「俺の試練まだ続くの?」とまで思った数々の病気を乗り越えた、ブラザー・コーンさんが今思うこととは?「生きがい」だという大切な存在を明かします。
生きがいは恩返しと6人の孫「若いエネルギーもらっている」
――病気を経験されて、普段はどういう心持ちで生活をしていますか?
自分では、精神的に強いとは思っていなかったんですけれど、どうやら強かったみたいです。なぜかというと、留置場に3週間入っていた時に(※)、仕事がなくなる心配とかもちろんあったなかでも、何も悪いことしてない自信があったから落ち込むことがなかった。「正義は勝つ」じゃないけれど、自分を信じ続けたから耐えられたと思うんです。
(※)マネージャーへの脅迫未遂で逮捕され略式起訴の後に釈放。
信仰心は昔からすごく強いんです。何かの宗教を信仰しているわけではないので、“他力本願”ではなく、“自力本願”。そういった意味で、人の優しさで生きられた、耐えられたという恩をどこかで返すということが自分の生き様だと思っているので。綺麗ごとを言っているみたいに聞こえちゃうかもしれないけれど。
あまりにもハチャメチャに遊んできましたが、人にしてもらった恩義はどこかで返していかないといけないという気持ちをいつも持っています。人を恨むと絶対に自分も恨まれるんですよ。1人恨むと、5人ぐらいに恨まれるような気がする。病気して優しくなったということもあるのかもしれませんが、「財産は人」だなと思っています。お金を稼ぐことはもちろん大事なのかもしれないですけれど、稼いで自分で使うというよりは、孫とか娘とか家族を幸せにするために働く方が、生きがいを感じます。
――すっかりお元気そうですが、最近は銀座にお店も開店されたそうで。
3年前にも、銀座の違う場所で開店していましたが、病気になっちゃったのでやめて。今度は2倍ぐらい広い場所で、「その頃には病気も治っているだろうな」と思って、一昨年の12月1日にオープンしました。オープンして良かったなと思うのは、コミュニケーションが取れる場所になったということ。1人1人の話を聞いたり、懐かしい顔には「あんまり変わってねえな」と言ったり。
この前、三浦知良が来てくれたんですよ。3時間テキーラ飲んで、2時間歌いっぱなしでした。やっぱりスポーツ選手ってすごいなと思いましたよ。俺も、病気をしてあまり飲めなかったのが、ちょびちょびっと飲めるようになりました。もう昔みたいに1時間ずっとテキーラを飲むとかは無理ですけれど(笑)。
――ご病気をされて得たものはありますか?
病気のおかげで気付いたことはいっぱいありますが、まずは人の恩義ですね。自分1人じゃ生きられないとか、そういったこと。あとは、自分のことをそんなに強いと思っていなかったけれど、強いということに気付いた。病気も全部耐えたり、逮捕されて刑務所にぶち込まれたり、事故もしたし、もう試練をいっぱい受けて「神様、俺の試練まだ続くの?」っていつも甘えているような感じですけど。
小さい頃も泣き虫だったし、今もNetflixを見て1人で泣いているし。男の友情を描いた作品に弱くて。孫からは「おじいちゃん」ではなく、「ヨーヨー」と呼ばれているんですが、泣いていたら孫から「ヨーヨー泣いてる~!」って言われて、「泣いてないよ!」ってごまかして(笑)。
――お孫さんは何人いらっしゃるんですか?
6月に6人目の孫が生まれる予定です。その上に3歳、4歳、5歳、7歳、8歳がいます。みんな集まるともう託児所みたい。でも、そこで若いエネルギーもらっているのかなと思うし、古臭いエネルギーをあげないようにしなきゃとも思います。
――お孫さんは『WON’T BE LONG』を知っていますか?
もちろん。娘が孫たちに見せて、「ヨーヨーだ!」って。画面にいる俺と隣にいる俺を交互に見て「誰?」って不思議そうにしていましたけれどね。
――最後に今後の展望を教えてください。
夏に40周年記念アルバムと、デビューアルバムのリマスター盤が発売になります。またCDを出させてもらえるなんてありがたいですよ。歌は歌い続けたいですね。バーの経営は本業ではないので。今まで銀座でさんざん飲んだ分の回収をしている感じです(笑)。
<書籍概要>

『WON’T BE LONG バブルと泳いだ人生』
著:ブラザー・コーン
プロデュース:Kaori Oguri
発売:講談社
【ブラザー・コーン(Bro.KORN)プロフィール】
1955年、東京都生まれ。大学在学中に出演した『とびだせものまね大作戦』(フジテレビ系)で注目を集め、1983年にBro.TOMと「バブルガム・ブラザーズ」を結成する。1990年にリリースされた『WON’T BE LONG』がミリオンヒットを記録し、1991年には『第42回NHK紅白歌合戦』に出場。2023年、乳がんと診断されたことを公表した。
2025年8月には、新曲含め新たにレコーディングされた楽曲が収録された40周年記念アルバム(2枚組)を発売。同時にデビューアルバムのリマスター盤もリリース予定。