10月25日(日)14時からフジテレビでは『ザ・ノンフィクション 母の涙と罪と罰 2020 前編 ~元ヤクザ マナブとタカシの5年~』が放送され、ナレーションは安達祐実が担当する。

また、挿入音楽はドラマ『東京ラブストーリー』『ひとつ屋根の下』などのサウンドトラックを手がけた日向敏文が担当。今回のために書き下ろしたオリジナル楽曲が起用される。

※「後編」は、11月1日(日)放送。

前科者、元ヤクザ、薬物依存、そこから抜け出し、やり直したい人々…。そんな彼らを支えることに人生をかけている男がいる。遊佐学(45)は、自身も元ヤクザで、覚醒剤で逮捕された前科がある。しかし、服役した学を故郷の母は信じて待っていてくれた。家族に支えられて、新しい人生を歩み始めることができたのだ。

「必ずやり直せると誰かに信じてもらうことが力になる」その経験から、今度は自分が誰かの支えになりたい。学は、薬物依存症の回復施設で働き始めたが、突然クビになってしまう。

番組が取材を始めた2016年、学は教会に住み込み、そこでヤクザを辞めて社会復帰を目指す青年、タカシ(当時28歳)の面倒を見ていた。人生をやり直したいと願うタカシは、介護施設で働くものの、長続きせず、部屋に引きこもってしまう。そしてある日、覚醒剤に手を出し、逮捕されてしまう。釈放されたタカシは、その後どんな生き方を選ぶのか。

一方、仕事を失った学の生活は苦しくなっていくばかり。しかしそんな中で、学は、新たな元受刑者の支援を決意する。覚醒剤の使用を繰り返し、12回の逮捕で計30年間を刑務所で過ごした高齢男性を自宅で引き受けるのだが…。

今回放送される『母の涙と罪と罰』は、2018年7月、2019年4月にも放送されたシリーズの第3弾であり、同作の語りを担当してきた安達祐実が、今回もナレーターを務める。

収録後には「(原稿を読みながら)泣きそうになりつつ…」と振り返った安達。薬物依存から脱却し社会復帰を目指して懸命に生きる元ヤクザの人々の姿を、自身はどう感じたのかを明かした。

<安達祐実 インタビュー>

――今回のナレーション収録の感想をお願いします。

“人って、人に支えられないと生きていけないんだな”というのは、毎回の収録で感じていますね。

――ご自身の家族と重なって感じる部分はありますか?

自分の家族に何か問題があるわけではないので、あからさまに実感するということはないのかもしれないですけど、自分が子どもの頃に親に育ててもらった恩もそうですし、逆に自分が大人になってからは家族を支えている部分があると思いますし。それぞれ家族の形とか関係性が違うとは思うんですけど、今回の映像のように、少なからず皆、支えあって生きている部分はあるのかなと思いますね。

――安達さんはこれまでの放送回でもナレーションを担当されていますが、前回と比べて変化は感じましたか?

勝手に(映像を)見させていただいている立場ですが、すごく、元気そうになったという感じがします。学さんがご自身で「いつまた薬をやっちゃうかっていうのは、本当に誰にもわからないものだ」とおっしゃっていて、そういう葛藤をいまだに抱えている部分もあるのかもしれないけれど、“この方は、やり直せたんだな”と感じました。

――映像を見て、個人的に“グッときた”部分はありますか?

学さんがいつでも否定せず、他者を受け入れて肯定しながら、支えていく姿勢とか、一つ一つの言葉とか。ご自身も覚醒剤を経験されたからこそ、出てくる言葉だとは思うんですけど。

そういう深い愛情というのは、ナレーション原稿を読んでいても泣きそうになりつつ、あまり感情移入しないように意識しながら読んでいます。それくらい、学さんの愛情はすごく励みになると思うし、学さんの一言が、相手にとって生きるか死ぬかの分かれ道になる場合もあって、重いなというか、一つ一つが「ずしん」とくる感じはありますね。

――「あまり感情移入しないように原稿を読む」とのことですが、その理由や、ナレーションで心がけていることを教えてください。

内容にもよりますけど、ある程度、客観的な目が必要なのかなと思っています。俳優の習性で、登場人物に感情を持ってしまうことがすごくクセになっているのですが、あまりそうならないように気をつけていますかね。特に『ザ・ノンフィクション』のナレーションに関しては、感情が入りこみすぎないようにしています。

――『ザ・ノンフィクション』に対する印象を教えてください。

現実を突きつけられるというか、自分の身に起こってることではないんだけど、でも現実ってこういうことなんだよなっていうのをきちんと見せてくれるイメージです。

自分自身のことではないけれど、自分にも起こりうることだったり、自分にも置き換えられることだったり、そういう人生の難しさをすごくはっきり突きつけてくるので、考えざるを得ないというか。でも、リアルを知るというのは、社会にとっても自分にとっても大切だなと思います。

――学さんやタカシさんが、自分の弱みを隠さず打ち明けて周囲と支えあっていたように、安達さんにとって、自分のすべてを話せる人物はいますか?

今はやっぱり、夫ですかね。親には心配かけちゃいけないっていうのがあるのと、子どもはこっちが守るべきものですし。自分のトラウマとか、弱いところ、プライドを捨てて、全部さらけ出して話せる相手は夫かなと。

けっこうお互いにそういうことを話す夫婦だと思います。(つらいのは)自分だけじゃないね、みたいな感じで終われば、次にいける感じですかね。

――主演を務めたドラマ『家なき子』と重なる部分はありますか?

『家なき子』での設定が実際に自分の身に起こったわけではないのですが、いろんな役を通して“人は負のスパイラルにはまっていく”というのは、現実でも本当にあるんだろうなと思います。一つうまくいかないと、坂道を転がるように何もかもうまくいかなくなるというのが人生には起こるんだろうなと感じます。そこから抜け出したいと思っても、なかなか抜け出せないもどかしさというか。

今回の原稿をもらってから家でも読んだのですが、「こんなことってある?」と思ってしまうくらい、自分にとっては映画の世界のような話で。でもそれが現実に起こっているわけで、知ることの大事さを感じました。

――もし、今回登場されていた方々と会えたとしたら、どういう会話をしますか?

やっぱり、今回の境遇は、当事者でないとわからないわけですよね。想像することや思いやることはできるけど、実際には経験していないので、正直に、わからないという立場でいると思います。

もし話してくださるなら、今まで起きたこととか、薬によってどんなことか起きてくるのか、経験者の口から聞いてみたいというのはありますが、学さんが「何気ない生活が本当に幸せだって思えることが一番いい」とおっしゃっていたように、“普通”がいいというか、ただただ普通の会話をできることが一番かなと思いますね。