テレビマンの仕事の極意と、彼らの素顔に迫る「テレビマンって実は」。
今回は、『めざまし8』キャスターやスポーツ実況などで幅広く活躍する倉田大誠アナウンサーが登場。
倉田アナと言えば、今年の東京五輪・スケートボード男女ストリートの実況で発した「13歳、真夏の大冒険」という言葉がキャッチーだと話題に。入社17年目の今、アナウンサーとして、そして会社員としてどんなことを考えているのか。
全4回にわたる連載の第1回目では、東京五輪後の反響や日々のスケジュールについて聞いた。
「あのときの自分が恥ずかしい」初めてスケートボードに乗って痛感
――東京五輪の実況が注目されたことで、環境の変化などは感じますか?
基本は何も変わっていませんが、雑誌やスポーツ紙などから取材を受けるようになりました。今までは全然なかったですからね。これまでは、自分はあくまでも取材する側でしたが、いざ取材される側になると…自分をさらけ出さないといけないので、どうも苦手で。取材するほうが楽です(苦笑)。
――バラエティ番組への出演も増えたように感じますが、いかがですか?
そういう機会もいただいております。先日はFODで放送予定の「スケートボードをやってみよう」という企画で、ほぼ初めてスケートボードに乗りました。発案者は、東京五輪でスケートボード男女パークの実況を担当した、森昭一郎アナウンサーです。「実際にスケートボードをやりたくなったから、企画書出していい?」と言われて(笑)。
――見るのと体験するのでは、やはり違いますか?
全然違います!ボードに乗るだけでも本当に難しくて、汗だくになりました(苦笑)。実況で「今ちょっとトラックが噛んでいませんでした」などと偉そうに言っていた自分が恥ずかしいやら、申し訳ないやら。世界で戦う選手たちは本当に難しい技をやっていたんだなと、改めて感じました。またスケートボードの実況をする機会があるかわかりませんが、この体験はきっと活かせると思います。
あの放送直後は多くの方からご連絡をいただきましたし、バラエティ番組への出演オファーが増えたりもしました。ですが、もう“五輪特需”も落ち着き、今はごくごく普通の生活に戻っています(笑)。
入社17年目、初の管理業務に悪戦苦闘
――では、現在の担当番組を教えてください。
レギュラー番組は『めざまし8』(毎週月〜金曜 8時〜)だけです。スポーツ実況はシーズンごとに競馬、バレーボール、柔道、スピードスケートがあり、たまにバラエティ番組やナレーションのオファーがあれば単発で出演します。
私が担当しているスポーツは、秋から忙しくなります。まずスピードスケートの開幕戦が10月下旬に始まり、ほぼ同時に競馬もスタートします。冬になるにつれ「ジャパンカップ」や「有馬記念」など有名なレースが開かれます。
バレーボールもインドアスポーツなので、主に冬に行われます。フジテレビでは毎年1月上旬に「春高バレー」(全日本バレーボール高等学校選手権大会)を放送しますが、その県代表決定戦も10月下旬から始まります。基本的に都道府県大会の実況はしませんが、動向をチェックして年明けの本大会に備えます。
――1日のスケジュールを教えてください。
月〜金曜は『めざまし8』がベースです。朝3時に起きて、まだ寝起きのボーッとした頭でその日の資料を読んで(苦笑)、身支度をして出社。4時半頃から打ち合わせがスタートします。番組は8時に始まり、10時前に終了。
その後、スポーツ実況を控えている日は準備をします。また、この秋から、競馬とバレーボールの実況アナウンサーのシフト作成を任されているので、その作業をします。それに伴うミーティングもあるので、退社はだいたい午後になってからです。土日は、スポーツ実況の仕事があれば行きます。
――実況アナウンサーのシフト作成とは、どんなことをするのですか?
ちょうど今進めている春高バレーを例に挙げます。アナウンサーは、全国のフジテレビ系列から合計40人必要です。そのうち10人は私が所属する株式会社フジテレビジョンから、ほか30人は全国27の加盟局から応援に来ていただくので、各局のアナウンス室責任者に応援要請をします。
各局から1人ずつ来ていただくのがベストですが、「年始の忙しい時期なので、マンパワー的に協力が難しいです」と言われることも。そうすると、他局と比べて規模が大きい関西テレビさんや、東海テレビさんから2人お願いできないか…という交渉をします。
そうして40人のアナウンサーが揃ったら、試合のトーナメント表に合わせて割り振りを決めます。「ベスト4を決める試合はこの方とこの方…でもアナウンスの実力はこちらの人が上、いや、年次を考えると…」と、まるでパズルのようです。もちろん経験の長いアナウンサーだけで固めれば安心ですが、それでは次世代へのバトンがつながりません。ですから期待を込めて、あえて若手に任せたりもします。
――これまで、そういった管理職のような仕事は経験しましたか?
いえ、今回が初めてです。今まではプレーヤーとして「これを担当して」と振られたアナウンスなり実況なりを行なってきました。しかし私も今年度で、ちょうど40歳になります。この立場になってようやくですが、しゃべるだけではなく、組織全体を見る仕事もしていかないと、と痛感しております。
――新しい業務に取り組んでみて、手応えはいかがですか?
シフト作成はまだ慣れないのでなかなか苦戦しています。それこそ「メールにこの情報が不足している」とか「明日の連絡をしてない」とか…。本来はイチ社会人として、当然できるはずのことだと思いますが。
しかしアナウンサーはある意味、1人でやっていくことを生業としている職種なので、私の場合は頭でわかっていても、いざ実務となるとボロが出てしまうんです。もちろん周りへの配慮が行き届いているアナウンサーも大勢いますが、私はまだまだですね。
<第2回「ジャニーズに応募し続けた少年時代『もともとアナウンサー志望ではなかった』」>