2021年の幕開けを飾る、木村拓哉主演のSPドラマ『教場Ⅱ』。1月3日(日)、4日(月)の二夜連続で放送される。
本作は警察学校を舞台に、警察官を目指して入校してきた200期の生徒たちが、“最恐”の教官・風間公親(木村)の下、さまざまな葛藤や、次々と巻き起こる事件を乗り越えて卒業していくまでを描く。
個性豊かな200期の生徒たちの1人、漆原透介(うるしばら・とうすけ)を演じているのが矢本悠馬。漆原は、時間の感覚が人と違っていて、たびたび遅刻してしまう問題児だ。
ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)でのコミカルな演技が印象的な矢本が、本作でどんな“落ちこぼれ”ぶりを見せるのか。
「今までの俳優人生の中で、一番台本に向き合った」という矢本に、役柄へのアプローチの方法、厳しい訓練、木村との共演、自身の成長などを聞いた。
<矢本悠馬インタビュー>
“落ちこぼれ”という個性を魅力的に
──演じる漆原透介は、「時間の感覚が人と違う」という変わった役柄ですが、どういうふうに人物像を作っていったのですか?
台本には細かい説明がなかったので、まず自分で台本を読んだイメージと監督のイメージをすり合わせていかないといけないと思いました。
漆原は、頑張っても遅れてしまい、真面目に全力でやっても周りに追いつけない。ほかの人のセリフからも紐解いていくと、“落ちこぼれ”なのかな、と。それを個性にしようと思い監督に相談したら、承諾してくださったので、そこからスタートしました。
──方向性を決めたことで、演じやすくなりましたか?
たとえば、体が大きい、小さい、性格が明るい、暗いというのは、全部個性だと思うので、漆原が人と違っていても、それがその人の魅力だから、その魅力を作品にうまく落とし込めればいいかなと思いました。
風間教官も、漆原に対しては他の生徒と接し方が異なるんです。ただ、漆原はそこに甘えていて、「自分は人と同じことができないから、それでいいんだ。みんなの足を引っ張っていても仕方がない」というのが問題なんです。そういうセリフなどから漆原のいいところ、悪いところがわかるようになり、それがヒントになって演じやすくなっていきました。
──そういう役柄を演じるのは、面白かったですか?
面白かったですね。漆原は、なんでそこにいるのか、なんでそうなるのかが、台本にはあまり描かれていないんです。ト書きも、「風間の元に来る」とか「走って行く漆原」とか、ザックリしていて(笑)。
“1”のところから、“99”作らなきゃいけないキャラクターでした。ヒントが少なかったので、自分のセリフより他人のセリフからヒントを得たり、自分が出ていないシーンからヒントをもらったりして、周りからこう見えているんだから、こう演じたほうがいいのかなとか、周りの生徒の漆原に対するリアクションから作っていった感じです。
今までの俳優人生の中で、一番台本に向き合ったと思います(笑)。
200期のリーダーに大抜擢。目標は“打倒!198期”
──役作りで苦労する中、本物の警察学校さながらの所作訓練も受けたのですよね?
やりました、地獄の訓練。もう二度とやりたくないと思うほど、人生の中でもかなり大変な時間でした(笑)。肉体もそうですが、精神を鍛える訓練なので、効率が悪くてイライラしていました。期間は、1ヵ月くらいだったと思いますが、キツすぎて記憶がないです(笑)。
──それだけキツい訓練だと、生徒役のキャスト同士の団結力が高まったのではないですか?
団結力は、高まったと思います。全員で目標にしていたのが、(前作の)198期を超えることだったので、誰も弱音を吐かず、リーダーの僕の言うことを正面から受け止めてくれて、一致団結してできました。奇跡的なメンバーだったと思います。最初はみんな漆原のように落ちこぼれでしたから(笑)。
──どういう経緯で、矢本さんがリーダーに?
198期のグループLINEで、「今回は、矢本悠馬が『教場Ⅱ』をまとめるでしょ」みたいになっていたらしいんですよ。でも、僕はそういう性格ではないので、面倒くさいから嫌だと渋っていたんです。でも、食堂で食事をしているときに木村さんからも言われて、「これはやるしかないな」と(笑)。
──リーダーとして、どんなことをしましたか?
所作訓練は、協調性を求められることが多くて、行進と警備点検など全員の息を合わせないといけないんです。30人みんな個性豊かなので、できるヤツもいれば、できないヤツもいるし、29人揃っても1人だけ揃っていなかったら意味がないんです。
それができるように指導していったり、現場で気を抜いていたら怒ったり、そういうことをする役割でした。おかげで白髪が増えました(笑)。
──「打倒!198期」は叶いましたか?
圧倒していると思います(笑)。前作より、行動するスピードも速かったし、警察学校の本物に近い所作でやったりするところでも結果が出せていて、いい作品ができたと思います。
──木村さんとの初共演はいかがでしたか?
所作訓練の段階から、木村さんが風間教官としていらしてくださったので、現場の雰囲気とか風間教官の雰囲気は、そこでつかめました。撮影に入る前に、『教場』とはこういう作品でこういう空気感だぞというのを態度で示してくださったので、作品に入りやすかったですね。それが、木村さんの優しさだったのだと思います。
──『教場Ⅱ』に参加して、ご自身に変化はありましたか?
これまで自分がリーダーシップを取ることもなかったですし、意外にも根性があることがわかったりして、この作品に参加できたことは自分にとって大きかったです。自分と向き合う時間が多かったので、以前よりも自分のことがわかった気がしますし、木村さんとご一緒できたことでメンタルも成長させられたと思います。
また、作品への向き合い方も変わりました。これまで、いい芝居だけをしていればいいと思っていましたが、現場でのプライベートな振る舞いも含め、俳優として視野が広くなった気がするので、これからは、仕事の仕方も楽しみ方も、現場での振る舞いも、芝居以外での楽しみができて、俳優として自分がもっと大きくなれたらいいなと思います。
それくらい僕自身を成長させてくれた作品です。みなさんにも、ぜひ楽しんでいただけるとうれしいです。