毎回さまざまなジャンルで活躍するゲストが集い、多彩な話題や事象を取り上げていくフジテレビのトーク番組『ボクらの時代』。

9月5日(日)は、それぞれ共演経験があり公私で親交のある中谷美紀、草笛光子、土屋太鳳が登場し、女優になったきっかけや、お互いの交流、プライベートを語り合った。

中谷美紀の書いた驚きの弔辞「ゴキブリと草笛さんだけは生き残るであろう」

中谷は、草笛を「お母さん」と呼び慕っている。そんな中、中谷が草笛への弔辞を書いていたことが明かされた。

草笛:(土屋に)あなた知ってる?(中谷が)私に弔辞書いたのよ。

中谷:(笑)。

土屋:え!?

草笛:長い、弔辞。

土屋:チョウジ?

草笛:私が死んだときに書く。

土屋:えー!

中谷が「先に書いちゃったの(笑)」と茶目っ気たっぷりに明かすと、草笛は「もう、すごい立派な文章。だから私、死ななきゃいけなくなってきた」と笑わせた。

土屋:それくらい愛情があるっていうことですから。

草笛:でね、最後はひどかったわね。「ゴキブリと母さんだけは生きてる」ってね。

中谷:そうそう(笑)。

土屋:それくらい強いと?

中谷:そう。核戦争が起こったとしても、ゴキブリと草笛さんだけは生き残るであろうと。

舞台で親子を演じて以来、草笛を慕う中谷は「この通り、草笛さん、ピンピンしていらっしゃいますから」と、遠慮のないトークで普段からの仲の良さをうかがわせた。

土屋太鳳、草笛から教わった「違和感を愛せばいい」

一方、土屋は主演したミュージカル「ローマの休日」(2020年)を観た草笛から電話をもらったエピソードを披露。

土屋:「ローマの休日」を観に来てくださったときに、感想を電話で伝えてくださって。「もう素晴らしかったわよ」って「本当にアン王女だった」って。「とりあえずメークが濃いから来なさい」って言われて、お家に行ったんですよ。

土屋は、草笛の自宅で舞台でより映えるメークを教えてもらい、また、そのときに草笛から忘れられない言葉をかけられたという。

土屋:私が素晴らしいなと思ったのは、「ミュージカルは、歌とセリフ両方あるけれども、セリフから歌に変わるときの瞬間が、一番素敵なのよ」っていうふうに言ってくださって。そのときから、自分の中でずっと違和感だったものが「あ、ここを愛せばいいんだ、違和感を愛せばいいんだ」と。

中谷:へぇー(と感心)。

土屋:そこから、全然心が変わって。

土屋の話に、草笛は「そんなこと言ったかな、偉そうに」と照れ笑いした。

中谷が夫から言われた「人生は短かすぎる」「だから、目いっぱい楽しみなさい」

現在、1年の半分を海外で暮らしている中谷は、著書「オーストリア滞在記」の背景を語り、現地での食事の苦労や、結婚生活を語った。

土屋:仕事のスタンスみたいなものは変わりました?

中谷:やはり家族がいるので、家族も大事になりますよね。これまでは、仕事のために生きてきたので、仕事しかない人生だったけれども。夫に「人生は短かすぎる」っていつも言われるんです。

草笛:うん?

中谷:「人生は短かすぎるんだ」って。「だから、目いっぱい楽しみなさい」と言われるんです。

土屋:へぇー!

草笛:良いところに嫁に行ったわね。あなたらしい、きちんとした生活をすることに、彼もちゃんと助けているっていうか、緩やかに来てくれているし。ただ、私が気になったのは、あなたは1日を無駄なく一生懸命やって…朝これしてこれして、ちょっと時間が余ったからドイツ語のお稽古をして。それからそのあと、ここが悪いから、このレッスンに行ってとかって、すごいピシッとしたスケジュールなの。その、ピンと張っているのが切れないようにねって、私は親として思うわけ。

中谷:ありがとうございます。ご心配いただいて。

草笛:でも、あなたは切れないね(笑)。

オーストリアの中谷を訪ねたことがあるという草笛は、「楽しかった。また行きたい」と語り、「恋人がいたら行き良いから、そういう人探しといて」と中谷にリクエストしていた。

舞台袖で自分に言い聞かせるのは「うまくやろうと思うな」(草笛)

70年以上のキャリアがある草笛。かつて俳優の先輩、小林桂樹さんから「君は、今日までどうして生きてこられたと思う?きれいでもないし、うまくもない。あるのは人柄だけ」と言われたことがあったという。

草笛は、その言葉がきっかけとなり「そうだ、本当は私女優に向いていない。あとは腕を磨くしかない」と腹をくくったと語る。

そんな草笛に、土屋は「演じる上で大切にしていることはありますか?」と尋ねた。

草笛:私は「うまくやろうと思うな」って、いつも思う。

中谷:はぁ。

草笛:舞台出る前さ。

土屋:なるほど。

草笛:ね。前奏曲が鳴ったりしている間、暗いうちに「さぁ、うまくやろうと思うな」って。

中谷:でも、すごいなと思ったのは、お母さんが「人柄だけだ」と言われて腕を磨こうと思って、たくさん舞台をご覧になって腕を磨いていらっしゃる。その一方で、「うまくやろうと思うな」って。これ、2つ矛盾しているじゃないですか。でも、やっぱり両方必要なんですね。

草笛:うん、まぁ。ただ、「心でやれ」っていうことね。それが難しいけどね。

大先輩の言葉に、中谷と土屋は深い感嘆の声をあげた。

中谷美紀の舞台の大失敗に土屋太鳳「ちょっと鳥肌立ちます」

また、中谷は舞台での失敗談も告白。同じ条件で同じように演じたいと、通常は客席に誰が来ているか一切知らないまま舞台に立つのだが、ある日、「古くからのお友達が『今日観に行くからね』と、わざわざメールをくれたんです」。

草笛:ああ、困るわね。

中谷:そう、本当に困る。それも同業者だったので。それでパニックになってしまって。直前までは、なんとか普通に平常心でいたんですけど、舞台に立った途端、パニックになって、セリフ全部飛んじゃったんです。

土屋:えぇー。

中谷:それでもう、本当にたくさん作文をして作文をして。

草笛:プロンプター(セリフなどの合図を送るスタッフ)は?

中谷:プロンプター、いないです。

土屋:そしたら、そのあとは…?

中谷:もう、どうにもこうにも回収できないぐらい。1時間40分の作品が、1時間20分で終わりました。

土屋:結構、飛びましたね。

中谷:飛んじゃったんです。それで、いつもは拍手のあとカーテンコールがあるじゃないですか。カーテンコール、なかった。

草笛:ないの?

中谷:お客さまも「こんなひどい舞台を見たのは初めてだ」って、たぶん思ったんだと思うんですよ。本当にお客さまを失望させてしまって。

草笛:(笑)。笑ってはいけないけど。

中谷:本当にひどかった。

草笛:大変だったのね。

中谷:本当にひどかったんですよ。

草笛:舞台って、そういうことがあるからね。

土屋:それは、ちょっと鳥肌立ちます。

草笛:死にたくなっちゃうわよね、舞台。

中谷:もう本当に。

中谷は「生涯忘れられないです、あの恐怖は」と舞台の怖さを語った。

「人に伝えるため」の技術の難しさ

また、コロナ禍で「よくテレビを見ました」と言う草笛は「人に伝えるため」の技術の難しさや、気づきを語った。

草笛:人に伝える心と、出てくる音っていうのは、すごく大変ね。すごい勉強になった。

中谷:ああ、そうですか。

草笛:コロナで勉強になったことは、それ。毎日テレビ見ると、しゃべりっていうのは難しいんだなって。滑舌だけじゃない。

中谷:だけじゃない?

草笛:うん。やっぱり人に伝えようって気分がまず一(いち)でしょうね。それで、どれが主語かって。何が今言いたいかってことをやっぱりしっかり言わないと。私たちさ、こうなっている、字を立たせて、字を動かしているわけじゃない、体でね。

「女優とは、文字を立たせて体で伝える仕事だとつくづく思った」と話す草笛に、2人は感心しきりだった。

そんな中、中谷、土屋が同じジムに通っていることが判明する。

土屋:「運動しなきゃ」と思ってジムに行ったら、いつも美紀さんもいて。「美紀さん!」って。しかも、私走っているんですけど、後ろから、ぶつぶつって、何だろうって思ったら(中谷が)台本見ながらずっとやってて。

中谷:あ、ごめん!聞こえてた?

草笛:あなた、そんなことやっているの?

土屋:いや、私がたまたま端っこのところのランニングマシンで走っていて、たぶん近かったんですよね。

中谷:えー、恥ずかしい。

土屋:でも、すごい素敵でしたよ。私としては「あ、努力していいんだな」というか。いろんな方に「そこまで考え過ぎないで演じていいんだよ」とか「覚え過ぎなくていいんだよ」とか「もっと自然にやりなよ」とアドバイスしていただくこともあるけど、美紀さんを見ていると、「いいんだな、作って。役、作り込んで、ちゃんと工夫してやっていいんだな」って思った。

と、土屋はトレーニングをしながらセリフを練習する中谷の姿に共感し、学ぶものがあったと明かした。

草笛「老いとは億劫との戦い」日常の中でやっていること

「何歳まで女優を続けたいか」という話題では、現在87歳の草笛は「明日死ぬかもしれない」と言いつつ「今のところ血液検査しても何も出てこない」と明かし、歳を重ねることへの持論を語った。

草笛:「老いとは、億劫との戦いです」って私言っているの。「億劫」。ここ(椅子に座っている状態)から今こうやって立つのだって、「よいしょ」って立たなきゃならないでしょう。これ、億劫よね。これを自分で「老いだな」と思うと、こう(しょんぼりと)なるから、何気なく、ふっと立つようにする(と、実際にすっくと立ち上がってみせる)。

土屋:すごいですね。

中谷:あ、この練習するんですか。この(立ち上がる)練習?

土屋:だって、これ結構(大変…と立ち上がってみる)。

中谷:ね、これきついね。

土屋:きつい。

中谷:うわ、大変。

草笛:自分の家に階段があるのよ。階段の上り下り。それから階段のところへ足先を置いてこれ(足首の上げ下げ)をやるの。

土屋:それ、めちゃくちゃ大事ですね。このふくらはぎの。

草笛:あれやるとすごくいいわよ。だからやっぱり、億劫と戦っているのよ、毎朝、毎日。

食事の際は、バランスボールに座っていることや、喉のトレーニングなども日常に取り入れていると明かし、女優として現場に立ち続けるための、元気な体を保つ秘訣を明かした。