満島ひかりが、約7年ぶりに“語り”を務めた『ザ・ノンフィクション 切なくて いじらしくて メチャクチャなパパ~家族が映した最期の立川談志~』が、11月21日(日)14時~放送(※関東ローカル)される。

2011年11月21日、“天才”の名をほしいままにした男がこの世を去った。落語家・立川談志さん(享年75)。歯に衣着せぬ過激な発言や破天荒な振る舞いが注目された談志さんが、家族の前で素顔をのぞかせる未公開映像が見つかった。

12年にわたり撮影された映像は、1000時間、テープにして約750本に上る。主にマネジャーを務めた長男・松岡慎太郎さんが撮影し、時に談志さん自身が“自撮り”したものだ。

そこには、孫と遊ぶ優しい表情、これまで公開されたことのない最愛の妻との日常や、ビートたけし、中村勘三郎さん、森繁久弥さん、和田アキ子といった大物芸能人たちとの私的な交流なども記録されている。

さらに、談志さん本人が部屋で一人撮影した“自撮り”映像も多数残されていた。カメラに向かい語るのは、襲いかかる老いへの不安、いら立ち。「生きるというのはつらい」「死にたい」という心の叫びだ。

半世紀にわたり表舞台に立ち続けた談志さんが、日々衰えていく肉体にうろたえ、ときに心が壊れそうになりながら、もがき、苦しむ。

それでも自らをカメラにさらし「落語家なんだから、恥もすべてぶちさらす」とうそぶく。それは「落語とは人間の業の肯定」と語り続けた男の宿命だった。

そして談志さんは、落語家にとって命ともいうべき声を失い、七転八倒する姿を、死の直前までカメラにさらし続けていく。

今回、“語り”を担当した満島には、そんな談志さんの姿はどんな風に映ったのか?収録後に聞いた。

<満島ひかり インタビュー>

――ナレーション収録を終えての感想は?

自分が談志さんと出会っている感覚、お客さんや視聴者の目線、ナレーションをして作り手に参加する感覚といった、3人くらいの自分がずっと同時進行していました。

こんなに生き生きとした談志さんだから、ナレーションの私も、負けずにエネルギーに満ちていたい!、もっと面白くできるかなと、気持ちがワクワクして。やっぱり、エネルギーの大きな方との仕事は楽しいです。

ここには、談志さんの人生の1時間分しか映っていないから、それを私が語ることはできませんが、めちゃくちゃで面白いなって。お会いしてみたかったです。

――収録中に「パンチを食らう」と話していました。

急におならしたりとか…(笑)。普通の人は「そこではそれをしない」っていう不意打ちがたくさんあって、見ていて飽きないです。ちょっとした日常の“可笑(おか)しみのセンス”がいいし、やっぱり間がいいですよね。

ふざけてるし、脅かしにもくるし、いたずらされてドキドキする感じで、大好きだなあと思って見ていました。

――印象的だったのはどんな場面ですか?

一番印象的だったのは、和田アキ子さんの“女の子”な顔。和田さん以外でも、談志さんを見つめる人たちの顔が印象的で、(ビート)たけしさんは「こんな顔して談志さんの横にいるんだ」とか、(中村)勘三郎さんが少年みたいになっているとか、談志さんの奥さまや娘さんもそうですけど、周りにいる人たちの談志さんを見る目がたまらなかったです。

本当にめちゃくちゃ魅力的だったんだろうな、って。めちゃくちゃやってんのに、すごく愛されてるとか「最高じゃないか」って(笑)。

ご本人が老いを気にされているのも印象的でした。「人間なんて老いるのが当然だよ」みたいにおっしゃるのかと思ったら、美意識が高いというか、皮膚のたるみや白髪を気にしていらっしゃったり。

見ている私からすると、そんなの関係なく、何をやっても魅力的だし、全然カッコいいんだけどな、と思っていました。

――共感できるようなところはありましたか?

いっぱいありました。わりと近いところもあったなと(笑)。人を巻き込んでしまうこととか、自分の“感性の海”をぐるぐる泳ぐような感じとか、気持ちをうまく言語化できなくて、効果音をいっぱいしゃべるところも、シンパシーを感じます。

それと、「嘘をつかない」ってこと。自分の人生に嘘をつかないというのは、私もずっとやっています。私の場合、嘘をつけないという方が正しいかもしれませんが。ナレーションを読んでいて「おお、一緒だ!」と思いました。

――大人になると嘘をつかない、というのは難しいこともありませんか?

めちゃめちゃ難しいですし、めちゃめちゃ大変ですよ。本当に頑張って、努力しないとできない。大人の社会でコミュニケーション取りながら、子供の感性でいることですもんね。たまに嘘とか本当って、そもそもどこから(が境界線)だよ、みたいなところで迷走しちゃうこともありますけど(笑)。

嘘のない談志さんは“本人で満ちている”感じがしましたし、偉い人みたいな感じじゃなくて、すごく好きでした。

それと、(弟子が大勢いる新年会で談志さんが)マイクを投げちゃったあと、「談志もちょっと卑怯だと思う」とおっしゃった奥さまも最高でしたね。ああいうふうに言ってくれる人たちが周りにいっぱいいるというのも、談志さんの人生の賜物だなっていうか、ご本人がそうやって人と接して、愛されてきた証拠だなと思って見ていました。

――最後に、改めて視聴者へのメッセージをお願いします。

今回の映像は、全部、談志さんが自撮りしたり、息子さんが撮ったものです。自撮りする談志さん…YouTubeの走りのようで、着眼点やアイディアがすごく面白い方だなと。老いを気にしていましたけど、きっとみんなよりも進み過ぎちゃっていたんじゃないかなとか、あまりに大きな自分の情熱を、筋力の落ちた体が支えきれなくなっていたのかなとも感じました。

ここに出てくる談志さんを見たら、とっても元気になると思います。初めて知る若い方も、楽しく飛び散るそのパワーに圧倒されるだろうし、談志さんの姿を久しぶりに見る方も、「エネルギー溢れるこの感じ!忘れてた」と心躍るのでは。「人生を面白がる」、まるだしの姿がカッコよくって、ナレーションを読んでいて体が熱くなるドキュメンタリーでした。 

<ナレーションの一部をご紹介>

<番組予告映像>