映画「コンフィデンスマンJP 英雄編」で、インターポール(国際警察機構)のスーパーエリートを演じている瀬戸康史が、シリーズ初参加で感じた感激と戸惑いを語った。
長澤まさみ、東出昌大、小日向文世が扮するコンフィデンスマン=信用詐欺師らの活躍が描かれ人気の痛快エンターテインメントコメディ「コンフィデンスマンJP」シリーズ。その最新作『英雄編』が公開中。
今作は、長澤演じるダー子、東出演じるボクちゃん、小日向演じるリチャードが世界遺産の都市、マルタ島・ヴァレッタを舞台に、壮大なダマし合いを展開。3人に加え、五十嵐(小手伸也)や赤星栄介(江口洋介)などお馴染みのキャラクターも登場し、シリーズ史上もっとも先の読めない展開とストーリーで、見る者を物語の中へと引き込んでいく。
フジテレビュー!!は、今作に新キャラクターとして初参加した瀬戸康史にインタビュー。現場でのエピソードや、マルセル真梨邑の役作りについて、またシリーズそのものの魅力についても語ってもらった。
<瀬戸康史 インタビュー>
マルセル真梨邑のフランス語に苦戦で「大丈夫かな!?」
──マルセル真梨邑は、これまで瀬戸さんが演じてきた役の中でも、有数の“鼻持ちならないキャラ”だったのではないでしょうか?
そうですね。舞台では何回か演じたことはありましたけど、映像作品でマルセルのようなトリッキーな役を演じることがあまりなかったので、テレビや映画で僕の出演作をご覧になっていた方には、新鮮に映るかもしれません。
──同じ警察組織の人間でも、「ルパンの娘」シリーズで演じた和馬とは全然違っていましたね。
そうなんですよ(笑)。最初にお話をいただいたときは、「えっ、また警察の役だけどいいのかな?」と思ったんですが、脚本を読んでみたら全然違うキャラクターで。
ただ、いざマルセルを演じるとなると、セリフが大変でした。フランス語が本当に難しくて…引き受けておいて「自分で大丈夫かな!?」なんて思いましたが、なんとかやり遂げました。
完成した映画を見たら、変に浮いている感じもなかったな、と自分では思っているので…大丈夫でしたよね?
──むしろ、サマになっていました。それにフランス語だけではなく、英語のセリフもありました。
フランス語と英語と、ほんの少しだけスペイン語のセリフもあって、ジェラール・ゴンザレス役を演じた城田(優)さんに指導していただいたんですけど、編集でカットされていました(笑)。今回ほど語学の壁の厚さを実感した役はなかったかもしれないです。
──フランス語は「R」の発音が難しいとよく言いますね。
本当に難しかったです。フランス語でスピーチをしたこともあったので、難しさは知っていたつもりでしたが、今回は長いセリフが多かったのと、指示を出す言葉…もう単語は忘れちゃいましたが、「行け!」と命令するときに、フランス語だと語尾で空気が抜けていく感じがあって、あんまりビシッと聞こえないのも、ちょっとした悩みでした。
英語だと「GO!」って力が入りますけど、フランス語だとなんかニュアンスが柔らかくなっちゃって(笑)。品はあるけど、“突撃感”があまりないねと、現場で冗談まじりに話していました。
“五十嵐イジリ”を目の当たりにして“コンフィ”を実感
──今回は、レギュラー陣の皆さんも物語の構造を理解するのに脚本を何度も読み直したと話していましたが、瀬戸さんはいかがでしたか?
すごく複雑だったので、「古沢(良太)さんの頭の中、どうなってるんだろう?」と思いました。でも、ホン打ち(脚本打ち合わせ)とか楽しいだろうな…。いろいろ頭を悩ませる大変さはあると思いますが、エピソードが全部カチッとつながったとき、「これだ!」っていう爽快感もあるんだろうなぁ、なんて勝手に想像したりして。
そんな古沢さんたちのご苦労を意識することなく読ませていただきましたが(笑)、今まで「コンフィデンスマンJP」で描かれてきた物語とは違って、ダー子、ボクちゃん、リチャードがそれぞれの線で動いていく構造がとても面白いなと感じました。
いろいろなシーンで伏線が回収されて、話がつながっていくところはワクワクしましたし、自分の演じたマルセル真梨邑という役がどう変化して、どう崩れていったら面白くなるのかな、とイメージを膨らませながら読みました。
──瀬戸さんがクランクインしたのは、どのシーンでしたか?
ゴンザレス邸にダー子たちが自衛官になりすましてやって来るシーンからでした。キャストの皆さんが現場にたくさんいて…しかもドラマ版から空気が出来上がっている中に、あとから自分が入っていくというのはすごく緊張感がありました。どういうテンションで臨めばいいのかなと不安でしたが、皆さん本当にアットホームな感じで迎えてくださって。小手(伸也)さんとは以前もご一緒したことがあったので、すごく助けていただいたなと思います。
──小手さんが演じる五十嵐への“愛あるイジリ”が現場では日常的だったそうですね。
そうなんですよ。僕は小手さんと舞台「23階の笑い」(2020年)でご一緒したことがあって。そのときは同じ楽屋でしたが、お互いにほぼ何もしゃべらなかったので、すごく静かだったんです。だから、周りからあんなにイジられてキャッキャッしている小手さんを僕は初めて見ました。「あ、“コンフィ”の現場って本当にこういう雰囲気なんだな」と実感したというか…。
でも、小手さんみたいな愛されキャラが現場に1人いると、いい意味で力が抜けてすごくいい雰囲気になる。舞台のときも三谷(幸喜)さんにはイジられてましたけど、キャストが小手さんをイジることはなかったので、自分の中ではだいぶギャップがありましたね。
──『英雄編』の現場では、麗奈役の生田絵梨花さんもアドリブで五十嵐イジリをしたと聞いています。
そうそう!生田さん、結構な強さで小手さんのお腹にグーパンしていたように、僕の目には映りました(笑)。田中(亮)監督も悪ノリしちゃって、「本番ではグーにしちゃいましょう」なんて生田さんに言っていて。でも、小手さんとの信頼関係があるからこそのアドリブなんだろうなと、僕は感じました。
気持ちよくダマされてくれたらうれしい
──「コンフィデンスマンJP」という作品や現場の魅力を、体感してみてどうでしたか?
やっぱり予想していてもハズされる…先の読めないところですよね。「え…こいつがアレだったの!?」とか「わ、よく見たらここにも出てきてたじゃん!」とか。じっくり見ていくことで発見できる伏線が、すごく面白い。
今回のマルセルは鼻持ちならないキャラでしたけど、スッキリ終われた感じがしているっていう。そういう…(ダー子たちにとっての)相手方のキャラクターにさえも、というか僕自身なんですけど(笑)、演者にもしっかり爽快感を味わわせてくれるところが、“コンフィ”の魅力じゃないかなと思います。
結構なヒントになっちゃいますけど、「ダー子、あんたはすごい!」って言いたいです。
──『英雄編』を最後まで見ると、いろいろな意味で瀬戸さんの言葉が効いてきますね。マルセルの見せ場と言えば、赤星役の江口洋介さんの前髪をつかんで顔を机に叩きつけるシーン。相当プレッシャーだったのでは?
いやぁ…あのシーンはもう…俳優としてのキャリアの長さとか、もちろん見えないところでプレッシャーとしてあったんですけど。そこで僕が変に遠慮して弱く前髪を握って「もう1回やります」なんていうことになるほうが、申し訳ないじゃないですか。そっちのほうが俳優としてダメだと思って、もう思いっきりいかせていただいて。
全部の動作を一切、手を抜かずにやらせてもらったんですけど、田中監督がまた悪い人で!結構いろいろなアングルを変えて、カットを重ねていくんですよ。「えぇ〜、またですか!?」と言いつつ、断るわけにもいかないから頑張りました…。
でも、あのシーンでマルセルの非情さというか、容赦のなさを僕自身も実感したので、やっぱり必要な描写だったんだろうなと思います。
──確かに、あのシーンでマルセルへのムカつき度がMAXになる人が多いと思います。
そのムカっとさせるのも、実は…っていうところがあるので、劇場に足を運んで観てくださる方々が最後にどう感じるのか、僕も楽しみにしています。
──「コンフィデンスマンJP」をずっと観てきたコアなファンの方々も、初見ではダマされるのではないでしょうか?
そうですね、気持ちよくダマされてくれたら僕もうれしいですし、マルセルという役に対しても、観る前と後とでは、だいぶ印象が変わるんじゃないかなと思っていて。単なるインターポールの嫌味なエリートだと思いきや…おっと、これ以上は(笑)。
続編への再登場に期待!「呼ばれたらいつでも出ます」
──ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人との対峙はいかがでしたか?
テンション上がりましたよ。「わ、有名人だ!」と思うような感じでした(笑)。フジテレビの湾岸スタジオでドラマを撮っていた時に、隣のスタジオで“コンフィ”を撮影している…ということもあって。「おぉ!いるいる」なんて興味本位で見ていたんですけど、まさか自分が参加させてもらえるとは思ってもみなかったので、とにかく『英雄編』に呼ばれたときはうれしかったです。
──マルセルというキャラクターは、膨らませがいがありましたか?
はい。『プリンセス編』でダー子がコックリ(関水渚)に言った「信じれば、何者にでもなれる」という言葉が、マルセルを演じる上ではフックになりました。彼の過去も自分の中でいろいろと想像できたところがありましたし。どういう意味なのかは、劇場で観終わったあとに分かると思います(笑)。
こじつけではあるんですけど、『プリンセス編』と自分がつながったのもうれしかったですし、何よりも名実ともに“コンフィ”ファミリーの一員になれたことが、すごくありがたかったですね。
──劇場版の「コンフィデンスマンJP」は、一度出演すると次のシリーズにも登場するような不文律がありますよね。
そうなってくれたら、僕はめちゃくちゃうれしいです。『英雄編』のラストからすると、マルセル再登場もあるのでは…と思うところもあるじゃないですか。何がどこまで真実なのかはわからないですけど、マルセル真梨邑としては呼ばれたらいつでも出ますので(笑)!
──今回、新たな一面を見せている瀬戸さんですが、「そういえば、まだ演じたことがなかったな」という役柄はありますか?
「ちゃんとしたお父さん」というと語弊がありますが、「ルパンの娘」シリーズで演じた和馬が家庭的なお父さんだったかというと、どうかなって(笑)。親子関係や家族にフォーカスした作品で、いわゆる普通の父親を演じたことがないので、これから年齢を重ねていく中で、いつか演じられたらなと思っています。
──最後に「これはダマされちゃったな」というエピソードがありましたら教えてください。
たいしたエピソードではないんですけど…小学校の給食でレバーの竜田揚げを「鶏の唐揚げだ」と友達に言われて、大盛でよそわれたことがあって。「やった!」と思って食べてみたら、全然鶏の唐揚げなんかじゃなくて。当時はレバーが苦手だったので、もう大変でした。
僕のクラスは給食を全部食べ終わらないと昼休みに遊びに行けなかったので、泣きながら食べた、という思い出があります。欲張ったらダメだよという教訓です(笑)。
撮影:島田香
取材・文:平田真人
映画「コンフィデンスマンJP英雄編」は、公開中。
制作プロダクション:FILM
配給:東宝
製作:フジテレビ・東宝・FNS27社
©2022「コンフィデンスマン JP」製作委員会
最新情報は、映画「コンフィデンスマンJP英雄編」公式サイトまで。