ブラザー・コーンさん(69)が、初となる自伝を5月21日に発売。駆け抜けたバブル時代と華やかな芸能界の交遊録を振り返りました。
1983年にブラザー・トムさんと「バブルガム・ブラザーズ」を結成し、1991年に『WON’T BE LONG』のミリオンヒットで一世を風靡。バブル時代を象徴するかのように、“六本木の帝王”と呼ばれたコーンさんは、昭和から平成の芸能界を駆け抜け、数回にもわたる大病や芸能界引退の危機を乗り越えてきました。
2023年に男性には珍しい乳がんを公表し、現在は投薬治療は終了したというコーンさん。変わりゆく芸能界に対して、いま何を思うのでしょうか。1980年代~1990年代前半のバブル時代を駆け抜け、「最初で最後」と語る自伝『WON’T BE LONG バブルと泳いだ人生』(講談社)に込めた思いを聞きました。
ブラザー・コーンがバブル時代を語る「自伝というか“自爆本”」
――まずは、自伝を出版することになった経緯を教えてください。
2023年に乳がんを患った時に、女優でプロデューサーの小栗香織さんから「やりましょう」って言ってもらえたことがきっかけです。俺ならば、ということで、やっぱりバブルの時代の話を中心にして、まあ自伝というか“自爆本”ですよね。
人生とか生き様って、つまりは“死に様”だなと思っているから、こういった自分の歴史を残しておいてもいいのかなと思って出版することになりました。

――拝読し、バブル当時は社会だけでなく芸能界にも勢いがある時代だったなと感じました。実は、たけし軍団にスカウトされていたというエピソードには驚きました。
もともと、日本大学在学中に仲良くしてもらっていたCX(フジテレビ)のSディレクターから『関東乙女組』というラジオのモノマネ集団を作るから入ってくれと言われ、その時に集められたメンバーが後に日本テレビの報道局トップになり、『真相報道 バンキシャ!』他を作り、プロデューサー&作家も手がけた青山学院大学の学生だった藤田亨、そして今ではすっかり有名な放送作家になり、有名な番組を作っている法政大学の学生だった植竹公和、もう1人は今や落語会の御大で駒澤大学の学生だった桂竹丸といった、今でも大活躍している4人組でみのもんたさんの番組『劇ラジ!モンターマン大逆襲』(文化放送)にレギュラーとして大抜擢されました。
その時のゲスト漫才師がツービート(ビートきよしさん・ビートたけしさん)だった。そしてその番組を毎週聴いていた太田プロの方から「今度『たけし軍団』というのを作るから、君たち来ないか」とスカウトされたんです。もちろん初めてツービートを見た時から「なんて面白いんだ!」って大ファンになったし、たけしさんのところには行きたいけれど、僕はすでにあのねのね(清水国明さんと原田伸郎さんを中心に結成されたフォークデュオ)の事務所に入っていて丁重にお断りしちゃったんだよね。
その後、ブラザー・トムと「バブルガム・ブラザーズ」としてデビューして、たけしさんと共演した時に、俺のことを覚えてくれていたのはうれしかったですね。それが業界最初のたけしさんとの出会いでした。
――目をかけられても、そのチャンスを生かすというのはなかなか難しいのではないでしょうか。
大好きな、あのねのねのお2人に目をかけてもらえるとは考えてもいなかったです。ただ、昔から「歌を歌いたいな」とは思っていて、フジテレビのものまね番組に出てみたりしました。それで、「あのねのねだったら、歌もしゃべりもやっているし」と思ってお世話になることにしました。ギャグやお笑いも大好きだから、「この業界に入ったらしゃべりでもコントでもできる」と思っていたんですけれど、難しかったですね。
あのねのねの弟子ということでいろいろな番組出させてもらい、それで名前を売っていくうちにタレントとして自分が作詞作曲した歌を出すことになって。歌謡番組に出た時に、デビューした頃のキョンキョン(小泉今日子さん)と一緒に出演したこともあります。

――ブラザー・トムさんと、「バブルガム・ブラザーズ」を組んだ経緯は?
まだトムが『お笑いスター誕生』(1980年~1986年まで放送された日本テレビのお笑いオーディション番組)にとんねるずとかと一緒に出ていた頃、飲み友達になって、「ブルース・ブラザーズ(※1)みたいなのやりてえな」「やろうやろう」と盛り上がり、ブルース・ブラザーズのものまねグループみたいなのを組んだのがきっかけです。
そこから、新宿御苑にあった『昆』という芸能人ばかり来る隠れ家的なショーパブにバブルガム・ブラザーズ が初めて人前でブルース・ブラザーズのコピーバンドみたいな黒いスーツでお笑いと歌でデビューすると、たちまち超満員の大人気デュオになり、新宿のライブハウス「RUIDO(ルイード)」(※2)からスカウトが来てそこに出演することになった。
RUIDOの超満員総立ちの記録を作ったら、5社ぐらいのレコード会社からスカウトがきました。紆余曲折あって、同級生の佐野元春とか、ラッツ&スターとか、知り合いがいっぱいいたEPICソニーからデビューをしました。その頃のお客様の中には、学生の頃の久保田利伸もいて「ファンです」って見に来てくれていましたね。でも、僕らは歌よりもしゃべりで笑わせるほうが多くて(笑)。
(※1)コメディアンのジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが主演した1980年のアメリカ映画。彼らをフロントメンバーとするR&B/ブルースの音楽バンドとしても活動している。
(※2)多くの有名アーティストの登竜門となった伝説的なライブハウス。
デビューからバブルガム・ブラザーズを結成時を振り返ってくれたブラザー・コーンさん。『WON'T BE LONG』の大ヒットとバブル時代の芸能界について語ります。