フレッシュなキャストが集結した映画「鬼ガール!!」がまもなく公開になる。今も鬼の伝説が残る大阪・奥河内を舞台に、鬼族の血をひく高校生の鬼瓦ももか(井頭愛海)が仲間たちと助け合い、衝突しながらも映画づくりに青春をかける物語だ。

そんな作品に、学校一のモテ男子・神宮司岬役で出演している上村海成(かみむら・かいせい)。

作品最大の見せ場となった映画祭の舞台裏や撮影の思い出を聞いたほか、23歳の“今”に迫った。

学校一のモテ男・岬先輩という役は、自分との闘いでした(笑)

――「鬼ガール!!」は、ももか(井頭)や、岬先輩(上村)のキラキラした青春を描いた作品ですが、完成作を見てどんなことを感じましたか?

撮影中は、学生時代の文化祭の準備をしているみたいな気持ちっていうのかな。あのワクワクを思い出しつつ、同世代とモノづくりをする楽しさを満喫していたんですけど、完成した作品を見たら、卒業アルバムを見ているような懐かしさでいっぱいになりました。

――岬先輩は学校中の女子の熱い視線と黄色い歓声を一身にあびる役柄でしたが、“モテモテ”を体験した心境は?

とてもいたたまれない気持ちになりました…(苦笑)。あの歓声をあびて、気持ちよくなれる人が岬先輩みたいな人気者になれるんだろうなって。

役柄としては、とても楽しかったんですよ。だけど、役に入っていない上村海成として考えたら、モテ男って大変なんだなぁと実感したんです。だって、どこへ行っても、まわりから求められる完璧な姿でいないといけないし、段差でコケただけでおしまいですよ。そんなことをいちいち気にしていたら、胃が痛くなっちゃいます。

岬の発言も、普通に生きていたら口にしないようなセリフが多かったので、これはもう羞恥心を捨てて殻を破るしかないと。終始、自分との闘いでした(笑)。

――「キラッ」という音が聞こえてきそうな、爽やかに髪をかき上げる仕草がとても印象的でした。

最初は恥ずかしかったんですけど、途中から楽しくなってきちゃって、もう何回でもかき上げてやるよ、っていう心境でしたね。隙があればやってやろうみたいな感じになっていました(笑)。

――岬先輩はすべての女の子に優しく、そして、ももかには誰よりも甘い言葉をかけるなど特に近い距離で接していました。

第三者として客観的に見たら、「ももかのことが好きなの?」って思っちゃいますよね。でも、岬は誰に対しても同じ態度なので、演じている僕がいうのもなんですが罪作りな男ですよ(笑)。

――上村さんの学生時代は、岬先輩のように騒がれたりしなかったんですか?

ホントにちょっとですけど、新学期が始まる最初の1ヵ月ぐらいはありました。自分でこんなことを言うのはとってもおこがましいんですが、地毛がちょっと茶色く、肌も白かったので、5月ぐらいまでは騒がれたりしたこともありましたけど、でも、化けの皮は必ずはがれるもので、6月にはもう言われなくなっていました。僕の記憶が美化されてるだけかもしれないんですけどね(苦笑)。

初めて挑んだ殺陣は「よく頑張った」ともう一人の自分が褒めちぎってくれた

――撮影はすべて奥河内で行われたそうですが、どんなところでしたか?

地元の皆さんが協力的で、「朝ごはんにどうぞ」とおにぎりを作って持ってきてくださったり、フルーツショップではたくさんサービスしてくださったり、とても優しく迎えていただいて、温かい場所だなって感じました。

――クライマックスの映画祭のシーンは、準備など相当時間がかかったのではないかと感じたのですが、地元の皆さんも多数参加してくださって完成したものだったんですよね。

あの場面はお寺のお堂に実際にセットを組んで撮ったんですけど、お堂には冷房設備がまったくなかったのでとても暑かったです。でも、その暑さや地元の皆さんの熱気のおかげで、臨場感のある感動的なシーンに仕上がりました。

長期間、奥河内に滞在していて、地元の方ともかなり仲良くなっていたので、皆さんの前でお芝居を披露することは親戚に見られているみたいでちょっと恥ずかしかったですが、レッドカーペットを歩く姿を見てもらった時は、ほんの少しですけど恩返しができたような誇らしい気分でした。

――全体を振り返って、もっとも印象に残っている出来事を教えてください。

なんといっても、ももかや蓮(板垣瑞生)が映画祭のために制作した劇中劇ですね。僕はヒロインと恋に落ちる武将の役で、初めて殺陣に挑戦したんですが、時代劇っぽいテイストも初めてでしたし、初めてづくしだったんですよ。

実は僕、運動神経が悪いので、絶対にケガをすると不安に思っていて、アクションに対しても恐怖心があったんです。だけど、いざやってみたら、ガラリと印象が変わって。今まで食わず嫌いしていたけれど、激しく動くだけでお芝居には変わりないということがわかってからは楽しくなりました。

――息を吹き返すシーンや、刀の刃先を鋭い視線で見つめる姿が特にカッコよかったです。ご自身で気に入っているのはどんなシーンですか?

最後の殺陣はもっとも時間をかけたシーンで、監督もこだわりをもって撮ってくださったので、個人的に思い入れがかなり強く、「経験がないのに頑張ったな」って、もう一人の自分が褒めちぎってくれました。

――ももかたちが映画づくりに熱中したように、上村さんも学生時代、何かに夢中になった経験はありますか?

仕事以外だとダンスですね。高校の時にダンス部に入っていて、文化祭で発表することになっていたので、練習は本当に頑張りました。

あとは大学受験です。それまで学校の試験は一夜漬けばかりで、勉強しては忘れてという悪循環を繰り返していたんですけど、いざ、受験の時期になったら何も身についていなかったことに気づいて。そんなことがあったので、夏からは毎日、予備校に通って1日12時間ぐらい自習をしていました。

――ももかは仲間を集めるために、蕎麦団子を使って“お供”を集めましたが、上村さんがつい「お供します」って言ってしまうようなモノは何ですか?

明太子です。中でも、粒が立ってる明太子が好きで、自分では買えないようなちょっと高級なものを出されたら、ソッコー、シッポを振ってついていきます(笑)。

岬先輩という役に関してチャレンジが多かったので、すべてに注目してもらいたい

――鬼族は、興奮するとそれまで隠れていたツノがニョキッと出現しますが、上村さんのツノが出るのはどんな瞬間?

友達の家に仲間たちと泊まった時、その中の1人がお風呂に入っている間にズボンの裾を縫って履けなくなるというイタズラをしたんです。その反応が早く見たくてウズウズしちゃって、おもわず顔に出ちゃいました(笑)。もし、僕にツノがあったら、きっとニョキって出ていたと思います。

――では、そんな上村さんにとって“眼福”なものは何ですか?

小学校の高学年から高校までダンスをやっていたんですけど、見ていて幸せを感じるのはダンスです。「これだけの動きでこんなにバリエーションをつけられるの!?」っていう動きを見ると、僕もやってみたいってウズウズしてきます。

――いつか得意のダンスを作品で披露していただけることに期待します。今後はどんな俳優を目指したいですか?

具体的にこの人みたいになりたい、というのはないんですよ。だって、もうその方がいらっしゃるんだから、同じ方向を目指す必要はないですよね。それよりも「この役だったらあの人だよね」と言われるような俳優になりたいと考えていて、便利屋のように使ってほしいっていうのかな…。分かります?困った時に頼りにしてもらえるような技量のある俳優、確かな技をもった人になりたいです。

今回、演じた岬先輩も、その人間性に「ちょっと引く」という見方をする人だっているかもしれない。僕自身、「こいつやりよるな…」ってウッとなりましたから。そんなふうに、タイプの違う人物を演じるごとに「ウッ」と思わせるような俳優になりたいんです。カッコいい方はたくさんいらっしゃるので、「怖い」でもいいし、「気持ち悪い」でもいい。人を驚かせる役柄を任せてもらえる人になりたいです。

――最後に「鬼ガール!!」の見どころと、岬先輩的注目ポイントを聞かせてください。

ももかが自分のルーツのことで悩んでいたように、現役の高校生にはいろんな悩みがあると思うんです。そういうものを乗り越えさせてくれるエネルギーがこの作品にはあって、勇気づけられることも多いと思います。

同世代はもちろん、高校生より若い子が見たら、こんな高校生活を送ってみたいと憧れてもらえると思うし、大人の方が見たら、懐かしく感じるかもしれない。どの年代の方が見てもいろんな楽しみ方ができる作品になっていると思います。

岬先輩という役に関しては、いろいろとチャレンジをしたことも多かったので、すべてに注目してもらいたいです。おとなしい瞬間がまったくなく、常に「ワオッ」ていうような発言をするし、「お~っ」っていう振る舞いもするし、余すところなく見てもらいたい。映画の中の色々な役がそれぞれステキなのですが、役の性格を借りて言うとしたら、岬のことだけを考えて見てほしい。それだけの自信作です。

撮影:河井彩美