ミュージカル「GHOST」が、3月5日(金)より東京・日比谷シアタークリエで上演される。その製作会見が2月9日(火)に都内で開催され、浦井健治、咲妃みゆ、桜井玲香、水田航生、森公美子が登壇した。
1990年に公開された大ヒット映画「ゴースト/ニューヨークの幻」のミュージカル版となる本作。2018年の日本初演でも、浦井が主人公・サムを演じた。
物語は、暴漢に襲われる主人公・サムと、その恋人・モリーを中心に展開される。ヒロイン・モリー役には、前回からの続投となる咲妃と、今回が初参加となる桜井がWキャストで抜擢された。水田はサムの同僚・カールを、森は霊媒師のオダ・メイを演じる。
コロナ禍での稽古について、桜井は「ソーシャルディスタンスをしっかりとっている分、皆さんとのコミュニケーションをとるのが今までよりずっと難しくなってしまった気がします」と、やや表情を曇らせつつ、「心の距離が近ければ近いほど、お芝居は詰まっていく気がしているので。距離は遠いながらも、心を通わせられるように、どうするか日々考えています」と、前向きに語った。
森は「稽古の途中に休憩はあるけど、みんなで食事を取れないんです。『黙々と、話をせず、なるべく1人で食べる』というルールがあって。みんなが稽古している間に私は食事をしているんですが、その回数が増えていて、もうヤバい!そこ(食事)も自粛しなきゃいけないんです、衣装のことを考えると…」と冗談めかして笑いを誘った。
さらに浦井は「演出のダレン・ヤップが、オーストラリアからリモートで指導してくれています。そして演出家の席には振付の桜木涼介と彼の助手がいて、それぞれが通常の何十倍もの仕事をこなしていて。みんなで一丸となっている感じがします」と、逆境に立ち向かうカンパニーであることをアピール。
続く咲妃も「毎日のようにダレンさん、ジェームズさん(装置・衣裳担当のジェームズ・ブラウン)がリモートでお稽古場の様子を覗いてくださっていて、心の距離はすごく近く感じますし、すぐそばで見守ってくれている安心感があります」と笑顔を見せた。
サムを演じる浦井と、モリーを演じる咲妃、桜井へ、それぞれから受けている刺激はあるかという質問が投げられた場面では、第三者である森が「私が気になっているのは、2人の濃厚なキスシーンはどう処理するのかということです」と茶々を入れ、「最後も“ビッチョビチョ”のキスしているんですよ」と冷やかし、浦井から「言い方!」とたしなめられる一幕も。
改めて、浦井は「2人のモリーが、いい意味で違うカラーを出しながら、どちらも作品を盛り立ててくれて。優しさや包容力のある、“芯の強い女性”というのを表現してくれている。それを見て男たち、サムとカールも『負けていられない』と、いい三角関係ができていると思います」と語った。
それを受け、桜井は「本当はモリーの方が主導するべきなのは、頭ではわかっているんですが、やっぱりちょっと浦井さんに頼ってしまう部分が多くて。私が前に出わすれたときも、さりげなく示してくれたり」と恐縮。
咲妃は「初演のときは、宝塚歌劇団卒業後の第1作目ということもあり、いっぱいいっぱいで。たくさん助けていただきながら乗り越えられました」と振り返り、「今回は作品のカラーも体に浸透している分、浦井さんともより深く、お芝居のことを話せる時間が増えたと思いますし、“あうんの呼吸”というか、考えていることが手にとるようにわかるようになったので、より一層、お芝居させていただくのが楽しいです」と話した。
すると浦井は「僕は楽しくなりすぎて、昨日、ダレンから『オダ・メイとのシーン、楽しくなりすぎているよ』とダメ出しを受けました」と明かして笑いを誘った。
それぞれのお気に入りシーンを聞かれると、水田は「昨日、一幕を通して見させていただいて。オダ・メイのシーンがやっぱり大好きで、曲もかっこいいし、モリクミさんが出てくるだけでワクワクするっていう(笑)。モリクミさんが踊るというのも、今回の見どころの一つではないかなと思います」と語った。
そして森は「映画でもおなじみの、サムとモリーがろくろを回すシーン」を挙げ、「ちゃんとろくろを回して、ちゃんと作るんです。そのあとモリーが、泥がついた手を振るんですけど、床に泥が飛んで滑るので、そこに気をつけながら階段の昇り降りをしています」と明かした。
ろくろについての話題に移ると、今回が初挑戦の桜井は「この間、初めて陶芸の練習をさせていただいたんですけど、本当に難しくて惨敗したんです!」と苦笑い。「果たしてあれを本番中、時間内にできるんだろうかという不安を残したまま、練習を終えました」と話した。
一方で経験者の咲妃は「やっぱりとても印象的なシーンですし、モリーとしてもサムとの大切な時間を思うシーンなので、陶芸にあまりにも没頭しすぎないようにお芝居をしつつ…」とコメント。
続けて「公演ごとに全然違う形が生まれるというのは、面白い経験でした。そのときの感情次第で形が変わるんですよね」と笑顔で語ると、桜井へ「だから玲香も楽しみにね。どんどん楽しくなると思います」とエールを送った。
コロナ禍での上演について、森は「今はブロードウェイもウエストエンドもクローズした状態。そんな中、誰かのために、何かのために、エンターテインメントの火を消してはいけないという思いで上演に至りました。皆さんは命がけで来てくださるわけですから、私たちも誠心誠意芝居をして、何か、心のちょっとした潤いを与えたいと思っています」とコメント。
続けて「今回、公演中に(東日本大震災の起こった)3月11日を迎えますが、今ここで上演されている『Endless SHOCK』も、10年前の公演当時、電力節約のために中止になりました。稽古中だった『レ・ミゼラブル』も、やるべきかという議論になりながらも、『私たちは演劇で誰かを救えるのではないか』ということで開催を決行しました」と、当時を回顧すると、「コロナ禍でも、演劇の火は消さないように」と、その思いを新たにした。
水田も同じく、10年前の東日本大震災に触れ、「僕も、3.11の時に感じたのは、『エンターテインメントは心を豊かにすることができる職業だ』ということです。そこに誇りを持ってここまで10年間やってきました。ここ最近、大変なことに直面して、またその思いを再確認しています。そういう職業につけていることに感謝をしつつ、一つ一つ準備をして、舞台上で発揮したいと思っています」と、真剣な眼差しで語った。