現在、フジテレビで放送中のドラマ『知ってるワイフ』。大倉忠義が主演、広瀬アリスがヒロインを務め、夫婦関係に悩む主人公が、タイムスリップをきっかけに妻が入れ替わったことで、“本当に大切なことは何なのか”を模索するファンタジーラブストーリーだ。
本作で子どもを持つ主婦役に初挑戦、マイペースな夫・剣崎元春(大倉)にイライラを募らせ、怒鳴り散らす“モンスター妻”・剣崎澪を演じる広瀬アリスにインタビュー。初めての母親役、撮影現場の雰囲気、ドラマへの意気込みなどを聞いた。
<広瀬アリス インタビュー>
――初めての母親役はいかがですか?
これまで、ヤンママとか若くして子どもを産むという役はあったんですけれど、お母さん役は初めてで。今回は、まず「ああ、そういう年齢になったんだな」と思いました。
実際に子役の子たちが泣いてしまって、撮影がストップしてしまうこともありました。そうしたら、まずあやさないといけないですし、コミュニケーションを取らないと、なかなか言うことを聞いてくれないこともあります。
結果的に、子どもたちとコミュニケーションを取ることで自然と会話ができて、そういうところを本番で使っていただいているので、すごく大事だなと思いましたし、私はその場だけあやせばよかったんですけど…これが毎日続くとなると、家事もありますし、お母さんって本当にすごいなと思いました。
あとは、自転車で、前と後ろに子どもを乗せて走るのが、とても怖かったです(笑)。
――澪は、夫から“モンスター妻”と呼ばれますが、怖い奥さんを演じる上で、意識したことは?
1話の台本を読んだ時に、自分が思っていた以上に壮絶といいますか、夫婦仲がリアルに描かれていて。「ここは、思いっきりお芝居したいな」と思ったんです。
もちろん韓国の原作ドラマも拝見して。結構、奇声に近いというか(笑)、そういう印象があったので、それに近づけたいなと。
しゃべるペース、トーンを考えて、段取り、テスト、本番を通じて合わせていったという感じではあるんですけど、インパクトを残したかったので、思いっきり怒鳴らせていただきました(笑)。
物を投げる時も、どちらかというと、大倉さんをめがけて投げていました(笑)。
――大倉さんはどんな反応でしたか?
「当てる?」って言われました(笑)。
――澪と普段の自分と比べるといかがですか?
私は、あんまり怒らないです。疲れちゃうので(笑)。
――元春はタイムスリップした先で、沙也佳(瀧本美織)と結婚するわけですが、そこについては?
いや、「さすがにそれはダメだ」と思いました(笑)。
――澪と元春の関係性については、どんなふうに思いますか?
客観的に見て、もっと言葉にすればいいのに、と思いました。何でもそうですけど、きちんと言葉にして伝えなければわからないですし、「察して」とか、それはちょっと違うかな。
「ありがとう」も「ごめんね」も「こうしてほしい」とかも、全部言葉にしないと伝わらないですし、それは夫婦仲というより、人間関係すべてに通じるものではないかと、このドラマの撮影を通して感じました。
――ところで、第1話の澪を見たら、世の男性は結婚したくなくなるのでは?
いや、あれが世の女性の声です!世の女性を代表しての言動だと思っています(笑)。
――元春と仲が良かったころのシーンもありますが、そのあたりの演じ分けは?
今回、結婚前の建石澪と、結婚後の剣崎澪を演じた時に、一人の人間をずっと演じているという感覚があまりなかったんです。学生、銀行員、お母さん…と、いろんな役を演じているような感じだったので。
もちろん見た目も全部違ってきます。衣装やメークが変われば、気分も変わったりしますので、そこで切り替えていました。
――今回、初共演となる大倉さんとお芝居をしてみての印象は?
スケジュールがハードだったので、「一緒にがんばろう」という感じで、毎日撮影はしていたんですけど、どこかフワフワした方だなと(笑)。
すごくしゃべったかといったら、そんなことはないんですけど。ケンカするシーンも多かったので、お芝居をしていく中で会話をしていくといいますか。ほどよい距離感で、できたのかなと感じています。とても心地よかったですね。
大倉さんといえば、普段、元春さんは前髪を上げていますが、物語の後半で、ちょっと乱れるシーンが出てくるんです。そこでの大倉さんの色気はすごいですよ(笑)。夜で、いい感じにライティングがされていて、シルエットもカッコいい。たぶん、あのシーンで大倉さんのファンの方は何百人か失神するのではないでしょうか(笑)。楽しみにしていただきたいです!
歌って踊る大倉さんとはまた違った、母性本能をくすぐる笑顔も随所に登場すると思います。
――現場の空き時間には、どんなことをして過ごされていましたか?
私は、ゲームです(笑)。大倉さんもゲームをやっていたので、ずっとゲームでしたね。あとは、音楽を聴いたり。今回の現場は、みんなマイペースだったので空き時間は、個々で自分の時間を楽しむという感じでした。
――現場で印象的だったことは?
スケジュールがハードで怒濤の毎日でした。あとは、撮影初日が自粛明けすぐだったので、お芝居の勘が戻らなくて、必死だったかもしれないです。
ここ数年、いろんな作品を続けてやらせていただいて、そういう時は結構、セリフがすんなり入ってくるんですけど、やはり、2ヵ月台本を読まない期間があると、普段の会話のセリフですら入ってこなくて。しかも、ブランクがあることで、お芝居することをちょっと恥ずかしいと思ってしまう自分がいました。特に初日はそんな感じで、苦労しました。
――本作に出演したことで、ご自身の結婚への考えは変わりましたか?
結婚は、まだいいかなと思いました(笑)。「ちょっと大変かなぁ」って。私自身は、もうちょっと一人の時間を楽しみたいと思っています。
子どもがいてワチャワチャしているのは楽しいだろうと思いましたし、キッチンの前に子どもたちのちっちゃいコップやお皿、キャラクターものが置いてあると、それもかわいいなと。
ただ、シンプルに、今ではないなと(笑)。今、自分が結婚することは想像できないです。
――このドラマでは、澪、元春、それぞれの言い分が描かれます。元春のセリフや行動で、広瀬さん“地雷”になるものはありますか?
人の話を聞かない。私はそれが、すべてにおいて一番イヤかもしれないです(笑)。
私、そもそも相手に「誠実」「自立」を求めるタイプで、逆にそれがあればいいかなと思っているんです。あとは、一緒にいて会話がなくてもイヤじゃない、大丈夫な人がいいです。
――広瀬さんだったら、話を聞かない相手にどう対応しますか?
嫌みのように、ずっと大きい声で、気づくまで言い続けると思います(笑)。自分の家族にもそうすることがあります。
私は、バン!と感情を爆発させるのではなく、ジリジリと追い詰めていくタイプなので(笑)、突発的にはあまり怒らないです。
――その方が怖いかもしれないですね。
確かに私を敵に回したら、ちょっとやっかいかもしれないですね(笑)。
――広瀬さんから見て、元春はどんな男性ですか?
元春さんは、高校生時代も、タイムスリップして独身になっても、ずっと同じ。もちろん本人の記憶が一緒というのもあるんですけど。女性から見たら、少し子どもっぽいというか、視野が狭いところがあるのかな。
でも、どこか憎めなくて、放っておけない存在なんですよね。だから、母性本能をくすぐられるというか。
――それは、大倉さんが演じているからということもありますか?
それは、すごくあると思います。大倉さんが元春のままというわけではないんですけれど、大倉さんにも、どこか放っておけない雰囲気がありますよね。フワフワしていて「なんだこの人は(笑)?」って思うんですけど、かわいらしいです。
――広瀬さんが、タイムスリップするとしたら、いつに戻りたいですか?
もう一度、学生時代に戻りたいです。学生生活をしっかり過ごしたい。中学3年生の時には、上京する機会が多くて、卒業式の前日まで東京にいたので。もっと学生生活を楽しむことができていたら、今がまた違ったのかなと思うことがあります。
――どんなことをやってみたいですか?
帰り道に、いろいろ買って食べたりとか(笑)。普通のことがなかなかできなくて、そんな機会もなかったなって。
私、卒業アルバムに全然載っていないんです。ある日、久しぶりに学校に行って、体育館で体育の授業を受けていたら、カメラマンさんがやってきて。しかも私、その日体操着を忘れて、全然違う人の名字が書いてある体操着を借りていたのに、そこを撮ってもらったので、超恥ずかしくて(笑)。それが、中学生の思い出なんです。
――回想シーンでは、高校生時代も出てきますね。
さすがに、制服はもう恥ずかしいです。なんだかんだで、お芝居で毎年着ているんですけど。でも、年々恥ずかしさが増しています(笑)。
――それでは最後に、このドラマの見どころ、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
第1話を見た時に「結構、リアルかもしれない」と思ったんです。女性が旦那さん、彼氏、お友達に抱く気持ちが生々しく描かれていて、私はそこが好きです。
今作は、ファンタジーラブストーリーですけれども、“言葉にしないと伝わらない”ということを描いていたり、実は、この人にはこういうことがあり、あの人にはああいうことがあって…と、いろんな人を掘りさげていくので、夫婦以外でも、人間関係をもう一度、改めて考えさせられるような作品になっていると思います。
そして、なぜかわからないですけど「元春がんばれ!」と応援したくなるお話。ぜひ、存分に大倉さんを楽しんでいただきたい、そんなドラマです(笑)。
撮影:河井彩美