視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。
11月10日(火)放送回では、ヘッドハンター・中田莉沙(なかだ・りさ)に密着。
今後、急成長を遂げそうなベンチャー企業、いわゆる「スタートアップ」のために、優秀な人材を探し、転職に導くのが彼女の仕事だ。昨年の転職成約数などの実績が評価され、「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」の部門別日本一を獲得している。
転職を通して、人の、企業の未来を変える“革命家”、中田莉沙のセブンルールとは。
ルール①:提案するのは3社まで
転職サイトに登録された経歴を元に、適正に合ったスタートアップ企業を提案するのが、彼女の仕事。月におよそ30人と面談し、内定に至るのは2、3人。紹介をした人材がその会社に入社すれば、彼女のもとに報酬が入る、成果報酬型のビジネスだ。
この日のミーティング相手は、昨年彼女が成功させた転職者。転職後のフォローも、大事な仕事の一つ。
前職で大ヒットゲームを開発指揮していた有名プログラマーの男性に、彼女が提案したのは、「ZOZOテクノロジーズ」。ゲームとは畑違いの業界に転職を果たし、現在はファッションコーディネートアプリ「WEAR」の開発総指揮を任されている彼は、「一般的なヘッドハンターの方と違って、中田さんは2、3社しか紹介してくれなかったので驚きました」と振り返る。
転職者に会った時に受けた「プロダクトに愛がある」という印象が、引き合わせた経営者との共通項だった。スキルやキャリアよりも、人と人との相性を大切にし、むやみに提案はしないのが彼女の方針。
「“何を”してきたかではなくて、“なぜ”それをしてきたのかを大事にする。人生には絶対、ストーリーがあるので」と、強い眼差しで語った。
ルール②:年収だけにこだわる人は断る
理想的な転職を導くための第一歩は、経営者を知ること。定額制都市型シェアファーム(現在は無料)などを運営する「プランティオ株式会社」のCEO・芹澤さんに会うため、彼女は恵比寿の屋上農園を訪ねた。
自社開発した端末で温度や湿度、天気など、作物を育てるのに必要な情報を管理し、「水やり」や「間引き」など、適宜必要な作業を、コミュニティの参加者に通知する。それを受けて誰かが作業をすることで、またそのコミュニティに通知が届き、参加者たちからの「いいね」で作業者本人にポイントが貯まっていくという、感謝経済の仕組みが用いられたサービス「grow」。
「人口が減少していくのと同時に、農業就業人口もどんどん減っていくのは目に見えている。『いつまで食という大事なものを人任せにしているんですか?』と問いたい。ロンドンなんて、3000ヵ所の農園があって、10万人が野菜を育てている。なぜ農耕民族の日本人ができないんだと思って」と、芹澤さんはサービスへの思いを語る。
そんな、熱意溢れるスタートアップを支援するのが彼女の第一の役目であり、それは肩書きにも現れている。名刺に記された肩書きは「ヒューマンキャピタリスト」。
「人って、会社にとってかけがえのない資産だと思うんですよね。それをご支援させていただくという意味を込めてヒューマン(人)+キャピタル(資産)で、『ヒューマンキャピタリスト』 」と、その由来を明かした。
企業の未来を変えるような人材を探し出すからこそ、年収にこだわる転職希望者など、向いていない場合は、はっきり断ることもある。
「『これを何十年かけてやりたい』という、生の自分の感情の部分が、大事な意思決定の瞬間になる。その思いを知ってお引き合わせをさせていただいた方は、一緒に働ける仲間になれるんですよね」
これまで転職を支援してきた中でも、年収が2倍になったケース、2分の1になったケースの両方があるという。
ルール③:ペットは買わない
小さい頃から曲がったことが大嫌いだった彼女。からかいやいじめの現場を見るたび、「なんでそういうことをするの?」と、問い詰めていたという。
そんな彼女が大手証券会社に就職をして目の当たりにしたのは、時代遅れの女性蔑視と、効率の悪い業務の数々。保守的な体質に納得がいかず、上司とたびたびぶつかった。そして、革命家と呼ばれるように。
「なんで?」と思うことに、とことん抗う姿勢は、「ペット」に関しても。自宅でチンチラとハムスターを育てる彼女だが、ペットは店で購入するのではなく、知人から譲り受けると決めている。
そこには「性別や年齢を、差別や区別したくない」という彼女の強い意志が。「人間の命を買わないのと同じで、ペットの命を買うっていうことは、自分の中で納得がいっていない」のだという。
ルール④:予定は先着順
夫の昌大さんは、秋田で暮らしている。もともと高校の同級生だった2人は、遠距離で付き合い始めると、6ヵ月でスピード結婚。結婚後も、会うのは月に2回ほどで、同居をしたことがない。
彼女は、「別に(夫は)特別じゃないというか。友達や仕事のクライアント、親、そこにあまり優劣をつけていない」と話す。
予定もすべて先着順で埋めていき、たとえ夫が秋田から帰ってきても、先約を優先するという。なぜ夫婦は一緒にいなきゃいけないのか?彼女は、結婚の当たり前にも縛られない。
ルール⑤:春夏秋冬クリスマスソングを聴く
週末、彼女の実家を訪れると、家族総出でお出迎え。母親を「めっちゃ美人なんです」、そして弟を「イケメンです」と紹介し、キッチンにはラザニアを作る父親の姿が。彼女は、絵に描いたような幸せな家族で育った。
「“悪い気”は伝染すると思うので、あまり人に悪口や嫌なことは話したくない」と、彼女が話すのを聞くと、母親も、「うちの家族、人の悪口を言わないです」と同意。
決して悪口や悩みを人に言わない彼女が、時に抱えるモヤモヤを整理するためにしているのが、クリスマスソングを聴くこと。季節に関わらず、年中聴いている。
彼女の誕生日は、街がクリスマス一色の12月。小さい頃から世界中が自分を祝福しているように感じていたという。
ルール⑥:気合いは髪の色で入れる
室長に昇進した彼女。しかし、「『ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー』とかも、過去の功績が今、認められてるじゃないですか。恥ずかしいんですよ、私的には。今が一番良くありたい」と、満足はしていない様子を見せる。
「人生は短い」と話す背景には、幼馴染の死があった。学生時代、病気にかかっていたわけでもない幼馴染が、突然の発作で亡くなったという。「人って簡単に死ぬんだなって思いました」と、当時を振り返る。
今年はコロナの影響で、思うように転職が決まらない。そんな中、美容院を訪れた。
気合いを入れるために、彼女が決まってするのが、派手な髪色にすること。「髪の毛が派手なのに仕事できなかったら、ダサいじゃないですか」と話す彼女。自らを追い込むため、髪の色は覚悟の印だ。
ルール⑦:“密”の良さを忘れない
仕事終わりの飲み会に同席する松本さんとは、昨年、彼女が転職を決めた縁で親しくなった。松本さんは、彼女を「クライアントと友達の垣根がない。形式的にメールで『お世話になります』みたいなのを永遠にやっていたら、“密”にはなれなくて、“疎”だったと思う」と分析する。
今年10月、東京・虎ノ門に、スタートアップのためのシェアオフィス「CIC TOKYO」が誕生。アメリカでの成功例をもとに、スタートアップだけでなく、大学の研究機関、投資家も入居している。 異業種が交わりあうことで生まれる、日本発の新たなビジネスが狙いだ。
彼女の務める「フォースタートアップス」は、このシェアオフィスにふさわしい人・企業の紹介を一手に任された。
「今って、その場に居合わせて偶然話が弾んで、ビジネスが生まれるみたいなことって起こりにくくなっているけど、自然にいろんなことが生まれる場所って、やっぱり(人が)集まっている場所で。その“密”の良さを忘れない」と、やる気を見せる彼女。
「『やってやろう』って、ちょっとメラメラしました。だけどひとりじゃ出来ないので、仲間を探して、みんなと連携してやりたいです」と、“密”の大切さを述べた。
「それこそ皆さんの携帯に入っている『Google』や『Twitter』『Instagram』といったアプリの中で、日本発のサービスがないって、『なんかちょっとやばくない?』と思って」。そう危機感を募らせている。
「『この事業で自分の命を燃やしたい』って思えるものを、常に探すようにはしています。それくらいの覚悟がないとできない」。
なんで日本でビジネスが生まれにくいのか?なんで新しさを生む環境が整わないのか? 日本が抱える課題を解決するため、彼女は「なんで」と抗い続ける。情熱のある人と人とを、“密”にすることで。
※記事内、敬称略。
次回、11月17日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、ワイン醸造家・須合美智子(すごう・みちこ)に密着。「日本ワイナリーアワード2020」で3つ星を獲得した、東京御徒町にある小さなワイナリーの責任者を務める須合は、45歳・未経験の状態で、パートの主婦からワイン醸造家の道へ転じた。「やりたいと思ったらやったらいい。年齢に関係なく」と語る彼女の7つのルールとは。