10月16日(金)公開の映画「スパイの妻」のヴェネチア国際映画祭記者会見と日本の記者向けの会見が行われ、蒼井優、高橋一生、黒沢清監督が登場した。
今作は1940年、太平洋戦争が目前に迫る中、恐ろしい国家秘密を偶然知ってしまった貿易会社を営む男性とその妻との愛憎を描く物語。
まずはヴェネチア国際映画祭の記者会見に蒼井、高橋、黒沢監督は中継で参加。現地からの質問に回答したのち、日本記者向け会見が行われた。
今作が9月2日に開幕した第77回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に選出され、この日、現地の観客に初めて見てもらえることへ心境を聞かれると、蒼井は「(現地に)行けなかったのが残念」語るも、「自分たちが手塩にかけて作らせていただいた映画が、ヴェネチアのお客さんの目に触れるという緊張感も含めて映画祭でもあるので、そこに行けないんだな、というのを改めて実感するとともに、この状態でも、私たちは渡れなくても、映画は行けるんだ、という喜びを噛みしめて今日を過ごしたいと思います」とコメントした。
高橋は「非常に有意義な時間を撮影では過ごさせていただいたので、その中で監督、スタッフ、共演者の皆さんと作らせていただいた作品が、今から皆さまの目に触れるということは、とても感慨深く、嬉しいことだと思っております」と言葉を一つひとつ噛みしめるように話した。
黒沢監督は「改めて身が引き締まる思い」と明かしつつ「作品はもう僕たちの手を離れているわけですから、あとは作品がなんとかしてくれるだろう。作品が一番の答えになってくれることを祈るばかりです」と、作品に託した思いを語った。
イタリアと中継をつないでの会見方式に関して黒沢監督は「不思議な感じでした」と率直な思いを明かしつつ「つながった瞬間はイタリア語が聞こえてくるから“ヴェネチアだな ” と思ったんですけど、通信が途絶えると、なんのことはない汐留だな(笑)」と、東京・汐留の会場に集まった記者たちを笑わせた。
一方、ヴェネチア国際映画祭に初参加の高橋は「外国語が飛び交う中での質疑応答が、ヴェネチアの空気なんだ、というのを何となく汐留で感じていました(笑)」との感想を。
また現地に行けない残念な気持ちを口にしつつも「僕にとっては今しかないので、今、この瞬間でたとえ日本と距離があっても、こういった形でも参加させていただけたことをとても光栄に思っていますし、今は今でこの汐留からヴェネチアへという感じを非常に楽しんでいます」と笑顔を見せた。
最後に3人はメッセージを。「戦時下の夫婦の愛憎を描いた映画です。2人があの時代をどう乗りきって、どのようにその後、2人の夢を実現していったのか、挫折したのか。そんなことに興味を持って見ていただければ、楽しめる娯楽映画にもなっていると思います」(黒沢監督)
「見てくださる方のそれぞれの想像力に訴えかけるような作品になっていると思います。このクラシックな世界観の中で、俳優たちそれぞれが息づいている感覚というのを、皆さんがスクリーンの中から感じ取っていただけると、それだけで十分過ぎるくらい幸せです」(高橋)
「なかなか映画の興行も厳しい時代ではありますけど、いろんな人にこの作品を見ていただいて、自分にとって何が幸せなのか、とか、自分は狂っているのか、いないのか、自分が狂っているのか、世間が狂っているのか、とか、いろんな角度で物事を考えられる、見えてくる作品だと思いますので、ぜひ多くの方に見ていただけたらと思います」(蒼井)
それぞれに作品への思いを語ると、深々と頭を下げてステージをあとにした。
最新情報は、映画「スパイの妻」公式サイトまで。