10月30日(金)、全国公開中の映画「窮鼠はチーズの夢を見る」の大ヒット記念舞台挨拶が都内で行われ、主演の大倉忠義(関ジャニ∞)と行定勲監督が登壇した。

水城せとなによるコミック「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」を実写化した本作。主人公・大伴恭一(大倉)と、今ヶ瀬渉(成田凌)、2人の心が揺れ動く、狂おしくも切ない恋が描かれている。

ここでは、イベントでの2人のトークを、ほぼ全文起こしでお届けする。

コロナ感染、療養を経て回復を報告「“ただいま”です」

行定:久しぶりの満員の観客席というものを見て、今、ちょっと圧倒されていますが。本当にありがとうございます。9月11日に公開されて以来、ここまで、皆さまに育てていただいたというか。愛された作品だったなと実感しております。本日はよろしくお願いいたします。

大倉:前回の、成田くんと監督の舞台挨拶は家で見させていただきまして。参加できなかったのはすごく残念に思っていたんですけれども。成田くんは、人前でぬいぐるみなんて、持ったこともないだろうに持たせてしまい(※)、申し訳ない気持ちになりながら、見ていました(笑)。

※大倉は、新型コロナウイルス感染で療養のため、前回の舞台挨拶を欠席。その代役として“ぬいぐるみ“を、成田が手に持ち登壇していた。

今日は、こうやって皆さんにお会いできて、本当に久しぶりにお客さんの前に立てました。いつもはライブが1年に1回あるんですが、今年はどうなるんだろうと思っていて。こういう機会をすごくうれしく思います。短い時間ですが、よろしくお願いします。

──大倉さんは体調が回復されてから初めてお客様の前に立ちましたが、お気持ちはいかがですか?

大倉:皆さんも、多分(コロナに)かかっていらっしゃらない方が…もちろんそうだと思いますけども(笑)。ご心配をおかけしましたが、非常に…非常にというか、万全の体調に戻りまして。引き続き、(感染に)気をつけていただいて。でも、映画もこれだけ満員で観られることになったってことですもんね。ありがとうございます。“ただいま”です。

──公開から1ヵ月半が経ち、反響はいかがですか?

行定:「何度も観た」という感想が多いですね。「観るたびに発見がある」だったり「だんだん見え方が変わってくる」だったり。この映画自体、ラブストーリーとして、僕はそこにすごく特化して描いた作品だと思っていて。「恋愛ってどういうことなんだ」とか、「人を好きになること、受け入れることはどういうことなんだ」っていうのを中心に描いた作品なので…。

でも、普通はそういう映画を撮るときに、もっと入り込んで、主観的に撮るイメージがあるんですが、これは、この2人(大伴と今ヶ瀬)を客観的に見つめた映画になっているので、観客がむしろ能動的に、主観的になっていくというか。近づいて見てくださっているなぁと思います。「2人を凝縮した空間を、自分のものとして見てくださっている」と、反響で感じられて、それはすごくありがたいなと。

──大倉さんにとってこの映画は、どんな作品になりましたか?

大倉:どういう作品なんでしょうねぇ…。 自分が最初に観たとき、そこまで、「心情が丁寧に説明されているのか」という部分には特に注目していなかったんですが、「そう言われればそうだな」と思い…。

雑誌などの取材のとき、「どこまで語ったらいいんだろう」と、いつも思うんですが、これだけ「恭一はこうなんじゃないか」とか「今ヶ瀬はこうなんじゃないか」って、皆さんが想像してくださる作品なので、いつまでも言わないほうが素敵なのかもしれないですし、それだけ奥深いというか…。

そういう作品に僕は携わらせていただけるようになったんだなというか。自分の経験の中でも、自分で言うのもなんですけど、“代表作”になればいいなと思っています。

大倉の演技は「説明的な部分がなくて、すごくシンプル」行定監督が絶賛

──大倉さんをイメージして脚本を執筆したそうですが、その経緯を教えてください。

行定:キャスティングに困っていて。自分と違うセクシュアリティを演じるのは難しいと思うんです。誰にやっていただけるのか、いろんな人を想像してみても、なかなか当てはまらなくて。

脚本家に、誰を想像して書いたのか聞いてみると、ショーン・ペンとかトニー・レオンとか、大体いつもは海外俳優が出てくるんですよ。だけど、今回は大倉忠義さんだって。「知らないんですか?大倉さんってすごく、演技いいんですよ」って言われて、いろんな映像を見せられて。声が良いのと、色気があって、謎めいている雰囲気がとても良くて。「自分の心情をわかってもらおう」という、説明的な部分がなくて、すごくシンプル。

確かに良いなと思い、「多分ダメって言われると思うけど、聞いてみようか」なんて打診してみたら、意外と前向きな返事が来て。「断る理由がないじゃないですか!」って。この人は、真っ直ぐに受け止めてくれる人なんだな、と。でも、奥底には何を考えているのかわからない、というのは、クセがあって良いですよね。

──大倉さん、意味深な顔をされていましたけど、今の話を聞いていかがですか?

大倉:ありがたいですねぇ。皆さんも、いろんな媒体を通じて、僕を見てくださっていると思うんですけど。テレビの僕が本当なのか、雑誌の僕が本当なのか、いろんな見方をしてくださっていると思うし。基本的に素の姿なので、どれも本当の僕の姿ではあるんですが、本当の本当は誰も知らない、というのは、うれしくてたまらないですね。一生かけて、(本当の僕を)見つけてほしいですね(笑)。

──撮影中に印象的だったことは何かありますか?

大倉:大きく方向転換するよりも、「もうちょっとこの部分、こういう風にできる?」って指示を出してくださって。で、演技が終わると、「何考えていたの?」とか、「大倉って変だよね」とか、シーンが終わるたびに何か感想を言ってくださいましたね。

それと、現場に行ったとき、何かしらの違和感が少しあったりすると、敏感に感じてくださって。ちょこちょこっと調整して、その違和感を取り除いてくださる監督です。

──今日は成田さんがいらっしゃいませんが、何かエピソードはありますか?前回の舞台挨拶では、成田さんが大倉さんへの愛をだいぶ語ってくださっていましたが。

行定:「大好きだ」って言っていましたよ。

大倉:僕もね、好きなんですけどね。「好き好き」言われると恥ずかしいから、こう(気まずく)なってしまうんですよ。でも、好きなんですけどね。共演したシーンはどれも印象的だし…。耳かきとかやってもらいながら、「すっげぇ恥ずかしかったな」って。耳の中見られるってすごい恥ずかしいじゃないですか。

あれ?質問なんでしたっけ?あ、エピソード?そうだ、撮影の裏側が可愛かったですよ。ジャニーズでは山P(山下智久)とも共演しているし。「ジャニーズ独特の前髪に憧れていたんですよ」って(笑)。ここ(額中央)に1本だけ(毛束を)垂らして、残りの髪をこう(サイドに)持ってきて。定番でしょ?それを、「学生の時に真似していたんですよ!」って、話をしたり。

すごい熱く語ってくれて、「これ、ちゃんと見なきゃわかんないんですよ、知ってる?」なんて言っていたのがすごく印象的です。そういえば自分もデビュー当時、そういう髪型していたなって。

それから成田くん、最初に食事したとき、すごく明るい人だったんです。僕、現場に入るとそんなにワイワイわちゃわちゃできないタイプで、「成田くん、(盛り上げ役)お願いします」って言っていたのも忘れていて。あとから「そっか、だから成田くん盛り上げてくれていたんだ」って、すごく申し訳なくなりましたね。

──本作は海外での上映も決定していますが、それについていかがですか?

大倉:うれしいですね。関ジャニ∞としては台湾にしか行ったことないですけど。僕自身、日本から飛び出たところで、どなたが僕を知ってくれているのか、わからないんですが。日本のエンタメにおいても、こういう映画はなかなかないと思うので、こういう(ストーリーの)進み方しているんだ、というところに関しても、新しく興味を持ってくださればなと思います。

撮影当時を振り返り「僕らグループも、すごくいろいろあった」

──実は、大倉さんには内緒にしていたんですが、行定監督から大倉さん宛のお手紙を預かっておりまして。

大倉:えっ!?何なに?ヤバイヤバイ…。なんすか?え、なんすか(笑)?

──代読をさせていただいてもいいですか?

大倉:…え、裏(で読むの)じゃダメですか?

手紙の内容はこちらの記事で!

大倉:思い返せばいろいろありましたねぇ…。僕らグループも、すごくいろいろあったんですよね。今、いろいろ思い出しましたけど、たぶん、皆さんも思い出したんじゃないですか?本当に、運が…悪いと言ったらアレですけど、いろいろ重なったときに…骨折ったのは自分が悪いんですけど。すごい状態で、本当に申し訳ないことをしたなと思いながらも(撮影をしていました)。

確かにワンシーン、カットされているんですよね。僕が「あっ、やっぱ走れない」ってなったきっかけのシーンがあるんですけど。「お前はもういらない」って言う部分のあとですね。あとちょっとだけ撮っていたシーンがあったんですけど、そこでいつもより速く歩くところがあって、「イタタタッ」ってなって、成田くんに追いつけなかったんです(笑)。「すいませ〜ん(泣)」って。「『走る』って書いてあるんですけど、ここ無理です〜」って。今思い出しましたね。

いやでも、改めてありがたいお言葉ですし。この映画を撮り終わってからもいろいろ大変だったなって思いながら…。当時に戻ると泣きそうになるので、目の前にいる、ちょっと眠そうな記者の方を見ながら耐えていました(笑)。

行定さんと出会えたことも大事なご縁ですし、成田くんとも。今回すごく近い役で、なかなかない演技でしたけど、「また違う作品でもご一緒したいですね」っていうことを取材のときも話していて。もちろん行定さんにも、ぜひまたお願いしますっていう話をしていたので、僕も期待しています。

行定:今度は、全然違う役を。真逆の(笑)。

──今回は大ヒットを記念して、鏡開きをご用意しております!

大倉:僕、鏡開き初めてです。運がアレだったんで、ちゃんとお祓いには行ってきたんですけど、個人的に(笑)。

鏡開きの模様を含めた舞台挨拶の全容は、こちらの記事で!

──最後にお2人から一言ずついただければと思います。

大倉:皆さん、お忙しい中ありがとうございました。たくさんの方に観ていただいて、しかも、何回も!これで、もうちょっと上映が続いて、映画の公開は終わっていくんですかね?けれども、僕にとってもそうですし、皆さんにとっても、何かあったときに見返すような作品になってくれたら…。

何をやっても、すべてが消費されていくような時代ですけれども、何かが残っていくものに参加できる、この仕事にすごく誇りを持っていますので、皆さんにとっても大切な作品になってくれたらと思います。また違う形でもお会いできることを願っています。

行定:2020年、今年は本当に大変な年で。僕にとっても忘れられない年になったし、そんな中でこの「窮鼠はチーズの夢を見る」が公開できたという、この奇跡、この作品が皆さんに届いたということ。そして、できれば、皆さんの心の中に、この作品が残っていたら、忘れられない映画になっていたらうれしいなと思っております。

今日は主役の大倉忠義とともに、満員の皆さまの前でご挨拶できるというのは、本当にありがたい話で、ここまで皆さんが、この映画を愛してくださった結果だと思いますので、本当にお礼が言いたいです。ありがとうございました。

最新情報は、映画「窮鼠はチーズの夢を見る」公式サイトまで。