視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。
10月20日(火)放送回では、「日本モンキーセンター」飼育員・田中ちぐさに密着。名古屋から車で1時間、愛知県犬山市で64年の歴史を持つ「日本モンキーセンター」は、世界各地から集まった57種830匹もの猿を飼育する、サル類専門動物園。
象もキリンもいない世界屈指の霊長類だけの動物園で猿を愛し、その魅力を発信する彼女のセブンルールとは。
ルール①:猿は名前で呼ぶ
土曜日、田中ちぐさは10時のオープンに向け、まずは担当であるボリビアリスザルの飼育エリア「リスザルの島」を清掃する。南米アマゾン川・上流域の島に見立てたこのエリアには、現在20頭のボリビアリスザルが暮らしている。
入園客の前で猿たちへ朝ごはんをあげながら、彼女は、「ハッチ、ハマー、ハオ、ハルちゃん、オーリス、ハニワ、ハス…」と、それぞれの名前を呼んで点呼を取る。すべての猿を名前で呼ぶのが、彼女のルールの一つだ。
「飼育管理する上で、名前がついてるのはとっても都合が良いっていうところはあるんですけど。お客さんにもその子の魅力が伝わりやすいので、私も名前で呼んでいます」と、その理由を明かした。
平均寿命25歳を超え、27歳の“スーパーおばあちゃん”・ミカンにはファンが多いといい、小学生の入園客も「癒されました、ミカンちゃん」「私たちよりも生きている」「ちっちゃいけど年上」と、口々に感想を語る。
入園客から「猿を見分ける方法」を聞かれた田中は、「リスザルの場合は、頭の境目の形や、体の大きさ」と、その方法を伝授。彼女が個体認識にかける期間は2ヵ月ほど。「気合と根性」で覚えるという。
日本モンキーセンターで暮らす830匹の猿にはすべて名前がつけられているが、生まれた赤ちゃんを最初に発見した飼育員が、名付け親になれるのだとか。
彼女が名前をつけたのは、リスザルの「ハーゲン」。去年生まれたばかりで、おでこがハゲていたこと、そして田中自身アイスクリームのハーゲンダッツが好きなことが、その名の由来だそう。
ルール②:エサのやり方を毎日変える
あるときは、エサの準備から1日が始まることも。およそ30キロのサツマイモを、1時間かけて蒸しあげる。 他にも、園内全830匹の1日分の食事、およそ100キロを仕込む。モンキーセンターのエサ代は年間1500万円ほどだが、その調理すべてを、手作業で行っている。
基本的にルーティンの作業が多い飼育員の仕事。フラットな日常に刺激を与えるため、彼女はエサのやり方に変化をつけている。
1週間に1回ほど、殻をつけたままの卵を出すのは、カルシウム補給のため、そして(猿が)殻を剥く楽しみのため。猿の反応を考えながら、エサの切り方ややり方を変え、日々楽しんでいるという。
単調な毎日に飽きてしまうのは、人間も猿も同じだ。「普段と違うエサのやり方をすることで、考えるという行動をさせて、(猿の)喜びにつながれば良いなと思います」と語る彼女。
消防ホースを切って作った筒の中には毎日違うエサを入れ、猿たちが覗いてほじくり出して食べるとき、考え、楽しめる工夫を施し、ある時は、カゴ状に組んだ消防ホースにエサを隠し、それを見つける楽しみを猿たちに提供することも。
さらに、子育て中の猿がいるエリアでは、母猿が安全に食料を確保できるよう、置き場所を数ヵ所に分散したりと、細やかな心配りも忘れない。
「猿たちがエサを食べている様子を見て私が楽しむ。それを見ているお客様も楽しむというような形で、いろんな動物、人が、エサ一つで楽しめるなら、それはそれで面白いのかな」と話した。
ルール③:猿をかわいがらない
愛知県北名古屋市に生まれ、幼い頃から動物と一緒の暮らしが当たり前だった彼女。動物好きの両親はいつも、彼女をさまざまな場所へと連れ出した。
北海道の帯広畜産大学を卒業後、道内の動物園で飼育員として就職。そして6年前、現在の園長に誘われて日本モンキーセンターへ転職した。園長は「自分が面倒見ている猿たちは、何があっても一生懸命見たいと。それぞれの猿の生活に合った環境作りをしたいってこととか。手を抜かずにやる子ですね」と、彼女の仕事ぶりに太鼓判を押している。
園で一番人気、ワオキツネザルの飼育エリアで「私の推しメン、キラくんです」と、1匹の猿を紹介する。「目から鼻にかけて細い線があるのが分かりますかね。他の子にはないんですよ。カッコイイんです。キツネザルという名前がついている通り、キツネみたいな顔をしていますね。輪っか模様の尾っぽということで“ワオ”という名前なんですが、見た目もとってもかわいい猿です」と、熱量たっぷりに説明。
ニオイをつけることで自分の場所をアピールするなど、ニオイでコミュニケーションを取るというワオキツネザル。人間のニオイが付いてしまうことで、それを阻害してしまう可能性を考え、お触りはNG 。「かわいがらない」ということが、彼女の飼育のモットーだという。
猿の生活を守り、維持するために、あえて触らない。「野生本来の姿を楽しんでもらうほうに力を入れたくて。やっぱり猿としての生活をして欲しいし、猿としての行動を発揮してほしいので、人間が触ることは避けたい」と、その意思を明らかにした。
ルール④:休日はメイクをする
休日になると決まってするというのが、メイク。動物園の時は動物が主役だが、休日はメイクをしてスイッチを入れるのだとか。
「女を上げるために頑張ってます」という彼女が、メイクを済ませて訪れたのは、セルフエステ店。週に1度、最新のエステマシンを使い、“女を上げ”に来る。
「結婚式のために頑張っています。相手も予定もないですけど」と、彼女。「彼氏は欲しい」と小さく呟いて笑った。
ルール⑤:家では牛のことを考える
エステを終えた彼女は、名古屋の実家へ。大好物の餃子を夕食にリクエストしていた。母が丁寧に包み、父が焼き上げるのが田中家流。彼女のパワーの源だ。
夕食を囲みながら、彼女の母が語り出す。「(娘に)一つだけ感心するのは、小学校6年生の時の卒業文集に、将来こういうこと(飼育員)したい、そういうようなところ(専門性のある大学)に進学して、そして(飼育員を)したいって書いてあって。その通りになってるんですね」。田中は、小学生の頃に思い描いた夢を叶えていた。
彼女が1人暮らしをする家で見せてくれたのは、趣味である海外旅行で収めた世界各地の猿の写真。だが、ここで「一番好きなのは牛です」と、意外な事実が明らかに。
彼女のマンションの一室は、200点もの牛グッズで埋め尽くされている。
「牛乳も美味しい、牛乳から作られる乳製品も美味しい。牛そのものの肉も美味しい。さらには、牛の革を使った革製品も丈夫で素晴らしい。もう完璧です」と、少し独特な“牛愛”を熱弁。
だが、牛を育てたい願望はないという彼女。「愛でたい願望はありますけど、育てちゃうと愛着が湧いちゃって、肉に出来なかったりする可能性があるので、そこは産業動物として一線を引くというか」と、その理由を明かす。
さらに、彼女が飼っている猫は、牛のように白黒のブチ猫。名前は、ホルスタインからとった“スタイン”という徹底ぶりだ。
ルール⑥:お礼は必ず直筆で
ある日の閉園後、彼女はSNSで発信するネタを探していた。愛知県内に比べ、県外での認知度はまだ低い。もっと多くの人に知ってもらい、好きになってもらいたいと、SNSでの情報発信にも力を注いでいる。
その日は、じゃれ合っている2匹のボリビアリスザルが撮影中のカメラに気付き、近寄ってカメラ目線をする、という動画を投稿した。
猿たちの日常を切り取ってSNSで発信、そんな観光客誘致の取り組みも虚しく、今年は新型コロナウイルスの影響で休園が長引き、現在、深刻な財政難に陥っている。
そこで、園の運営費をクラウドファンディングで募り、飼育スタッフがデザインしたオリジナルのTシャツを販売。さらに、飼育に必要な物やエサの支援を呼びかけるなど、あらゆる手段を尽くして、猿たちの命を守る努力を続けている。
「貧乏な動物園を救ってあげようという優しい心の方たちが、全国各地で買ってくださいました」と、田中も喜びの声をあげる。そんな支援者たちに彼女は必ず、お礼の手紙を送っている。
「一人ひとりに顔を見てご挨拶したいところではありますが、やっぱりそれは叶わないことも多いので。せめてもの気持ちでハガキを送っています」と、猿の写真がプリントされたポストカードに、感謝の気持ちを丁寧に書き綴った。
ルール⑦:猿の幸せを追求する
ノコギリで木の枝を切り、電動ドリルで小屋の天井近くに止まり木を設置した彼女。夜、小屋で過ごす猿たちを飽きさせないための工夫だ。
日々、猿たちに新たな刺激を与え続ける彼女は、触れ合うことなく、そっと近くで見守りながら、心を通わせている。「動物は生きることに素直なんですよね。だからこそ、どれだけ幸せに暮らせるかを、飼育員たちは追求しなきゃいけない」と話す。
「動物を肩に乗せたりとか、撫でたりすることによって見せるかわいさってすごく限られてると思うんですよ。そうじゃなくて、本来の姿、猿たちの能力を見て『すごいな』って思ってもらったり、『面白いな』って感じてもらうところが、やっぱり魅力の一つだと思うので」と、思いを口にした。
そんな彼女の夢は、飼育員の他にもう一つ。それは、「自分で動物園を持つこと」。
「やはり社会性のある動物って、どうしても、群れから外れたひとりぼっちの子が出てきちゃうんですね。1匹になってしまった子とかを集めて、できるだけ他の仲間と暮らせるように、サンクチュアリ的なところを作りたい」。
その夢も、いつかきっと叶う日が来ると信じ、彼女は今日も、猿たちが幸せに暮らせるよう見守り続ける。程よい距離を保ちながら。
※記事内、敬称略。
次回、10月27日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、東京・下町のパン屋「メイカセブン」店長・関口明美に密着。1日400個売れる名物「うすかわあんパン」や「77%ぶどうパン」など、ボリューム満点のパンで人気を集める老舗ベーカリーを切り盛りする、彼女の7つのルールとは。