2019年に初めて舞台化された「紅葉鬼」。原作コミックスは累計発行部数350万部を突破、2018年にはテレビアニメ『抱かれたい男1位に脅されています。』の劇中劇として描かれ大きな話題となっていた。そして、2021年新春――その続編となる「舞台『紅葉鬼』~童子奇譚~」の上演が決定。前作から引き続き、主人公の西條高人/経若を演じる陳内将と、前作が初演出作品ながら好評価を獲得した、俳優の町田慎吾がフジテレビュー‼に初登場。初演の思い出と、新作への意気込みを語ってくれた。

<主演・陳内将×演出・町田慎吾 クロストーク>

――続編の上演決定おめでとうございます。まずは初演の思い出から聞かせてください。

陳内:会場は品川プリンスホテルのクラブeXという円形劇場で、270度の客席を配置していたので、通常の作品のように正面だけではなく、すべての角度のお客様に楽しんでいただけるように、ということをまず考えましたね。

町田:原作における「紅葉鬼」は短い劇中劇で、初演はほぼオリジナルのストーリーだったので、皆で話し合いを重ねながら作品を構築していきました。

物語…時は平安――人間と鬼の停戦条約の中で、朝廷から人質として差し出された帝の息子・経若(陳内将)は成長した後、鬼の頭目に。自身を鬼だと信じて疑わなかったが、都を守護する兵士・繁貞と出会い、実は人間であったことを知る。血の宿命に翻弄された経若は、自らの運命を切り拓くべく、戦いに身を投じていく。

――町田さんにとっては初めての演出でしたが、いかがでしたか?

町田:僕が以前、所属していた事務所で演者として経験したド派手なエンターテインメントを表現してほしいというオファーをいただいたんですけど、話し合っていくうちに作品の世界観を大事にしたいという流れになったんです。例えば音楽も「この音を削ってください」と派手さを削ぎ落したり、雨の音などの環境音を多くしたり。

演出としては、観る側が舞台上の役柄にきちんと感情移入できるようなものを、ということを一番に心がけました。キャストも、作品の中の人物として板の上に立ってくれたから素敵なものとなって、そこをお客様も喜んでくださったのかなと感じました。

まっちーさんは役者の気持ちに寄り添ってくださる演出家さんです(陳内)

――そんな演出を陳内さんは間近で体験して、どんなことを感じましたか?

陳内:まっちーさんって、とてもやさしいんですよ。今回も稽古がスタートするまで眠れない日々が続いたと思うので、体調が不安になりましたけど。

町田:陳内くんが「まっちーさん、体調は大丈夫ですか?お体、気を付けてくださいね」っていうLINEをくれたんです。どうもありがとね。もう毎日「おはよう」と「おやすみ」の連絡をしようかなって思った(笑)。

主演が陳内くんだから、この作品の世界観の軸ができていると思うんです。初演も時間のない中での稽古、上演となりましたが、陳内くんは舞台上に立った時に背負うべきものをしっかりと背負う人という覚悟を感じたので、これは大丈夫だと確信しました。

――陳内さんは、町田さんの演出を受けながら「プレイヤーならでは」と感じるところはありましたか?

陳内:初演の稽古序盤で、スケジュールの都合で来られなかったキャストがいたのですが、まっちーさんと演出補佐の小寺(利光)さんが代役で入った時にそれを感じましたね。

町田:やってた?あまり記憶がない(笑)。

陳内:演出家ってどうしても厳しいイメージがあって、十数年前はもちろん、今だとパワハラと受け取られてしまいそうなハードな指導を役者なら一度は受けていると思うんですけど、まっちーさんにはそういう要素がまったくないんです。

役者が伸び伸びとできる環境づくりをしてくださるし、役者が脚本に対して抱いた意見や疑問を、まっちーさんが咀嚼してプロデューサーや脚本家さんへ伝えてくださる。役者の気持ちにすごく寄り添ってくれる方という印象です。

――稽古場で声を荒げるなど、激を飛ばすことは?

町田:まったくないですね。でも、責任感がないとか、お客様はお金を払って観に来てくださるという根本的なことを理解していない人にはしっかり言います。叱られたことで、役者が委縮しちゃったらその子の良さを消してしまう。つまらないじゃないですか。だったら、それが間違った方向でも稽古でおもいっきりやってもらいたい。そんなことを思っています。

僕自身もずっと人前に立つ仕事をしているので、役者が悩んでいる、じゃあ、どうやったらこの人はもっと演じやすく、伸び伸びと生きられるんだろうということをわかってあげられるのが自分の強みだと考えています。

陳内くんは稽古場での居方や振る舞いなど、すべてが信頼できる人(町田)

――町田さんから見た、俳優・陳内将さんの魅力はどんな部分だと思いますか?

町田:この作品において、経若は所作の美しさが最も重要だと考えていたんですけど、そこは初演の稽古初日から「あ、この人は大丈夫だ」って納得させられるものがありましたね。

僕は自分が客として作品を観る際、感情が揺れているからこの人物はこのセリフを吐いているというものを目の当たりにした時に「この役者、素敵だな」と感じるんですけど、陳内くんはそれをしっかりと体現してくれる。座組のトップとして、稽古場での居方や振る舞いなどすべてが信頼できるんです。

――では、陳内さんから見た演出家・町田慎吾さんの魅力は?

陳内:人間の柔らかさはもちろん、演出として音楽のとり入れ方において才能が富んでいらっしゃる方だと感じていて、前作のオープニングの音楽を初めて聴いた時に、すごくテンションが上がったことを覚えています。

まだ曲が完成していないタイミングでも、「えーっと、ここで経若が出てきて、ワン、ツー、スリー、フォーで〇〇が出てきて…」とカウントをとりながら説明してくださるんですけど、多分、まっちーさんの頭の中では音楽のイメージができているんですよね。「ここで盛り上がってドーンで終わるから」みたいな(笑)。

町田:誰もわかってなかったよね、ゴメンね(笑)。「ここで音が入ります。このセリフで音が入ってドーンとなってシャーってなって」と説明したら、みんなポカーンとしてた(笑)。

陳内:でも、いざ音楽が完成して我々の芝居と合わさった時にまっちーさんの言ってたことが、すぐわかったんです。音楽が人を魅了するということを、とても上手に使う演出家さんだなと思いました。

町田:初演の一幕ラストとか結構長いシーンだったんですけど、役者の芝居を見て尺を計って、自分がセリフを言いながら音をつくってもらった。そんなこともできるのが、僕ならではの強みですね。

今回も初演に続いて音楽をTAKAさんに依頼したんですけど、TAKAさん、そして、今作も演出補佐を務めてくれている小寺さんとめぐり合わせてくれたのは10代の頃に出会った森新吾(演出家・振付師。2019年に急逝)で、新吾から「彼らのことをよろしく」と言われていたので、その約束を果たすためにも参加をお願いしました。お二人には、とても助けていただいています。

――最後に作品の見どころを含め、公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

陳内:どうやら、原作の桜日梯子先生が経若を絶望の淵に立たせたいそうで、経若は人間の世界からも鬼の世界からも目を背けてきたけれど、今回、また現実を受け止めざるを得ない運命がのしかかってくることになります。

序盤では何が起きても我関せずという姿勢だった経若が、あの手この手でどん底へと落ちていく様をやさしく見守っていただければ。陳内は必死に経若として生きたいと思います。

町田:今回も前作どおりの美しい世界観のまま、人間関係が複雑に絡んでいき、経若の人生に影響を及ぼします。セットに関しても、これだけは絶対にやりたいというものが一つあってそこに注目していただきたいのと、奏者の方が生の演奏をしてくださるので、視覚的にも聴覚的にも楽しめる作品になると思います。ぜひご期待ください。

舞台「紅葉鬼」~童子奇譚~

2021年1月8日(金)~14日(木)日本青年館ホール

公式サイト 公式Twitter:@kouyouki_b

©DO1 PROJECT/舞台「紅葉鬼」製作委員会

撮影:河井彩美