子育て中のママ同士、スッピンでオンライン会議したことも

幸せを誰かに運べるようにと、スペイン語で「天使」という意味の「angeles(アンジェルス)」という会社を立ち上げました。

そこからは怒涛(どとう)の日々。

2人とも子育て真っ最中なので、ひんぱんには会えません。

食事を作り、子どもをお風呂に入れ寝かしつけてから、スッピンの状態でオンラインでうちあわせをすることも多々あったそうです。

「作り手の顔が見えるカカオ豆を使いたい」

まず、こだわったのは、原料のカカオ豆選び。

タイのランパーン産のカカオはフレッシュでフルーティな酸味が特徴

「チョコレートの製造過程において“誰も嫌(いや)な思いをしない”形でつくりたいんです」

児童労働をさせていないか、適正な価格で取引されているか、当たり前のことをしっかりと守った商品であるか、ということは大前提ですが、それでもやはり自分たちの目で確かめたいと、2人はタイのランパーンへ飛びます。

生産者とコミュケーションをとりながら、豆の収穫から発酵、乾燥までを視察。ランパーン産のカカオが今回のコンセプトに一番合いそうだと確信し、「この工場と組む!」と取引先を決めました。

タイコーヒーアンドカカオのみなさんと

次の課題は、罪悪感がないチョコレートにするためにどうしたらいいのか。

この点については予防医学士の坂田武士さんのアドバイスをもらいながら、ハイカカオのチョコレートに腸内環境を整える乳酸菌や、現代人に不足しているビタミンをしっかり入れるという、異例のチャレンジをすることに。

なんども試行錯誤を繰り返した結果、リラックス、リフレッシュ、ビューティという3種類のチョコレートが完成。食べておいしいことが一番大事なので、味を決めるのにはかなり苦労したそうですが、結果的には「これまで味わったことのないようなチョコレートができた」と自信を見せます。

左から)「001 RELAX(リラックス)」、「002 REFRESH(リフレッシュ)」、「003 BEAUTY(ビューティ)」

実際、どんな味なのか試食させてもらうと…乳酸菌たっぷりの「リラックス」はカカオ70%のダークチョコなので甘さ控えめのスッキリした味わい。「リフレッシュ」は乳酸菌に加えビタミンCが入っているので酸味がしっかり。「ビューティ」は、なかなか配分が決まらず最も苦労したそうですが、結果的にオーツミルクを使いカカオ50%にしたことでマイルドななかにもフルーティな味わい、とどれもおいしく個性が光ります。

10月2日に開かれたお披露目イベントでは、平井さんと坂田さんとのトークセッションも行われ、チョコレートに込めた熱い思いに、多くの来場者が耳を傾けました。

日本予防医学マイスター協会  代表理事の坂田武士さんと

商品名のVIVID CACAO(ビビッド カカオ)には、ひとりひとりが内面から生き生きと輝いてほしいという意味が込められています。タイのまばゆい太陽の光や現地の方々の笑顔、原料のカカオの色がとてもVIVIDだったのもあり、この言葉を選んだそうです。

この状態で日本に輸送され、東京の工場で焙煎、粉砕し、チョコレートになります

明確なコンセプトのもと、厳選素材で丁寧に作られたこのチョコレートを通じて、みんながもっと自分を大切にする時間をもってほしいと語る平井理央さんと錦織まゆさん。

知り合って20年。お互いの人生を知り尽くしている友人同士とはいえ、一緒にビジネスをやるとなるとうまくいかないこともあるのでは?と尋ねると…。

カカオについて教えてくれたタイコーヒーアンドカカオのティムさん(中央)と

「2人でいると夢や理想ばかりを語ってしまうんです。本当はもっとリアリスト(現実的な人)がいた方がいいんですけどね…」と笑顔を見せた平井さん。

似た者同士、立ち止まることなく、ひたすら前を向いてきたから誕生したチョコレートの新しい形。思いが詰まった甘い一片が、たくさんの人に幸せを運んでくれることでしょう。

取材・文=木幡美子(フジテレビ サステナビリティ推進部)