頃に、「新曲を作ろう」「僕が作詞して、キンキに曲を書いてもらおう」と拓郎さんが提案されて。しかも「番組で披露する1回のために」と。

それは、番組としてはとてもスペシャルなことですし、「ぜひお願いします」とお話したら、翌日の夕方にはもう歌詞が送られてきたんです。

そのぐらい音楽に対して、高い熱量があるんですよね。最後のアルバムを作って、これから先、曲を作ることはないはずだったのに、アーティストとしてはどこかに曲を作りたい気持ちもあったのでしょうか。

そこに「『LOVE LOVE~』で披露するために」という目標ができて、アドレナリンが出たんですかね。そのスピード感に、すごくびっくりしました。

それだけの熱量を込めて作られた曲なので、「Sayonara あいしてる」に関するこだわりは特に強くて。音楽監督の武部(聡志)さんに直接連絡して、アレンジも歌い分けもどんどん変えていって、リハーサル前後では違う曲になっていましたね。

──テレビを敬遠していた吉田さんのイメージは、『LOVE LOVE~』レギュラー放送時の前後でかなり変化したと思いますが、吉田さんを変えたものは何だったと思いますか?

KinKi Kidsとの出会いではないでしょうか。

拓郎さんとの打ち合わせは、9割雑談、1割仕事の話くらい。そこで『LOVE LOVE~』のレギュラー放送時のお話をよくされるのですが、「KinKi Kidsと出会って、僕の人生は変わった」と、言っていました。

日本の音楽界を変えたレジェンドである吉田拓郎が、50歳を超してから親友と呼べるKinKi Kidsと出会って、「僕の人生は、そっからが全てだ」と言うくらい、レギュラー当時の約5年は凝縮されたものだったのかな、と。

それまで拒否していたテレビに出て、やりたくないこともいっぱいあったと思いますが、付き合ってくださった。それは、「キンキと一緒だから」ということが大きかったんだろうな、と思います。

──今回の収録でも、お互いにボケとツッコミをしていて、絆の固さを感じました。

すごいですよね。逆にキンキも、拓郎さんと一緒にいると『KinKi Kidsのブンブブーン』では見せない雰囲気に…当時10代のKinKi Kidsに戻る瞬間があるなと感じますね。

KinKi Kidsが喜ぶと「特別うれしい」

──KinKi Kidsの魅力はどこに感じていますか?

キンキの番組から離れて5年くらい経っていて、年に何回かしかご一緒できないので、今の僕がKinKi Kidsを語るというのはおこがましいのですが…。

『堂本兄弟』をやっている頃の僕はディレクターで、キンキのお2人は僕が話すことに対して、「分かりました!やります!」というテンションではなく、「(淡々と)分かりました、分かりました」というリアクションでした。「本当に聞いてんのかな!?」と思っていましたけど(笑)、本番は説明したことをやってくれていて。

ただ、気軽に話せる関係にはなれず、信頼関係も築けてはいなかったので、キンキにとって僕は「2週に1回、収録現場で会うスタッフ」という感じだったと思います。

その後『~ブンブブーン』を担当させていただき、番組を作っていくうちにキンキがだんだん心を開いてくれて、協力的になった…と思っていましたが、実は昔からお2人とも協力的だったんだということに、自分が経験を重ねたことでようやく気づきました。

たとえリアクションが薄かったとしても、キンキのお2人は常に番組やスタッフ、出演者に対してすごく真摯に向き合ってくださっていたんだ、ということに気づけたというか。表現は難しいのですが、「愛情」を感じるようになりました。

どの番組も、出演者やゲストの方に喜んでもらえるように、「またこの番組に来たい」と思ってもらえるように制作していますが、キンキに喜んでもらえると特別うれしいです。「この人たちのために、頑張らなきゃ」と思わされる2人ですね。

──今回で『LOVE LOVE~』は最終回ということですが、それはやはり吉田さんのテレビ出演が最後だから、ということが大きいでしょうか?

そうですね。『LOVE LOVE あいしてる』は、KinKi Kidsと吉田拓郎さんの番組だったので。

──収録後の雑談で、「ハワイロケなら番組が復活するかも」という話も出ていましたが、その可能性はありませんか?

可能性は、まだまったく分からないです(笑)。なかなか番組で海外ロケに行ける状況ではないので…。皆さんに期待をさせるようなことは言えませんが、でも、拓郎さんが「ハワイに行くならちょっと考える」と言ってくれたので、何か考えたいとは思っています。

『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』は、7月21日(木)20時より、フジテレビで放送されます。