テレビマンの仕事の極意と、彼らの素顔に迫る「テレビマンって実は」。
今回は、『めざまし8』キャスターやスポーツ実況などで幅広く活躍する倉田大誠アナウンサーが登場。
倉田アナと言えば、今年の東京五輪スケートボード男女ストリートの実況で発した「13歳、真夏の大冒険」という言葉がキャッチーだと話題に。入社17年目の今、アナウンサーとして、そして会社員としてどんなことを考えているのか。
全4回連載の最終回では、情報番組とスポーツ実況両方を経験しているメリットや、今後やってみたいことを聞いた。
<【第3回】「これはヤバい」30歳で気づいた焦り、“アミーゴ伊藤”との圧倒的な実力差>
スポーツ実況も情報番組もできる強み
――『めざまし8』では毎日8時45分頃から、倉田さんの担当コーナー「#News Tag」が放送されています。ネタ選びから関わっているのですか?
「#News Tag」は、「何それ?」「それ知りたかった!」など“#”がつくような話題のニュースを発信するコーナーです。ネタは、スタッフの方たちが毎日、血眼になって選んでくれています。ただ、ナレーションの書き方や入りの箇所は、ワガママですが、ちょっとだけ手を入れさせてもらっています。
映像で見せる部分が多いので、ただのニュース映像と捉えられないよう、少しでも興味を持ってもらえるコーナーになるよう取り組んでいます。
――倉田さんは「スポーツ実況と情報番組、両方を続けていることが自分の強み」と話していましたが(※)スポーツ実況の経験が、情報番組に活かせた思うことはありますか?
(※)<【第3回】「これはヤバい」30歳で気づいた焦り、“アミーゴ伊藤”との圧倒的な実力差>
多々あると思います。例えば、中継現場の様子を言葉で描写するのは、スポーツ実況を経験している人のほうが得意かもしれません。車が1台走っているだけでも、並走しているのか追随しているのか、車間距離はどれくらいあるのか、スピードはどうなのか…という情報を、1人でしゃべって形にする。実は、スポーツ実況とよく似ているんです。
――情報番組を経験したからこそ、得られたものはありますか?
さまざまなスタッフの方と接するので、より良いコミュニケーションについて広く学ぶことができます。また、番組を通じて身につけた政治や法律などの知識は、知っていて損は1つもないし、絶対何かに活かせると思います。
――倉田さんのようなキャリアの築き方を目指す後輩アナウンサーもいるのではないでしょうか?
今は、スポーツだけ、バラエティだけではなく、いろいろなことをマルチにできる後輩が多いです。そういう意味では、私の歩み方が1つのモデルになればいいかなと思います。あるいは、働き方も多様化している時代ですから、1つの会社にずっと勤める必要もない。
この秋から、スポーツ実況アナウンサーのシフト作成も行うようになったので、後輩アナウンサーそれぞれが望む働き方にも気づけるよう、アプローチしていきたいなと考えています。
――アナウンサーを続けていて、どんなときにやりがいを感じますか?
貴重な現場に立ち会わせていただいているとき、でしょうか。例えば天皇陛下の即位を祝うパレードの生中継、オリンピック、野球の優勝決定戦の実況…この仕事に慣れてくるとどうしても、そのありがたみを感じにくくなりますが、初心を忘れないようにしています。
趣味がなくて…ハマる前に冷めちゃう(苦笑)
――連載名“テレビマンって実は”にちなみ、“アナウンサーって実はこんなことを考えているんだ“と、伝えたいことはありますか?
テレビを見ると、アナウンサーもタレントさんも1つの画面におさまっているから、同じ“テレビに出る人”と思われるかもしれません。しかし私たちとタレントさんの間には、いい意味で大きな壁があります。その壁を隔てて、正反対の存在であるべきです。向こうが白なら私たちは黒、向こうが赤ならこちらは青。当たり前のことですが、私たちアナウンサーはそこを非常に意識しています。
もしタレントさんがミスリードになる発言をしたら必ずフォローしなければいけないですし、あまりにも偏った意見を口にしたらすぐにサポートしなければいけません。番組によってはアナウンサーが前に出ることもありますが、基本的には“スーパー黒衣(くろこ)”に徹することを意識しています。
――今後やってみたいことがあれば教えてください。
日々の仕事に追われていると、何事も広く浅く触れるだけで終わり、意外とじっくり取り組む時間がありません。もともと私は「これが好きだ!」と、1つのことを能動的に深掘りしていくタイプではないのですが、それでも、何か1つでも自分の好きなものに気づけたら、と思っています。仕事でも趣味でも何でもいいんです。そういうものを見つけて、人生をより豊かに過ごしたいです。
――現在、興味を持っていることや趣味はありますか?
ないんですよね…。何でも受け入れるんですが、「これでないと!」と思えるものがあまりなくて。興味を持っても、その道に詳しい人と接すると「うわぁ、自分はそこまで情熱を持てない」と思ってしまうんですよね。仕事柄、いろいろな専門家や個性的な方に、たくさんお会いするからなのかな…。ハマる前に冷めちゃう。そんな自分が嫌になったりもします(苦笑)。
でも本当にそれが好きな人は「自分はそこまで…」とか考えずに、自然とハマっていくんでしょうね。私もそういうものを1つでも見つけて、より充実した人生を送っていきたいです。