視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。

1月19日(火)放送回では、「田舎で暮らすSP」と題し、「おさだ農園」3代目・長田きみえに密着。 

静岡県、伊豆半島の東部に位置する伊東市赤沢で70年続くおさだ農園。3ヘクタールの広い農地で、15種類以上の柑橘類を中心に栽培し、ほとんど農薬を使わずに育った作物のファンは、全国各地に広がる。

大学進学のため一度は上京したものの、6年前にUターンし、自然と向き合う中で人生観が変わったという彼女。太陽と海に囲まれた土地で幸せのみかんを作り続ける長田きみえのセブンルールとは。

ルール①:仕事中は足袋を履く

朝8時、長田きみえの農家としての1日が始まる。みかんの収穫が最盛期を迎えた10月下旬、手塩にかけて育ててきたみかんを、手際よく収穫していく。後ろ側がオレンジになっているものを選んで採っているという。

この日収穫していたのは、甘みと酸味のバランスが程よく、奥深い味わいが特徴の「早生(わせ)みかん」。

両親と3人でこの農園を管理する彼女が、収穫の際に心がけているのが、ヘタのギリギリのところで摘み取るということ。残った枝部分が長いと実に刺さってしまい、その傷から傷みはじめ、さらに他のみかんにも傷みが移るのだという。 

みかんを入れる袋は、1回の収穫で14キロほどの重さに。すべてを摘み取ると、次に向かったのは、2月に収穫するオレンジの木。日光が当たるよう、枝の剪定(せんてい)に取り掛かる。 

自然の中での作業が多い農業で、木を軽やかに登る彼女の足元に、ルールがある。それは、仕事中は足袋を履くこと。ランニングシューズのように走ることもでき、木も登れて軽い、そんな足袋が欠かせないのだという。

家族経営のおさだ農園では、1人でも怪我をすると回らなくなってしまう。安全の意識は、足元から。

ルール②:会員の好みは手書きで管理する

収穫を終えるとすぐ、出荷の準備へ。母・瑞栄(みつえ)さんと協力しながら、傷や傷みがないか、全方向から確認し、選別していく。 

おさだ農園では、30年前から年間会員制を導入しており、通販は行わず、年会費を支払う会員に年10回、季節の作物や加工物が届く仕組みになっている。現在、会員は200名。口コミでファンが広がった。 

前日に会員から「ちょっとオムツかぶれになっちゃったからよもぎオイルが欲しい」という電話を受けたと、みかんを詰めた段ボールに、よもぎオイルとびわの葉っぱを同梱。申し込みハガキに好きなものが書かれていれば、それを多めに入れるなど、採算を度外視した行動は、「喜んでいただけるのが一番」という思いから。

200名の会員それぞれの好みは、すべて手書きの表で管理している。「パソコンで管理すると、いちいち開いて直して、データが消えちゃってとかあるので。全部手書きだと、すぐにパッて開いて直して、足すことも出来るし。まだ便利だなと思っています」と話す彼女は、作物を通しての交流を、何よりも大切にしている。

ハガキには、好みに沿った要望だけでなく、ちょっとした言葉が添えられていることも。「孫たちに安全で美味しい果物を食べてもらえること、バーバの喜びです。娘宅への配達をお願いします」というメッセージを読み上げ、「こういうの読むと、すごくうれしいですね」と微笑んだ。

時代の変化の中で、インターネット通販を考えたこともあったという。しかし、心の通ったやりとりを大切にしたいと、このスタイルを変えない。

ルール③:夕食時は翌日の打ち合わせをする

祖父の代から続く農園で、4人きょうだいの末っ子として生まれた彼女。「兄の後ろにくっついて、みんなで毎日探検に行く、そういう幼少期でした」と振り返る。

東京農業大学でバイオセラピーを学び、卒業後は、かねてから関心のあった保育士として2年間勤務。子どもたちと過ごす日々は楽しかったが、彼女のなかで、ある思いが芽生えていったという。 

「私は、子どもたちに何ができるかなって考えたときに、食べ物も作れないし住むところを作ることもできないし。実家が幸いにも農業をしていて、もうちょっと自分に知恵を付けたいなって思って」と、Uターンを考え始めた。しかし同時に押し寄せてきたのは、“継ぐ”ということへのプレッシャーや不安。 

そして6年前、悩みながらも実家へ戻った彼女。そのことを両親は何よりも喜んだ。 

「この場所が残ってくれるのはうれしいけど、無理して残さなくてもなっていうのもちょっとあるんだけど。でもその価値に気が付く人が出てくれば、何とかなるだろうなって。何が良いって、やっぱり家の中が明るくて楽しくなるのが一番」と、父・直己さんは話す。

家族だんらんのひととき、話す内容は決まって、翌日の打ち合わせ。「家族経営というのもあって、みんなが集まった時にいろんなことを確認しながら。今どうなってるとか、次どんな感じかっていうのを、みんなで把握しながらできるほうが良いなって思って」という。 

農家としては、まだまだ駆け出しの彼女の考え方に、両親も学ぶことがあるという。「『きれいだよ今日の空』と教えてくれたり。いろんな花とか、目の前にあるものを気づかせてくれるっていうのが、すごく感謝しています」と、母・瑞栄さん。

一度は離れ、戻って来たからこそ、気づけた大自然の尊さがある。

ルール④:休日はブルーハーツを聴く

週に1日は休みをとることにしている彼女。農園内にあるロッジが、彼女の生活空間だ。「部屋だと大体、音楽聴いたり本読んだりとかしていますね」と、彼女が流したのは、THE BLUE HEARTS。ボーカルの甲本ヒロトを、一番に尊敬しているという。

「弱い自分もさらけ出してしまうっていう、潔さのカッコよさにはやっぱり憧れますね。『ガンジーが素晴らしい』っていうのと同じくらいの、『甲本ヒロトは素晴らしい』っていうそういう尊敬の意味で」と語る彼女。

「甲本ヒロトさんに恥じない生き方をしたいです」と決意を新たにした。 

ルール⑤:豊作のときは物々交換

ある日、愛車にみかんを積んで、彼女が向かったのは、友人の店。昔から、多く採れた時は、収穫物を友人知人と交換することもあるという。 

「『おかげさま』とか『お互いさま』で。物々交換だと、どんな人がどんな思いで作っているのかっていうのを、お互いわかってできるので。みんなで楽しもうっていう気持ちをお互いに持てる関係っていうのが、田舎の習慣」と、うれしそうに話す。

この日彼女は、お裾分けの代わりに、大好物の豆乳坦々麺をご馳走になった。 

ルール⑥:みかんの皮は捨てない

どんな時も、必ずみかんを持ち歩く彼女。食べたあとのみかんの皮は、いつも定位置で干している。それを火種にするほか、粉々にして毛虫が出やすい木の近くに撒いておくと、毛虫が減るのだとか。

そんな彼女が今ハマっているのが、よもぎ蒸しの中に、みかんの皮を混ぜること。香りが良くなり、リラックスできるという。 

ルール⑦:自然から学ぶ

とある休日、長田の発案で、会員向けの芋掘りイベントが開催された。「コロナ疲れしてる方たちに、楽しんでいただけたら」という思いが発端となった。実際に体験した会員も「最高ですね、これ以上のものはないと思います」と笑顔を見せた。

6年前に都会からUターンした長田。再びの田舎暮らしで見えてきたものがあるという。

「人間頑張らなきゃいけないとか、頑張っている人が偉いとか、スゴいことしてる人が偉いみたいになりがちだけど、実をつけてない枝でも役割があるし、そういうのを教わると、どんな人でも生きてる価値があるじゃないけど。そういう壮大なことを教えられて、感動の日々ですね。本当に」と話す。

自然から多くのことを学び、培われた想いは、彼女が育てる作物に込められている。 

「まず、自分が人生楽しんでいないといいものは提供できないと思っているので。うちの柑橘やびわのことを『元気玉』と呼んでいて。誰かの幸せとか喜びに繋がったら良いなと思ってます」。

人生を楽しむ彼女が育てた「元気玉」が、今日も誰かを笑顔にしている。 

※記事内、敬称略。

<『セブンルール』はカンテレドーガで見逃し配信中(無料)>

次回、1月26日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、引き続き「田舎で暮らすSP」。都会を離れ、岡山県にある住民30人ほどの限界集落に移住したあんこ職人・竹内由里子に密着。

「誰とどんな生活をするかのほうが大事」と語る彼女が移住を決めた理由とは。そして、田舎暮らしを楽しみながら、たった1人で極上のあんこを作り続ける彼女の7つのルールとは。