映画「窮鼠はチーズの夢を見る」の大ヒット記念舞台挨拶が10月30日(金)、都内で行われ、主演の大倉忠義(関ジャニ∞)と行定勲監督が登壇した。

原作は、水城せとなのコミック「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」。大倉演じる主人公・大伴恭一と、成田凌演じる今ヶ瀬渉、2人の心が揺れ動く、狂おしくも切ない恋が描かれている。

新型コロナウイルス感染で療養していた大倉にとって、復帰後初の公の場となった、今回の舞台挨拶。イベントでは、行定監督から大倉への手紙が読まれるサプライズも。ここでは、その手紙の内容全文をお届けする。

【行定勲監督 手紙全文】

大倉忠義様。やっと今日、お客様の前に立てて安堵していることでしょう。しかも、満員の映画館で、嬉しいですね。ここまでこられたのも、観客の皆さまが「窮鼠はチーズの夢を見る」を愛してくださったおかげです。観客に届いて、映画は完成します。数多(あまた)ある映画の中で、「窮鼠」を選んでいただいた方々がこれだけいたことは、私たちが映画に取り組んだ結果です。誇りに思いましょう。

思い返せば、大倉が(大伴)恭一役を引き受けてくれたところからこの映画は実現の道を歩き出しました。あの頃、岐路に立たされていた君が、よく、映画出演を決めてくれました。衣装合わせの頃は、太っていたわ、荒(すさ)んでいるわで、「大丈夫かな?」と心配しつつも、そんな内面を露呈してしまっている正直な君が人間臭くて、逆に興味を持ちました。

映画を撮り始める前に、もっと君とわかりあいたくて、あえて踏み込むことが、君をラクにする術(すべ)だと考え、「荒れてる?」って、直球を投げたら、君はどうしようもない顔をして、満面の笑みを浮かべ、「はい」って、正直に答えたよね。足の指を骨折していたから、情けない気分だったんだろう。コンディションが完璧じゃない状態で挑む映画には、もどかしさもあっただろうけど、撮影現場での君は、「はい」「わかりました」「やってみます」の言葉しか口にせず、淡々と役を自分と同化させ、情感に訴える表情をたくさん見せてくれた。

一度だけ、「明後日の走るシーン、走れません!」と、情けない声で言ってきたことがあったけど、俺はそこにも、大倉の人間味を感じられたよ。むしろ、不完全な状況下で演じた恭一だったから、人間臭さが出ていたし、そこに、大倉忠義の持つ本質がないまぜになって、恭一という男のニュアンスを作り出していたのだと思います。

時に、感情が抜け落ちたような表情が、大人の色気を放っていた俳優・大倉忠義の今後の活躍に期待をせずにいられません。「窮鼠はチーズの夢を見る」は、胸を張って“代表作”と言える作品になりました。“大倉忠義”という優れた俳優とも、本当に、良い出会いができた。またみんなが驚くような役を一緒に作りたいと思っています。それまでは、くれぐれも、体には気をつけて。また飯でも行きましょう。

「窮鼠はチーズの夢を見る」監督・行定勲。