『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』第8話完全版
甘春杏(本田翼)のインタビューが掲載された雑誌が発売された。
放射線科医のやりがいについて話す杏の生き生きとした笑顔の写真に思わず夢中になる五十嵐唯織(窪田正孝)。同じ頃、広瀬裕乃(広瀬アリス)は、鏡に映る自分の頭皮に10円玉大に毛が抜けている部分を発見し、激しいショックを受けていた。
そんな裕乃のもとへ、高校時代の担任だった熊田太志(おかやまはじめ)がやってくる。学校で具合が悪くなった生徒に付き添って病院へやってきたという熊田は、そのついでに、裕乃に母校での講演会を依頼。進路に悩む後輩たちに、放射線技師の仕事について話してほしいというのだ。
そこで唯織は、講演の参考になればと杏の記事が載っている雑誌を裕乃に手渡す。「恋に仕事に負けっぱなしだな」と軒下吾郎(浜野謙太)に言われ、劣等感が募る裕乃。
ほどなく裕乃は、熊田が連れてきた女子高生・花倉乃愛(吉川愛)の検査を担当する。乃愛は、3ヵ月ほど前から急にふらつくようになったらしい。痩せてはいたが下腹だけがポッコリと出ている乃愛は、検査の間もそれを隠すように手で押さえていた。
乃愛のMRI検査を見守っていた唯織は、検査室に入るなり「妊娠している可能性はないかな?」と乃愛に尋ねる。妊娠なんてあり得ないと乃愛が怒ると、今度は、乃愛の頭を見て、ウイッグなどは付けていないかと言い出す唯織。
実はウイッグを付けていた乃愛が仕方なくそれを外すと、なんと彼女の髪は白髪交じりのグレーヘアだった。
受診した医師にも髪の毛のことは話していなかった乃愛は、親や学校にも言わないでほしいと懇願した。唯織たちは、何か原因があるかもしれないからキチンと検査してみよう、と乃愛を落ち着かせた。
MRI検査の結果、乃愛は貧血が疑われた。だが、唯織の提案で骨密度を測定するDEXA<デキサ>を行うと、乃愛は骨粗しょう症であることが判明する。原因は、無理なダイエットだった。杏は、裕乃とともにダイエットの危険性を説き、キチンと食事をとるよう乃愛にアドバイスした。しかし乃愛は、自分の見た目のことは自分が一番分かっている、と言って反発し、席を立ってしまう。
裕乃は、10円玉大に毛が抜けてしまったことを乃愛に見られたことを引き合いに出し、乃愛のことも教えてほしいと言って説得し、事情を聞く。
乃愛の夢は、世界で通用するアイドルになることだった。しかし、太っていたことからオーディションに落ち続けてきたため、この半年の間に必死にダイエットをして10kg痩せ、初めて書類審査に通ったのだという。しかも、たった5人しか選ばれないこのオーディションには、一つ年下の乃愛の妹・美桜(安藤ニコ)も参加。美桜は色白でスタイルも抜群だったため、SNSのフォロワーも多いらしい。そうした状況もあってか、わざわざ乃愛のSNSに「妹のほうが100倍可愛い」「妹の劣化版」などという心無いコメントを寄せる者も。
もうすぐオーディションの本選を迎える乃愛の強い思いを知った裕乃は、自分に自信をつけたいという彼女の気持ちにも共感し、つい応援すると約束してしまい…。
女子トイレに向かった裕乃は、熊田に電話して講演会の依頼を断る。電話を切り、ふと鏡の前で頭髪を気にする裕乃。するとそこに循環器内科医・大森渚(和久井映見)がやってきて、脱毛してしまった部分を見られてしまう。
一方、乃愛は自宅でレッスンをしていた。が、髪の毛が大量に抜け落ちることに気づき、大きなショックを受けていた。
渚から誘われてお茶を飲んできた裕乃がラジエーションハウスに戻ると、威能圭(丸山智己)が待っていた。威能は、裕乃に骨の仕組みについて分かりやすくまとめた資料を手渡した。それは、唯織や黒羽たまき(山口紗弥加)らラジハメンバー全員の協力を得て作成したものだった。「口で言うだけでは、骨粗しょう症の怖さは伝わらないと思うので」。威能は、そう裕乃に告げ…。
あくる日、裕乃は母校を訪れ、乃愛に会いに行く。そこで、威能から渡された資料を手渡す裕乃。しかし乃愛は、ダイエットを止めるつもりはない、と怒り、裕乃の手を払って資料を受け取ろうとはしなかった。
肩を落とし、帰ろうとする裕乃に声をかけてきたのは、2人の様子を見ていた乃愛の妹・美桜だった。美桜は、乃愛が無理なダイエットをしていることも知っており、いつも楽しそうに踊っている大好きなダンスもつらそうだと裕乃に打ち明ける。美桜は、踊っているだけで人を惹きつける乃愛にずっと憧れていたのだという。
子どもたちと楽しそうに踊る乃愛のダンス動画を見た裕乃は、意を決し、もう一度、乃愛に会いに行く。
乃愛は、それでも裕乃の話に耳を貸そうとはしなかったが、次の瞬間、突然激しい腹痛に襲われて倒れてしまう。乃愛の体を支えようと頭に触れた裕乃は、大量の脱毛に気づき…。
救急医・辻村駿太郎(鈴木伸之)は、甘春総合病院に救急搬送された乃愛の腹部レントゲン検査を指示する。しかし、レントゲン画像には腸閉塞などを示唆する所見はなかった。そこで唯織は、エコー検査をしてはどうかと提案する。10代の女性ということを考慮し、被爆をできる限り避けるための提案だった。だが、唯織が検査室に入ると、そこに乃愛の姿はなかった。乃愛は、勝手に部屋を抜け出し、オーディション会場に向かおうとしていたのだ。
激痛に襲われ、エレベーターの前でうずくまっている乃愛を見つけた裕乃は、彼女を説得。思いつめる乃愛に、好きな男性がいるがその男性には他に好きな女性がいること、その女性と自分を比べて劣等感を抱いて落ち込み、そのストレスから毛が抜けてしまったことを話す裕乃。
続けて裕乃は、夢を叶えることも大切だが、それ以上にせっかく見つけた大好きなことを大切にしてほしい、20年後も30年後も大好きなダンスをずっと元気に続けてほしい、と訴えた。「もっと自分を、大切にして」。裕乃の言葉が心に届いた乃愛は検査に同意し…。
裕乃は、唯織のアドバイスを受けながら、乃愛のエコー検査を行った。すると、乃愛の卵巣に腫瘍が見つかる。激痛の原因は、この腫瘍が捻転しているためだと思われた。
乃愛は、ただちに手術を受ける。切除された卵巣腫瘍は、セルトリ・ライディッヒ腫瘍の疑いがあった。セルトリ・ライディッヒ腫瘍が卵巣にできると、男性ホルモンを産出し、声が低くなったり、脱毛の症状が出たりすることもあるのだという。
無事に手術を終えた乃愛は、見舞いに来た裕乃に、以前渡そうとしてくれた骨に関する資料がほしいと頼む。
別の日、乃愛は病室からライブ配信を行った。そこで乃愛は、自らウイッグを取り、無理なダイエットの危険性を訴えると、裕乃のことにも触れ、誰かに元気を与えられる素敵な大人になりたい、と話した。
唯織は、読影室で乃愛の画像を見ていた杏に、乃愛のことを報告に行く。乃愛は、もう無理なダイエットはしないと約束してくれたという。杏は、去っていこうとする唯織を呼び止め、彼がセルトリ・ライディッヒ腫瘍の可能性に気づいていたことに言及し、自分よりもよっぽど医者らしいとこぼす。唯織は、即座にそれを否定すると、「僕がずっと心から尊敬している医者は、甘春先生…あなたですから!」と口走ってしまい…。
元気を取り戻した裕乃は、改めて母校での講演会を引き受ける。頭の脱毛部分も、いつの間にかすっかり元通りになっていた。
乃愛は、もうウイッグを使わずにいた。子どもたちと楽しそうにダンスをする乃愛の動画を見て、笑顔がこぼれる裕乃。威能は、そんな裕乃に「美しいですね」と声をかけた。乃愛のことかと思い、「はい」と答える裕乃。すると威能は、「広瀬がですよ」と返して…。