現在、フジテレビ系で放送中のオトナの土ドラ『その女、ジルバ』。池脇千鶴演じる主人公・笛吹新(うすい・あらた)が、“40歳未満お断り”という超熟女バー「OLD JACK&ROSE」の“新米ホステス”になったことをきっかけに、人生が輝き始める様を描く。

そのドラマで、新が働く物流倉庫のチームリーダーの浜田スミレを演じるのが江口のりこだ。ぶっきらぼうで愛想がなく、本社からの出向組である新に壁を作っていたスミレだが、次第に生き生きとしていく新に興味を持ち、やがて「OLD JACK&ROSE」に足繁く通うようになる。すると、スミレにも変化が訪れ…。

超熟女バーには、ママ役の草笛光子をはじめ、ホステス役の中田喜子、久本雅美、草村礼子、マスター役の品川徹など、豪華ベテラン勢がズラリ。「そういう先輩方をそばで見られるのは、この作品に参加した特権」だという江口に、役柄へのアプローチ、作品の魅力、仕事に対するスタンスなどを聞いた。

<江口のりこインタビュー>

本人はいたってまじめ。だからこそ滑稽に見える!?

──浜田スミレを、どういう女性としてとらえていますか?

原作では、あまりスミレの人物像は描かれていないのですが、脚本では結構細かく描かれています。人に壁を作っているスミレは、自分とそんなに遠くない感じがしていました。でも、演じていくうちに、だんだんと自分とは違うキャラクターだという思いが出てきました。

スミレには、結構柔軟さがあって、積極的に人付き合いをしたり、行動したりする力もあります。取っつきにくそうで、実は人の懐に入っていくのがうまい。私は、どこか疑り深くて頑固なところがあるので(笑)、そこがスミレと違うかもしれませんね。

──スミレは、ぶっきらぼうですが、そこがコミカルでおもしろく見えます。演じる上で意識していることはありますか?

私も台本を読んで、そこがおもしろいと思いました。本人はいたってまじめなんだけど、だからこそ滑稽に見えるという。でも、まじめにやらないと、そういうふうには見えないので、いたってまじめに演じています(笑)。

一方で、お店に通うようになると、衣装もメークも変わっていきます。外見が変わると、気分もグッと変わるので、どんどん心が開いていくんです。しかも、現実ではありえないスピードで変わっていくので、「急やなぁ」と思いながらも、演じていて楽しいです。

それを頭で考えなくてもスッといけたのは、池脇千鶴さんや、新の同僚・村木みか役の真飛聖さんが作り出してくれる空気感のおかげだと思います。

楽しく生きたほうがいいし、笑っているほうが楽しい

──スミレは、お客様として通うようになりますが、超熟女バーの雰囲気はいかがですか?

めっちゃ楽しいです。先輩方がいらっしゃるという日は、特に楽しみです。みなさん、めっちゃ明るいし、マイナスのことも笑いに代えてしまうので、すごいなと思います。

それに、みなさんキレイでチャーミング。ずっと仕事を続けている方は、エネルギーがあってかっこいいし、憧れます。楽しく生きた方が絶対いいし、笑っている方が楽しいなと思いますね。そういう先輩方をそばで見られるのは、この作品に参加した特権です。

──コロナ禍で大変な状況にあって、こういうドラマを見ると前向きになれます。

私自身は自分のことに必死で、「明日のセリフなんやったっけ?」とか、「こんな状況だけど撮影を続けて大丈夫なのかな」とか、「現場が止まらなければいいな」とか、そんなことばかり考えています。

今は、仕事ができなくて大変な状況の方がたくさんいる中で、私たちは仕事を続けていてもいいのかと思いますけど、やれるんだったらやりたいし、やった方がいいし、見ていただいて楽しいと言ってくださったら、それはすごくうれしいので、とにかくやれるかぎり続けたいと思っています。

──そんな中で、何本も現場を抱えていらっしゃいますが、切り替えはどうされているのですか?

とりあえず現場に行けば、その場の雰囲気があるし、監督もスタッフさんもいるので、衣装を着てその場に立てば混乱することはないですね。自分1人でやるわけではないので、セリフだけちゃんと覚えて、現場にさえちゃんと行けば、なんとかなるだろうと思っています。

何でもやってみると楽しかったりするし、楽しいことがちょっとでもあれば、それでよかったやん、と思うようにしています。

空き時間に銭湯へ・・・自分時間の作り方

──ご自身の時間はなさそうですね。

だから、現場にいる時間を自分の時間にしようとしています。ちょっとでも時間が空いたら銭湯に行くとか。長いこと浸かってますよ。全部の時間を自分の時間にしようと思っています。それじゃないと、やっていけないです(笑)。

──いろいろな役を演じていますが、今後、演じてみたい役柄はありますか?

子供の頃から憧れている、オーケストラとか吹奏楽団の役をやりたいです。小学2年生の時に、学校の行事で聴きに行ったオーケストラが本当にかっこよくて感動して、それ以来、大好きなんです。だから、楽器がやりたいですね。練習させてくれるじゃないですか。運動とかスポーツとか体を動かすのは絶対に嫌ですけど、楽器とか料理とか、いつもと違うことを練習できる役をやりたいです。

この前、富山のイカの塩辛工場で働く人という役だったんです。セリフは「気をつけてね」くらいしかなくて、一日中イカをさばくという、それだけだったんですけど、めっちゃ楽しかったんですよ。いつもと違うことをするって、本当に楽しいなって。気分は、富山にパートをしに行った感じでした(笑)。

でも、言っているだけで、自分ではやらないんですよ。だから、仕事でやらせてもらえるとありがたいんですよね。

──逆に苦手なキャラクターは?

ものすごく明るくて、ハッピーで、女の子らしい…そういう役は無理ですね。自分の中の要素にないし、そういうふうなことをしてこなかったので。まあ、来ないでしょうけどね(笑)。

──『その女、ジルバ』は、“女は40歳から”というドラマです。最後に、視聴者へメッセージをお願いします。

私も40歳ですからね(笑)。この前、草笛さんが、「40歳は、私の半分にもならないのよ」っておっしゃっていて、“40歳なんてまだまだ”という言葉に納得しました。 年齢に捕らわれる気持ちは、わからなくはないんですけれども、先輩方を見ていると、そんな思いでいるのは時間を損している気がするし、自分の気持ち次第で年齢関係なく輝けると思いました。ステキな人は、いくつになってもステキですから。ぜひ最後までお楽しみください。