内閣府は、毎年9月1日を「防災の日」、その日を含む1週間を「防災週間」としており、訓練や勉強会などを通して防災意識を高める活動を行うことを推奨しています。
横浜市の小・中学校、約500校を代表する安全教育推進校である横浜市立常盤台小学校で行われた“教員を対象とした防災訓練”を取材すると、学校現場で行う訓練をはじめとした防災活動は「大切な人の命を守る」ための第一歩となることが分かりました。
横浜市で実施された“教員対象”の「防災訓練」
2024年8月28日、横浜市の小・中学校、約500校を代表する安全教育推進校である横浜市立常盤台小学校で、教員を対象とした防災訓練が行われました。
監修を行ったのは、防災について研究をしている慶應義塾大学 大木聖子准教授とそのゼミ生たち。
訓練は、地震の際に起こりうるさまざまなトラブルを想定して実施されます。
今回選ばれたシチュエーションは、お昼休みで給食の準備中。
給食当番の児童が階段で被災。シチューをこぼし、足にやけどを負ってしまいます…。
足にやけどを負った児童:
あつい!
先生:
水ください!お願いします!
先生:
大丈夫だよ。
水もっとたくさんいる!
怪我を負った児童を見つけた先生は、他の先生に水をかけるよう指示。
児童に声をかけ、落ち着かせます。
一方、別の場所でも…
階段から転倒し、頭から出血している児童を見つけた先生。
先生:
できれば担架お願いします!
念のためAEDも!
自分の持っていたハンカチで、児童の頭を止血しながら担架の到着を待ちます。
その間、けが人の集計を行うのは本部(職員室)にいる校長先生。
重症度の高い順に、担架を届け保健室・職員室に搬送します。
やけどや出血、パニックを起こす児童の対処をこなした先生たち。
訓練の振り返りを行うと…。
先生①:
昨年訓練で頭から出血している子の対処をした後に、体験学習で本当に頭を切ってしまった子に圧迫止血をするということが本当にあったのですが、訓練で対処する機会がなかったらできていなかったと思っていて。
それを今回の訓練でまた生かすことができて良かったです。
先生②:
担架を運ぶのに先生が4人、5人取られてしまって、いない時間があるから、児童にもできることはやってほしい。
やはり先生だけではなく、子どもたちもお互いに様子を見合って、できる治療はしてあげたり、励まし合ったりすることが必要だと感じました。
訓練の良かった点はもちろん、改善点についても多くの意見があがりました。
教員向けの訓練を行うことについて、校長先生は…
常盤台小学校 新川浩一校長:
社会的に災害に対する関心が高まっている一方で、学校現場は以前からマニュアルに沿った形式立てられた避難訓練を繰り返してきたということに改めて気づきました。
教員一同も、これで本当に子どもたちを守れるのかという危機感を抱き、昨年度から、本気で子どもを守ることができるマニュアルや避難訓練に思い切って変えていこうということで取り組みを始めました。
実は常盤台小学校が教員を対象とした訓練を実施するのは、昨年に引き続き2回目。
昨年挙げられていた、以下の課題は…
骨折や、やけどの対処法についての確認
⇒骨折は保健室ですぐに固定、やけどは廊下に常備している水ですぐに対処!
階段の呼称を決め、場所の把握を明確化
⇒「わに」「きりん」など、分かりやすい名前でけが人の場所を共有!
見事、昨年の反省を生かした対処が行われていました。
“教員対象”の「防災訓練」を行う意味とは…
監修を行った大木聖子准教授に、教員を対象とした防災訓練を行うことの意味を聞いてみました。
大木准教授:
「安全教育」「防災教育」というと、”先生が子供たちに防災教育をする“というイメージを抱いてしまいます。
しかし一般的には、労働者・大人に行う教育を「安全教育」と呼んでいるんです。
そう考えると、先生方に防災について教育を行う機会が日本の学校はあまりに少ない…。
まず一つは、先生方が子供に教える前に自分が防災について分かるようになるということが必要です。
それからもう一つは、防災を考えることをきっかけに先生方のチームビルディングを行うということです。
これは、普段の学校運営に関わることであり、そして災害時に生きるコミュニケーションとなります。
今回の訓練についての印象は…
大木准教授:
常盤台小学校では、昨年も教員対象の訓練をさせていただき、先生方にとって今回はリベンジマッチ。
すると、1年の間に先生方が大きく成長されていました。
それは、訓練への対処が素晴らしいという先生方のチーム力ももちろんですが、何より今回は防災のことを話したい話したいという姿勢が見られました。
このように、防災をきっかけにして、先生方が自分の言葉を年代や立場に関わらず紡ぎ出している、その様子が昨年から圧倒的に増えたなというふうに感じました。
“防災に対する心構え” 私たちに必要なことは…?
地震が頻発し、防災についての関心が高まる中、必要な心構えについて聞いてみました。
大木准教授:
先生方に限らず、私たちも何かの組織の一員です。例えば会社に勤めている方は、会社でもし被災したら家族とどうしようかということを考えます。
学校現場に限らず、全ての人に同じことが起こり得る。
職場で地震が起きると家族と会えなくなるということを、もう一度真剣に考えてみていただきたいです。
そうすると、自分はいま子どもに何を伝えるべきなのか、そういったことが現実的に見えてくると思います。
防災をきっかけに、コミュニケーションの量を増やす。
そういうものとして防災を捉えていただきたいです。
私たちは一人きりで生きているわけではありません。
防災は目的にするのではなく、大事な人のことを考えるツールとして使っていただきたい。
それが防災を長続きさせるためのコツだと考えています。
恥ずかしがらずに真面目に防災について話していい日、それが「防災の日」や「防災週間」だと思うので、そういった機会を利用して、ぜひ大事な人や近くの人とコミュニケーションを取っていただきたいなと思います。
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