もう、言うことない!
先週、言いたいことあり過ぎる!だからありがとう!!って感謝したはずなのに、今週はもう、なんも、言うことない!
だって、先週の民代さん(高畑淳子)が、最終回でいいじゃん!ってくらい素敵な回だったっていうのに、今週はあれ以上に素敵すぎる民代さんの回なんだもん。こんなにも素敵で叩きのめしてくるドラマ、あった?
とは言っても、やっぱ、言いたい事あるよね。もうね、今回は何を言ったらいいんだろうって、見終わった後、一回、テレビ消して、散歩に出かけたよね。で、先日発売された『アライブ』のサウンドトラックを再生し、歩きながら、この第9話を噛み締めたよね。そして、散々言いたいこと整理して帰って来て、もっかい見たよね。そして寝たよね…。
お前の日常知らんがなって話なんですけど、つまり僕が言いたいのはですね、このドラマを見た視聴者はもう『アライブ』の住人になっちゃうってことなんですよ。木曜よる10時は『アライブ』の家に帰る感じで、『アライブ』の住人たちが笑えば嬉しいし、苦しめば悲しいし、懸命に生きている姿には勇気が湧くんですよ。だからこのドラマは感動できるとか、泣けるとか、共感度が高いとか、それはもちろんそうなんだけど、そのもっと先、登場人物たちと一緒に生きてる!って感じ…まさにアライブ!そういうドラマなんですよ!!うまいこと、言えた?
お伺い立ててどうするんだって感じですが、例えば今回のお話、もう自分の力で歩くことすらできなくなった全身がん患者(=民代さん)の願いを叶えるために、医師たちが病室をオシャレにセッティングしてパーティーを開催する…って、医師としてはやりすぎと言っても過言じゃないですよ。だけどこの作品は、民代さんが懸命に生きていることで、心先生(松下奈緒)や薫先生(木村佳乃)を生かし、視聴者の僕らも生かされているような気持ちになるんですよ。だから、あのパーティーは民代さんのためでもあり、心先生たちのためでもあり、僕らのためにも開催されたようなもので、全然やり過ぎじゃない。民代さんの願いをみんなで叶えてあげたい、いや、叶えさせてください!って感じになっちゃうんですよ。だってみんなと一緒に、支え合って、生きてるんだもの。
またそれは視点を変えて医療ドラマとして見た時に、医師によって患者が救われるんじゃなくて、患者によって医師が救われている…という構図になってるんですよ。そんな医療ドラマってありましたっけ?それってすごくないですか?
誰に聞いてんだって感じですけど、今回もやっぱり捨てシーンなし、無駄なセリフなし、泣かなかったシーンも一切なし!で、特にここがいい!って選ぶのは難しいんですけど、一つ選ぶとすれば、未だかつて合成のCG映像で泣けるドラマあった?だった、民代さんのパーティーのラストの素晴らしさですね。合成だからこそ泣けるっていうね。
そして、この民代さんのお話に、今回登場したがんが再発してしまった妊婦の静さん(山田真歩)のお話を重ねてくる巧(うま)さですよ。静さんは自身のがんの体験談を発信するフリーペーパーの編集長で、それが佐倉さん(小川紗良)の新たな生きる希望になり、そのことで民代さんの生き様が発信され、そこで静さんは大切な助言をもらい、それを見た心先生と薫先生が希望をもらう…というお話の全てが、どこかに、誰かに、反響して、生きていく素晴らしさを描いてるんですよね。
その見事に呼応していく展開が今回は特に神がかってましたね。もちろん、佐倉さんがたまたま読んでいたフリーぺーパーの編集長が、たまたま同じ病院にいたって、かなり都合が良過ぎるんだけど、この『アライブ』の世界観においては、神様がそう導いてくれているような気がするんです。だからそんな偶然あるわけないじゃん!なんて微塵も思わない。むしろ、ありがとう、人生って、人間って、こうやって互いに影響を及ぼし合って、関わって生きているんですね。
ああそうだ、「キャンサーギフト」(がんになって得たもの)のくだりもよかったー。一回民代さん自身が「大嫌い、だって、がんになんかなりたくなかった」ってそれを一回否定して、だけどやっぱり「キャンサーギフト」=一緒に戦ってくれる人がいる「愛すべきやぶ医者がね」って…あそこで泣かない視聴者、いるんですかね?
結局、言うことない!とか全然嘘だったわ。言いたい事ありまくりだったわ。
で、ラスト、薫先生が「大切な記念日があるんだ…」って…。
なに?一体何?怖い!大丈夫!?うん、でも、大丈夫、きっと、薫先生を信じてる!!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)