7月25日(土)放送の『週刊フジテレビ批評』は、「“違和感”を楽しむ!夏ドラマ徹底放談」の前編。
“新型コロナウイルス”の影響による中断後、次々と再開した春ドラマと、新作夏ドラマが入り混じる今クール。
そうした状況を踏まえつつ、ドラマ解説者・木村隆志氏、日刊スポーツ芸能担当記者・梅田恵子氏、ライター・吉田潮氏というドラマ通たちが、夏ドラマを徹底的に斬った。
まずは現在の状況を、木村氏が解説。
木村:延期されていたドラマが6月、7月から始まり、8月、9月に夏ドラマがスタート。毎週何らかのドラマがスタートするという異例の状況が、ドラマ好きにとってはかなり熱いというのがひとつ。
もうひとつは、春ドラマを今放送しているので、衣装が春物だったり、桜のシーンがあったり。そういう映像の違和感も見ようによっては楽しく、Twitterではよくツッコまれています。それも含めて違和感を楽しむという傾向があります。
前作より明らかにパワーアップしている『半沢直樹』
今回も、各人が選ぶイチオシ作品を3つセレクト。その中で、木村氏がまず挙げたのは、7年前に大ヒットしたドラマの続編『半沢直樹』(TBS)。
木村:普通、続編ものというと、パワーダウンしつつも無理やり続けていく作品も多い中、この作品に関しては、前作より明らかにパワーアップしています。その理由は、半沢が証券会社に出向したことによって、親会社と子会社、買収する側・される側など、人間関係が重層化し、感情が渦巻いているから。
「倍返しだ!」という作品の見せ場もきちんとやっているし、半沢の妻役の上戸彩さんや、敵役の香川照之さんなど、原作にはない人をわざわざひっぱってきて、視聴者の期待に応えるというサービス精神もあります。
梅田:ヒール役がクセ者揃いで、もう“歌舞伎勢の快刀乱麻”ですよね。バラエティに富んでいて、すごく面白いです。「もうちょっと前回と違うものになるのかな?」と思ったら、しっかり様式美を踏襲していて(笑)、ちゃんと「クソ!この野郎!」と思うところで翌週につながる。あのへんもうまくて、楽しめています。
吉田:うん、面白かったです。顔芸をすごく楽しみました。ただ、女性不在のドラマなので、私はそこが気になっています。
『BG~身辺警護人~』は完全に長期シリーズ化を狙った作品
梅田氏は、同じく続編で、木村拓哉がボディガードを演じる『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日)をプッシュ。
梅田:これはもう、木村拓哉さんと斎藤工さんのタッグが素晴らしくかっこよくて、それを見てるだけで面白いです。展開に次ぐ展開も、政財界を巻き込んだ大きなものから、無職の人を守るアットホームなものまで、話がバラエティに富んでいて。1 話完結としては、ホントに面白く見れたので、7月30日放送の最終回を楽しみにしたいと思います。
木村:チーム戦からバディ戦へ、会社組織からフリーランスに変えてというのは、完全に長期シリーズ化を狙った策ですよね。もう「あからさまだな、テレ朝さん」っていうぐらい(笑)。
そこも含めて、手堅く中高年層を狙っていくというのが随所に感じられるので、木村拓哉さん主演のドラマだったら、もう少し広い世代を狙ってほしいなという希望があります。
吉田:まぁでも、“高齢者向けのテレ朝”ですからね。シリーズ化して 東山紀之主演の『刑事7人』みたいな感じで、周りのメンバーをとっかえひっかえ、でも主役はそのままというスタイルを長期戦でもっていくのかなという感じで見てました。
続いて吉田氏が選んだのは、警視庁“機動捜査隊”(通称:機捜)で綾野剛、星野源演じる刑事が24時間というタイムリミットの中で犯人逮捕に尽力する『MIU404』(TBS)。
吉田:これは機捜の話で、新規性はそんなにないんですけど、このバディがやっているというのと、セリフの端々に警察組織が男社会であることの違和感に対する反論を盛り込んでいるところが、私は見ていてすごく気持ちがいいんです。私の中では、“女性が違和感なく見られる刑事もの”というイメージで楽しんでいます。
(物語自体も)このあともう少し層が重なっていって深いものになるんじゃないか。それが(『逃げるは恥だが役に立つ』の脚本家)野木亜紀子の実力じゃないかと思ってるんですけど。
梅田:そうですね。犯人側の事情の深さが、そこらへんの刑事ものとはちょっと格が違う。愚かすぎるし、切なすぎるし、そういう胸をつかむような人間ドラマが、「野木ワールドだなぁ」という面白さがあります。
『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』の手腕を評価
そして梅田氏が挙げた『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ)には一定の評価が。
梅田:これは薬剤師の視点から見た医療ドラマということですけれども、昨年『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ)で窪田正孝さんが演じた放射線技師の薬剤師版かなぁという、黒子役からの見方の面白さですよね。
調剤室のすさまじい風景とか、麻薬取締官の定期的な調査とか、一般の人が知らないことがいっぱいあって、そういうトリビアを見てても面白いですし、薬剤師役の石原さとみちゃんがこの役としっかり向き合っているのがわかるんですよね。彼女の「感謝されたいなら、この仕事は向かない」っていうセリフがけっこうグサッときて。
頑張り屋でメンタルもすっきりして、自立した女性というのも私の好きなキャラクターなので、これは楽しみに見たいと思います。
吉田:医者じゃないシリーズ第2弾という感じですよね。制作陣が営業先を調剤薬局とかに持って行った手腕をほめたいし。ただ、なんでもできてすごくよく気が付く、実力のあるスーパー薬剤師というところで、ご都合主義になってしまわないかというのが懸念材料です。
木村:知人の病院薬剤師さんに聞いてみたら、ドラマの描写はリアルだっていうんですよ。けど、ネット上の声を見ていくと、「薬剤師はあそこまでやらない」という声が多いんです。これは完全に風評被害(笑)。正しい情報が伝わっていないので、ネットメディアをうまく使って後方支援してあげてほしいと思うんです。
梅田:タイムリーな話題でもありますしね。お医者様のほうばかり賞賛されがちですけれども、こういう縁の下で頑張ってらっしゃるかたもしっかり描いているというのは意義深いことだと思います。
さらに今クールは、まだまだとっておきの作品が!?大盛り上がりの後編は、8月1日(土)に放送。