フジテレビ『アライブ がん専門医のカルテ』(3月19日最終回)で松下奈緒演じる腫瘍内科医の活躍が注目を集めている。患者に寄り添う医療とは、そして現場が抱える課題とは。北海道文化放送のニュース情報番組『みんテレ』にて、現場の医師が特集された。
札幌市内にある北海道大学病院。次々と訪れるがん患者に対し「治療や症状で困っていることや相談はいかがですか?」と優しく会話を続けるのが、腫瘍内科の大原克仁医師だ。さまざまな場所にできたあらゆるがんに対応している。
大原医師は「診断した段階で残念ながら完治が望めない人もいますが、その中でどのようにがんと共存し、患者さんに寄り添った適切な治療を提案できるか」に取り組んでいるという。
なぜそれぞれの臓器の専門医ではなく、腫瘍内科医が診察しているのか?
最適な治療を提案…がん治療における“指揮者”
がんの治療は、主に手術・放射線・抗がん剤の3種類。患者の今後の治療方針を決める症例検討会では、診療科の垣根を越えて話し合いが行われる。そこで大原医師が積極的に最適な方法を提案していく。いわばがん治療における“指揮者”である。
アメリカでは50年以上の歴史があり、がん治療の中心となっている腫瘍内科。日本ではまだ歴史は浅く、北大病院では2004年に発足した。しかし診察を希望するがん患者が全道から集まってくる。
遠方の患者は体力的・経済的にも負担
札幌市から約90キロ離れた歌志内市に住む、72歳の女性。カラオケが趣味で、一見病気かわからないほど元気そうに見えるのだが、おととし平滑筋肉腫という珍しいがんが見つかった。
手術で切除することは難しく、北大病院の腫瘍内科で月に10日ほど入院し、放射線と抗癌剤治療を続けている。
「完治はないのだけど、がんと付き合っていく。体力勝負です」と語る女性。入院の日に密着すると…タクシー、バス、そして再びタクシーを使い北大病院へ。2時間半かかり交通費も6000円を超えたことが分かった。
大原医師は「元気だった?がんは順調に小さくなっているからね」と笑顔で声かけをする。女性も「それが目的ではるばる遠くから来ているんです」と答えた。
遠方から通うのは、体力的にも経済的にも負担になる。これが腫瘍内科が抱える課題だという。
北海道大学腫瘍内科の秋田弘俊教授は「腫瘍内科を立ち上げている病院はいくつかありますが、北海道では札幌が中心。全道各地で腫瘍内科が増えるのが望ましいです」と語った。
次世代担う若手を育成「患者にうそをつかない医師に」
次世代を担う腫瘍内科医を育てるのも、大原医師の大切な仕事。さまざまながんと向き合うために必要なこととは?
大原医師「患者さんにとって自分の言葉が心に届くように説明し、決してうそをつかないように医師として心掛けている」
2人に1人ががん患者になる時代。患者に寄り添う地道な努力が、確実に広がりを見せていた。
写真提供:北海道文化放送