9月4日(金)より公開の映画「人数の町」の完成記念会見が行われ、中村倫也、石橋静河と荒木伸二監督が登壇した。
今作は衣食住が保証され、セックスで快楽を貪る毎日を送ることができ、出入りも自由だが、決して離れることはできない、という謎の“町”を舞台に、借金で首の回らなくなった蒼山(中村)が、その“町”の住人となり、そこで出会う人々との交流を経て“町”の謎に迫っていく新感覚のディストピア・ミステリーだ。
会見を前に日本橋福徳神社(宝くじご利益の神社)を訪れ、石橋とともに大当たり祈願を行った中村。「僕の邪念がすべてふり払われましたので、今日はつるんとしたコメントしか出なそうです(笑)」と祈祷の感想を明かし、冒頭から会場の笑いを誘った。
これに対し石橋が「楽しかったです」と笑みを浮かべるだけにとどまると、中村が石橋からたくさんのコメントを引き出そうと質問を開始。「どんな場所にありましたか?」と中村から聞かれた石橋が、「ビルに囲まれた神社だったけれど、昔ながらの雰囲気の良い場所でした」と付け加え、コンビネーションの良さを見せた。
シックなカラーの浴衣を着た中村は「数年ぶりの浴衣です。腹の座りがどこだかわからなくてちょっとそわそわしています」とコメント。爽やかな藤色にもみじをあしらった浴衣の石橋は「昨年の撮影で着て以来です」と話した。
これに対し、荒木監督は「僕には浴衣が準備されていなかったです。着たかったです」としょんぼり。すると中村がすかさず長編映画初挑戦となる荒木監督に「新人(監督)さんにはないんですね」と笑顔でツッコミを入れる場面もあった。
演じた蒼山について、中村は「特徴もなく、流されるままに生きてきた男」と解説。「主義がない男だけど、石橋さん演じるヒロインの木村紅子やさまざまな人と出会うことでどう変わっていくのかが見どころです」と話した。
対する紅子は明確な意思を持っているキャラクター。石橋は「その頑固さで、“町”に馴染めずに、どこかおかしいよということを必死に訴えています。そのあとは…、ね(笑)」とネタバレにならないように説明をしていた。
荒木監督は「たった1人で孤独に脚本を書き始めるところから始まりました。それが今、日本で最高レベルのお二方に演じてもらうことで立体化したことに感動しています。撮影中は、リハーサルの段階から、うれしくて涙が溢れそうになるのを必死に抑えて、ベテラン監督のように堂々と振る舞うように心がけていました」とコメント。すると、中村が「堂々とした印象はなかったです」と記者たちに暴露し、笑いを誘った。
また、映画の着想について、荒木監督は「子どもの頃から、人間そのものというより、人間が塊になると怖いというイメージがありました。多数決とかって怖いなと感じていたんです。スピルバーグ監督が『怖いものがあれば映画になる』と言っていたのを聞いて、『これだ!』と思ったのがきっかけです」と明かした。
舞台となる“町”は、ちょっとした労働のようなことをやれば衣食住が保証されるという不思議な場所。そんな“町”の印象について中村は「場所、空間、表情、言葉遣いなど、ひとつひとつがなんか異様でしたし、違和感はぬぐえませんでした。でも考え方を変えて、頭を切り替えれば居心地が良かったりするのかなという感覚でいました」と振り返った。
石橋は「紅子は町に入って行く側の人。ひたすら怖いし、気持ち悪いし、不気味で嫌な場所だと思っていました」とコメントした。
注目してほしいポイントについて、中村は「石橋さんの…」と言ってしばらくためてから「瞳です」とアピール。「本当にキレイな瞳なんです。こんなに光が集まる眼球、僕、持ってないですもん」と独特の感性で石橋の美しさを表現。「紅子の登場で物語が動き、蒼山も揺さぶられていく。それが成長なのかどうかわからないけれど、変わるきっかけとなる紅子の登場は見どころですね」と強調した。
石橋は大きな意味があるシーンではないと前置きしながら「逃避行して海辺でけだるそうに過ごす2人のシーンがすごく好きです」と告白。「2人が大変な生活をしている様子がよくわかるシーンです」と説明した。
荒木監督は「僕の映画作りの狙いは、画面の中でいろんなものがいっぺんに動いていること。つまり、絶対ここを見て!という注目ポイントを作らないことを心がけました」とこだわりを明かした。
映画の楽しみ方について中村が「映画や作品は、観る人のコンディションが影響するものだと思っています。自由に受け取ってもらえたら本望です」と語ると、石橋も「私自身、1回目と2回目の感想は違いました。そういう効果のある作品だと思うので、自由に観ていただければうれしいです」と笑顔を浮かべた。
記者からの質問で初共演の石橋についての印象について聞かれた中村は「初めてとは思えないくらいの信頼感と安心感がありました」としながらも「僕が一方的に思っているだけかもしれないけど…」と付け加え、いたずらっぽく微笑む。
続けて、「現場でも仕事の話はせずに僕がずっとしゃべっているところに、石橋さんがツッコミを入れ、それにまた乗っかって…、そしてだんだん無視されます。でも、無視されると仲良くなったと思えるタイプなので大丈夫です(笑)」と満足の表情を浮かべていた。
荒木監督の「中村さんと石橋さんは水と火という真逆のタイプだと思いました。さらさらっと流れるように演じる中村さんと、圧力でグッグッ押してくる石橋さんという感じですね」と2人の印象を語るコメントに「圧が強い女優って言われているよ」と中村がツッコミを入れると、石橋は「なんか嫌だなぁ」と渋い表情に。
荒木監督はすかさず「タイプが違いすぎると思ったけど、2人揃ったらピタッとハマったのですごくうれしかったです」とフォローしていた。
会見前に行われた大当たり祈願に絡めて、人生の大当たりについて聞かれた中村は「小学校のときに懸賞で当たったE賞」と大当たりではないエピソードを披露。それには理由があり「大人になると、子どもの頃の残念な話が回収できて、当たったなって思えるのがいい」と説明した。
すると、石橋も「私は小学生の学芸会で、一番やりたくなかった豚のお母さん役をやったことです。今こうして話せるので大当たりなのかもだけど、すごくショックでしたね。早く終わらないかなと思いながら演じていたのを覚えています」と振り返った。
最後の挨拶で荒木監督は「お気を確かに持ってご覧ください」と呼びかけ会場の笑いを誘い、石橋は「おもしろい作品になっているので、映画館に足を運んで観ていただければうれしいです」と笑顔を見せた。中村は「映画を観た方の反応が楽しみな作品なので、早く皆さんの感想が聞きたいです」とアピールし、会見は幕を閉じた。
配給:キノフィルムズ 制作:コギトワークス
©2020「人数の町」製作委員会
最新情報は、映画「人数の町」の公式サイトまで。