小西遼生が主演を務めるミュージカル「魍魎の匣(もうりょうのはこ)」の公開稽古と取材会が、11月10日(水)に行われ、共演の吉田雄、北村諒、神澤直也、上演台本・作詞・演出の板垣恭一、原作の京極夏彦と共に登壇した。

この作品は、京極による百鬼夜行シリーズ第2弾として刊行された同名の長編推理・伝奇小説をミュージカル化したもの。小西は、古本屋「京極堂」を営み、宮司にして陰陽師の「拝み屋」中禅寺秋彦を演じる。

小西は「初めて『魍魎の匣』をミュージカルにするということで、僕も原作を読ませていただきました。『あの面白い原作をミュージカルにして、お客様に楽しんでいただくためにはどうしよう…』と1ヵ月以上悩んでここまで来ました。ずーっと説明をしていくというのが僕の役では多いので、『お客さんに伝わっているだろうか』というのを考えながら、ラストシーンなんて45分くらいあるので、脳が休まる暇がないですね。今、公開稽古をやったばかりなので、正直意識がもうろうとしています(笑)」と語った。

刑事の木場修太朗役を演じた吉田は「分厚い原作を、これだけの時間に圧縮した台本をどう演じていくのかと、今なお考え続けています。これが千秋楽まで続いていくと思います。我々のイッツフォーリーズという劇団は長い歴史の中で、このような作品をやってきたことがないので、これを機に劇団の新しい一歩になれればと思っています」とコメント。

探偵の榎木津礼二郎役の北村は「これまで映画化や舞台化などをされてきた作品が、ミュージカルになります。これほど展開されているということは、この作品がたくさんの方に愛されているという証拠になりますし、今回のミュージカル『魍魎の匣』も、ありがたいことにチケットが売り切れてしまいました。本当に期待が大きいと思いました。この昨今のご時世で満員の席で公演が出来ることもないので、この作品の重厚な情報量をお客さまにぶつけたいな、と思っています」と意気込んだ。

小説家の関口巽役の神澤は、「初日から千秋楽まで満員で迎えるというのは人生で初めてで、プレッシャーものありますが、ワクワクが勝っているというのが今の気持ちです。原作ファンの方が多い作品ですが、見てもらえたら『これもアリだな』と思ってもらえるように頑張ります」と思いを明かした。

京極は「皆さんの頭がもうろうとしてしまうのは私のせいです(笑)。過去にも映画化、アニメ化、漫画化、舞台にもなっていて、原作が長いのでどれも(作品に落とし込む際に)つまむところが違うんですよ。その作品ごとに全く違うものになっていて、原作ファンの方は『あそこがない!』とか言われますが、各々の作品は別ですから。今回はミュージカルということで、僕は耳を疑ったんです。『ミュージカルってどうなるんだろう…』と」

続けて、「前代未聞になっていると思います。犯行の動機や、けがの具合や、お化けの説明を歌うんです。特に小西さんが演じた中禅寺役は誰でももうろうとするんです。長いんでセリフが。でも、『あっ、歌えばいいんだ!』と今日ようやくわかりました。参考にさせていただきます」と話し、会場を笑わせた。

「本番を控えて原作の京極さんに聞いておきたいこと」を聞かれた小西は、「本人を前に?(公演初日なのに)手遅れですよ。何も言わないでいただきたいくらいですよ」と笑いながら答えながら、「気に入った曲はありましたか?」と質問。

京極は、「曲はどれも、耳に残るいい感じで皆さんの声もステキで。内容が頭に入ってくるんです。ただ、(原作が)ごちゃごちゃしているので、(内容が)入ってきて、心地よく聞いていると抜けていくんですよね」と自虐気味に答え、登壇者を笑わせた。

また、京極は「驚いたことがあって、(北村が演じた)榎木津礼二郎が舞台を見に来た客を魚に例えて、『飼っている熱帯魚に話しかけちゃった』と、客いじりをしたんです。僕は今まで、榎木津が熱帯魚を飼っているという設定を小説に書いていないんですよ」と説明すると、北村は「勝手に作りました」と平謝り。

しかし、京極は「実は、榎木津礼二郎は熱帯魚を飼うことになっているんです。まだ小説に書いていないんです」と話すと、北村は「ネタバレしちゃったかもしれない」と偶然にビックリ。

京極が「ミュージカルが先だと思われると悔しいから、今話しますけどね。それくらい出演者の皆さんがキャラクターを掴んでいらっしゃるんだなという風に思いました」と感想を述べると、北村は「めちゃくちゃダメ出しされると思ったので安心しました」と微笑みを浮かべた。

最新情報は、ミュージカル「魍魎の匣」の公式サイトまで。