毎週木曜22時よりフジテレビ系で放送中の木曜劇場『推しの王子様』。

本作は、ゲーム会社「ペガサス・インク」の社長・日高泉美(比嘉愛未)が、“推し”そっくりな五十嵐航(渡邊圭祐)を理想の男性に育てるために奮闘する“逆マイ・フェア・レディ”な日々を描くロマンティック・コメディ。

自身の理想を詰め込んだ推しキャラ“ケント様”と恋をする乙女ゲーム「ラブ・マイ・ペガサス」を制作し、ヒットさせた泉美。ある日、その“ケント様”そっくりな航と遭遇する。しかし、そっくりなのは容姿だけ。航は、無作法で無教養で無気力という“残念すぎる王子様”だった。

だが、「自分の居場所なんてない」と言った航に、かつての自分を重ねた泉美は、航を理想の男性に育てると決意。容姿を大改造し、会社に雇い入れ、自分のマンションに住まわせる。あまりにポンコツな航に、泉美は育てていく自信をなくすが、ひたむきに仕事と向き合う泉美の姿を目の当たりするうちに、航の気持ちにも変化が訪れ…。

胸キュンしながらクスッと笑える本作。航がこれから“どう育っていくのか”にも注目が集まる。そんな航に大きな影響を与えている主人公・泉美役を演じる比嘉にインタビュー。作品の魅力、役柄への向き合い方、現場の雰囲気や共演者について聞いた。

<比嘉愛未インタビュー>

大人も子どもも関係なく、「いつだってときめいていいんだ!」

──まずは、初めて台本を読んだときの感想をお願いします。

『推しの王子様』の“推し”とはなんぞやという感じでしたが、純粋に自分がときめくもの、生きがいを見つけることの素晴らしさ、そして、大人も子どもも関係なく、「いつだってときめいていいんだ!」ということが、素敵に描かれているなと思いました。

そして、“逆マイ・フェア・レディ”的な内容ですが、女性が自立してどんどん社会に出ていくようになった、まさに今の時代に当てはまる作品だと感じています。

自立した女性が、ひょんなことから出会った年下のダメンズを育てる。それが、テンポ感のあるコメディタッチで描かれていて、早く映像で見たいと思わせてくれる台本で。難しくなくて、明るく楽しめる新たなラブコメディになるんじゃないかと思いました。

──比嘉さんにとっての“推し”はなんですか?

それが、まだ推しを見つけられていないんです。泉美を演じているときは、「ケント様~!」という気持ちになれるのですが、私自身、そこまでハマりすぎて大変だというオタク気質な部分がなくて。

今回、泉美を演じたことで「これじゃ、いかん」と思ったので、推しを頑張って見つけようと思います(笑)。

──泉美を演じることで、推しに夢中になる方の気持ちがわかってきたということでしょうか?

そうですね。泉美のセリフにもあるのですが、「好きなものやときめく生きがいがあるだけで、人って強くなれたり、日々が楽しくなったり、生きる活力になる」ということは、まさにそうだろうと思います。

私の場合は、上京して15年、まさに仕事がずっと推しだったんです。仕事というより、お芝居。みんなで一つのものを作るという現場での作業が大好きで。いろんな人と出会って、いろんな役柄の人生を生きるって、とても刺激的なんです。

たくさんの失敗や後悔がありつつも、それが糧となってさらに進んでいける。そういうお芝居は、私の中で一生変わらない推しです。

でも、仕事ではない部分での推しを見つけられるように、もっと視野を広げていこうと思いました。

壁ドンにドキドキ。でも先輩として顔には出さないように

──渡邊さんとの共演はいかがですか?劇中では、たくさん胸キュンシーンがありますね。

キュンキュンしています。なかなか壁ドンされることなんてないですし、渡邊くんのような方が至近距離にいたら、女優だってドキドキしますよ。「うわっ、近い!」と思って本当はドキドキしているけど、そこは先輩として顔には出さないようにしています(笑)。

ただ私は、今まで恋愛ドラマをあまり経験してこなかったので、“ドキッとしたときの顔”をどうお芝居したらいいのか分からなくて。試行錯誤しながら演じています。

監督やプロデューサーさんに、いつも「大丈夫でした?どうでした?」と確認するのですが、正解がないので悩みますね。でも、世の女性たちを代表して体現しないといけないし、そこはしっかりと心が動くように、航くんに集中しています。

──比嘉さんから見た渡邊さんは、どんな方ですか?

年下ですが、頼れる存在です。航が渡邊くんで本当に助かっていますし、心底よかったと思います。彼は、社会人として世間を知った上でこの業界に入ってきているんですよね。だから浮ついていなくて、ちゃんと地に足がついているし、達観しているところもある人だと思います。

現場でも冷静に周りを見られる人で、決して情熱的に自分の意見を言うタイプではないですけど、静かなる情熱を持っている方だなと。パッションが合うから一緒にいて楽しいし、ボケボケな私の発言をすべて拾ってツッコんでくれるし、ユーモアもあって、すごく魅力的な方だと思います。

ただ、まだ全部出し切ってはいないと思うんです。小出しにしていっているな、と(笑)。一緒に作品を作っていく時間を過ごせば、もっと渡邊くんの魅力や意外性などいろいろな部分を見られるんじゃないかと思ったら、これからが楽しみでしょうがないです。

──渡邊さんとの相乗効果で、泉美の魅力もさらに出てきますね。

間違いなくそうですね。私も生身の人間なので、渡邊くんとのセッションで生まれる何か…お芝居だけではない、この現場ならではの空気感が生まれてくるんじゃないかと思うんです。

それによって、思いもしなかった泉美の感情や表情が出て、お芝居なんだけどリアルになっていく…。ドキュメンタリーのようになっていくことが、もの作りにおいては最高ではないかと思います。

年下男子の教育で母性本能が覚醒…からの恋愛モードへ

──年下の男性を教育するという物語に関しては、演じていていかがですか?

楽しいですよ。教育というよりも、子どもっぽく言い合いみたいになるシーンが多いので、じゃれているみたいな感じです。決して上からではなく、航を育てたいという愛情ゆえというか。私自身は、人を教育する器ではないので、疑似体験ができて楽しいです。

航は、まさに磨く前の原石。磨いていくとキラキラして、泉美から教えられたことを純粋に吸収していくので、泉美とリンクして私もうれしくなるんです。「言葉遣いがちゃんとできるようになった」とか「礼儀正しくできるようになった」とか。航を見て微笑んでいる泉美の描写がよくあるんですけど、私自身が「ああ、よかった~」と思っているので、我ながらいい顔をしていると思います(笑)。

──母性本能をくすぐられる感じですか?

そうです!母性本能…それに近いです。自分の中に母性本能が芽生えたというのは新たな発見ですし、うれしいです。ドキドキとはまた違ううれしさ…ジワジワと愛があふれるような感じです。

──そんな泉美が、母性から恋愛に変わるスイッチはどこにあるのでしょうか?

リアルなことを言いますと、白石聖ちゃん演じる、航の幼なじみで「ペガサス・インク」のインターン・古河杏奈が、航と2人で話しているのをちょっと見ているだけでもザワザワしました。

「あ、ちゃんと泉美は焼きもち焼いてる」と思えたので、こういう感覚でどんどん気になっていくのかなと。いきなり「好き!」ではなくて、「あれ?なんか引っかかる。なんだこれ?」っていうモヤモヤから、徐々に自分の気持ちに気づいていくという。

泉美は、純粋でまっすぐなんですけど、恋愛という部分にはフタをして鈍感になっている女性。今の働く女子、自立した強いと言われる女性たちは、そんな泉美に共感する方も多いのではないでしょうか。私自身も不器用な部分があるので、すごく共感できます。

だから、泉美は徐々に自分の気持ちに気づいて、つまずいたり向き合ったりの繰り返しで、どんどん素直になっていく人なんじゃないかなと思います。そういう過程も丁寧に描かれているので、楽しんでいただけたらうれしいです。

──比嘉さんは、第1話の放送前に行われた製作発表で、「セリフ覚えが速くなった」とお話されていました。これまで出演されていた作品と今作では何か違いがあるのでしょうか?

私はすごく不器用なので、これはまでセリフ覚えに時間がかかっていたんですけど、ここ1ヵ月くらいでどんどん速くなっているんです。コメディは掛け合いとテンポが大事なので、相手のセリフもしっかり覚えないといけないという責任感があることが、まず一つでしょうか。

それから、準備期間が短かったこともあって、撮影しながら次のセリフを覚えなければいけない状況にありました。だから、短時間に集中してセリフを入れられるようになったのかなと思います。

そして、一番大きな理由は、泉美が私の中でしっかり育ってきているから、セリフとしてではなく、ちゃんと気持ちが入ってくるから、その気持ちが言葉になっているのかなと。それは、すごくうれしいことですね。

自分へのご褒美は、故郷・沖縄でのデトックス

──今年は『推しの王子様』の収録があって夏休みもないと思います。クランクアップして、自分にご褒美をあげるとしたら、何がしたいですか?

迷わず沖縄に帰りますね。実家に帰って、家族に会って、一緒にご飯を食べて、海を見て、何も考えずにボーッとしたいです。これは、いつものルーティーンなのですが、昨年からコロナ禍でなかなか帰れなかったので、もしクランクアップするころに状況がよくなっていれば、沖縄に帰ってデトックスしたいです。

このお仕事をしているといろんな役柄を生きたり、いろいろな人と出会ったり、たくさんのことをインプットするじゃないですか。でも、容量の限界がくる前にアウトプットしないと爆発してしまいます。私にとってのアウトプット、浄化作用は沖縄なんです。

素の自分に戻る。全部捨てるわけではなくて、1回本来の自分に戻ることで、今までの経験値が自分を底上げしてくれるような気がしていて。その繰り返しが、私にとっての大事な作業です。

このドラマをやり遂げて沖縄に帰ったときに、親に自信を持って「頑張ったよ」と言えるように、精いっぱい頑張ろうと思います。

──最後にメッセージをお願いします。

好きな人やものに出会えたとき、人生は彩られていきます。自分にとって何が大切なのか。そういうヒントが散りばめられたドラマです。現場の雰囲気はとてもよくて、スタッフ、キャストがいとおしくてたまりません。その空気感が伝わる作品だと思いますので、ぜひご覧ください。

撮影:今井裕治