現在、第2シーズンが放送中のフジテレビ『監察医 朝顔』。法医学者の娘と刑事の父という父娘が、かたや解剖、かたや捜査で事件や遺体の謎を解き明かし、見つけ出された“生きた証”が、遺された人たちの心を救っていくヒューマンストーリーだ。

このドラマで、主人公の法医学者・万木朝顔(上野樹里)の父親・平を演じているのが時任三郎。父であり、刑事であり、さらに、5歳になる朝顔の娘・つぐみ(加藤柚凪)の“じぃじ”でもある平。あわただしい暮らしの中で成長していく娘と孫を、慈しみに満ちたまなざしで見守る“要”の存在だ。

「前作からつながっている感覚で、ずっと『朝顔』に関わり続けている感じがする」という時任が、万木家の雰囲気や第2シーズンの見どころ、自身の死生観を語った。

<時任三郎 インタビュー>

──第2シーズンは、2クール(6ヵ月)の放送期間となるだけではなく、放送時期もずれるなど、これまでとは違う環境での撮影となっていますが、どんなお気持ちで臨まれていますか?

昨年9月に第1シーズンの撮影を終え、今年2月に第2シーズンの撮影に入ったので、実質5ヵ月しか合間がありませんでした。コロナ禍で途切れた部分はありますが、前作からつながっている感覚があり、ずっと『朝顔』に関わり続けている感じがします。

マスクやフェイスガードを装着しての芝居も、最初は戸惑いがありました。今は、なんとか慣れてきた感じです。(第1シーズンでは多かった)食事をしながらの芝居も減ってしまいましたが、できる範囲で細心の注意を払いながら食事のシーンもできるようになりました。

「食べること」=「生きること」という原点に戻って、残りの撮影に臨めればと思っています。

──前作で、もっとも好きだったシーン、印象に残っているシーンはどこですか?

家族4人で東北(仙ノ浦)に帰る電車の中で、“しりとり”をするシーンが好きです。台本にはしりとりとは書かれていなかったんですが、現場での監督の要望が「しりとりで平が同じ言葉を2度言って終わる」というものでした。

つぐみ(加藤柚凪)が何を言うかわからないという状況で、桑原真也(風間俊介)→つぐみ→朝顔(上野樹里)→平(時任)という順番で始まったのですが、見事3周で完結。樹里ちゃんの頭の回転の速さは芸術的でした。

──前作と第2シーズンでは、どのようなテーマの違いを感じますか?

あくまでイメージですが、前作は「悲しい過去を背負いつつも、ささやかな幸せを感じて生きていく」ような流れでした。第2シーズンは「ささやかな幸せを感じつつも、いつまでもそれが続くわけではない現実もある」という感じでしょうか。ネタバレしない範囲で言えば(笑)。

──平さんから見た娘の朝顔は、どのように成長していると思いますか?

朝顔が桑原と結婚する時、朝顔が平に「一緒に住みたい」と懇願するシーンがありましたが、第2シーズンでは、朝顔一家と別居しようとしている平を許容する方向で変化しています。また、亡くなった妻を捜し続けることに関しても、朝顔が平のために、自分も何かしたいと意見を伝えるようになっています。それが何なのかは、見てのお楽しみですが(笑)。

──じぃじとして、つぐみちゃんと再会したときはどんなお気持ちでしたか?

素直にうれしかったですね。天真爛漫で無邪気な感じが変わっていなかったのがうれしかったです。「再会」という言葉がそぐわないほど自然で、第1シーズンがまだ続いているかのような感じがしました。

──柚凪ちゃんとは、普段どんなコミュニケーションを取っているのですか?

撮影の合間に作った折り紙を見せてくれたり、けん玉をやって見せてくれたりします。架空の鉄砲の撃ち合いをしたりもします。こっちは撃たれるばっかりですけど(笑)。

──柚凪ちゃんのどんな仕草や行動で成長を感じますか?

つぐみはよく手紙をくれるのですが、全部とってあります。字がだんだんうまくなっていくのが楽しみですね。

──時任さんから見た、上野さんのママっぷり、風間さんのパパっぷりはいかがですか?

樹里ちゃんは料理(シーンで)の手際がよく、つぐみの相手をしながら家事をこなす姿は見事です。風間くんのつぐみに対する“仕切”も天下一品です。本番前に必ずつぐみに「シーンの流れと要点」を分かりやすく説明するのですが、さすが父親経験者という感じです。

──万木家のシーンでエピソードがありましたら教えてください。

いい意味で、つぐみがどういう行動に出るかわからないので、こちらの対応力が試されます。樹里ちゃんと風間くんの対応力は素晴らしく、本番で何が起きても大丈夫という安心感があります。

平のように妻の痕跡を何年間も探し続けることはできないかもしれない

──ドラマ放送中に、東日本大震災発生から10年を迎えます。被災地へボランティアとして行かれた経験のある時任さんにとって、どんな心境ですか? 

あっという間の10年ですね。自分の年齢で言えば53~63歳。ボランティアに行ったといっても、ほんのちょっとお手伝いをしただけで、大したことはやってないんですけど、それでも現地の人と接して、より身近に震災のことを感じることができました。「万木平」という人物を演じる上でも貴重な体験だったと思います。

──撮影で被災地に入ったかと思います。町や人の変化をどうお感じになりましたか?

巨大な防潮堤が目を引きました。津波に対する恐怖感がそれほど大きかったんだろうと思います。

──時任さんご自身は、この作品に関わって“命”や“死”に対する考え方に変化はありましたか? 

この作品に関わったから考え方が変わったことは特にありませんが、平のように津波で失った妻の痕跡を何年間も探し続けることは、自分にはできないかもしれません。

そういう状況になってみないと、実際どんな考え方をするようになるのかは分かりませんが、おそらく自分自身が精神的に苦しまないような考え方をするような気がします。でも、平は探し続けることで、心の平安を見い出せているのかもしれません。

来年は“笑顔で過ごすをテーマに

──ドラマ撮影中に年末年始を迎えます。時任さんにとって今年はどんな年でしたか? 来年はどんな年にしたいですか?

今年はコロナ禍もあったので、自分を見つめ直す年になりました。どうやら自分を見つめ直すとマイナス思考になるようです(笑)。来年はいかに笑顔で過ごせるかをテーマにしたいと思います。

──最後に、視聴者へのメッセージをお願いいたします。

主人公の朝顔が、次々と起こる難題に立ち向かっていく姿と、強烈な個性を発揮するレギュラー陣の演技も見どころです。ぜひご覧ください。