8月1日(日)14時からフジテレビでは『ザ・ノンフィクション「女装と 家族と 終活と~キャンディさんの人生~」』が放送され、語りを水川あさみが担当する。

世間の偏見や差別にめげることなく、最後まで自分らしさを貫いて生きたい

69歳の女装愛好家、キャンディ・H・ミルキィさんは女装を始めて40年以上。かつては原宿の歩行者天国に出没し、話題の人となった。

23歳で結婚し、3人の息子にも恵まれたが、女装趣味が収まることはなく、やがて妻は「生理的に受け入れられない」と家を出ていき、家庭は崩壊してしまった。

現在、一人暮らしのキャンディさんのもとを息子が訪ねるが、息子たちは父親の生き方をどう感じているのか。

今、70歳を手前にし肺の病を患っているキャンディさん。症状が悪化する中、残された時間を意識し“終活”を始めた。最後の最後まで、やりたいことを貫きたいというが…。

そんなキャンディさんを、4歳年上の姉が訪ねてくる。幼い頃、隠れて姉の服を着ていたことが、女装の原点だった。時を経て、弟の女装姿を初めて見た姉は、何を思うのか。

「コスプレ」「LGBT」といった言葉もなかった時代から、世間の偏見や差別にめげることなく、女装を続けて来たキャンディさん。そのひたむきな生きざまに、「共感しかない」と感銘を受けた水川に、収録後に感想を聞いた。

<水川あさみインタビュー>

――ナレーションを終えての感想をお聞かせください。

もう、すごくハッピーな方ですよね。明るくて、人を元気にする力がある。終活も、人生を終えていくことを考えると、どうしても暗い方に入りがちなものだと思うんですけど、キャンディさんは、全然そんなことはなくて。

お葬式は、パーッと明るいのがいい、とおっしゃっていたように、すごくエネルギーが高いんだろうなって。とても素敵な方だと思いました。

――ご自身に響いたのはどんな部分ですか?

生き方そのものが個性的でユニークで、とても堂々とされている。ご自分を恥じることも一切ないですし、周りに偏見の目があったとしても、そこを跳ね返すほどのエネルギーを放つ強さがあって。

自分が自分らしくいるというのは、わがままでも何でもなく、それでいいんだ、という風に思わせてもらいました。

よく「価値観の違い」みたいなことを言いますけど、価値観って違って当たり前なんですよね。そこをどう面白がったり、相手に歩み寄ったりできるかってことに、人間性が出てくると思うんです。

キャンディさんはその懐が、すごく大きくて深い。みんなこのくらいの懐の大きさがあればいいのにと思いました。

――共感する部分も多かったようですね。

私もどっちかというと、キャンディさんのような、ああいう(自由に生きる)人生の方が向いてるなと感じますので、すごく気持ちがわかります。時にちょっと、自分よがりに見えたりすることがあるかもしれないですけど、やっぱり自分が信じるもの、貫きたいと思うことは貫きたい。わがままということではなくて。

そういう”軸”みたいなものを持つというのは、すごく、すごく共感する部分ではあるので。というより、共感しかないって感じですね。

――キャンディさんが女装するように、水川さんにも変身願望のようなものはありますか?

私たち(役者)は、いろんな役を生きるので、そのときの役の服装や身なりをするというのは、普段からしていることなので、特にないですね。

キャンディさんは、女装するからコスプレのような感じがしますけど、ご本人が「身だしなみ」と言っていたように、キャンディさんにとっては正装のようなもので、コスプレではないんじゃないかな、と思います。遺影も女装で撮りたいと言っていましたもんね。

――その身だしなみで、街ゆく人のリアクションを見るのが生きがい、とも話していました。水川さんにとっての生きがい、モチベーションは何ですか?

いろんなところに転がっていて、何か一つということはないですね。作品を作っている段階で言うと、その現場でスタッフ、キャストみんなが同じ方向に向かっていくという、その過程がモチベーションになったりもするし、出来上がってからは、皆さんの元に届いたあとの反応や、それをどう受け取ってくれたのかを聞けるのもモチベーションです。

あとは、作品が公開されて何年か後に、あの作品が好きでしたとか、あの役がとても心に残っています、なんて言われると、すごくうれしくて、それもモチベーションにもなります。

――最後に読者、視聴者へのメッセージをお願いします。

キャンディさんの、もう画面からはみ出るくらいでそこに映っていること、そのものが素晴らしいです。今、いろいんなところで鬱屈しているような世の中ですけど、自分は自分でいいんだ、っていうことを認めてくれるような、背中を押してもらえるじゃないですけど、そんなキャンディさんの存在が伝わるといいなと思います。すごく勇気づけられるんじゃないかと思っています。