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加藤シゲアキ「恋愛を描くことに吹っ切れた」作家・宇佐見りんとの対談で創作を語る

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11月21日(土)、NEWSのメンバーとして、芸能活動と作家生活を両立させている加藤シゲアキが、3年ぶりとなる小説「オルタネート」(新潮社)の出版記念トークイベントに登壇した。

記者会見の様子はこちら

加藤が「いま一番気になる作家」と指名したトークショーの相手は、「かか」(河出書房新社)で昨年の三島由紀夫賞を最年少で受賞した、現在大学2年生の作家・宇佐見りん。最新作「推し、燃ゆ」(河出書房新社)では、アイドルのSNS炎上をテーマにして話題となっている。

互いに“SNS”をテーマとして小説に取り込んだ加藤と宇佐見。小説を書くということ、SNSを通して人間を描くこと、“推し”と“推される側”についてなど、鋭い作家目線で語り合った。

SNSを通して人間を描くということ

当時19歳の宇佐見が書いた「かか」について、「19歳でこれが書けるなら、もう小説を書くのやめようかなと思いました」と、絶望を感じるくらいに面白かったと吐露する加藤。

加藤から絶賛された宇佐見は、「そんな風に言っていただけて、すごくうれしいというか信じられないですね」と喜び、「オルタネート」については、「ディティールが面白い、いくつも好きな場面、残る場面があります…どこまで話していいんだろう(笑)」と、ネタバレしないように配慮しながらも感想を伝えた。

また、「SNSは使うものというイメージがありましたが、『オルタネート』というアプリ自体が、自分と対峙する関係として描かれていて、用具としてではなくSNSが生きている感じがして面白い」と続けると、思わず加藤も「お互いに作品の感想を言っているだけで時間が終わっちゃいそうですよね」と笑顔。そして、そこからもしばらく互いの作品の感想を伝え続けた。

その後も、SNSを通して人間を描くという試みを小説で行っている2人ならではの、SNSトークは盛り上がりを見せた。加藤はSNSについて、「現代劇を描くうえで避けては通れない」としながら、SNSを題材として扱うことへの難しさを説く。

一方、宇佐見は「中高生の頃からSNSは自分の生活に浸透していたので、“衣・食・住・SNS”という感じ」と語る。そのサラリとした回答に加藤が、「小説界の“第7世代”なのかな」と笑いながらも、「あくまでも人間が使うツール、容器なのがSNSな気がする」と共通性を見出すと、宇佐見も「結局描いているのは人間、その感覚はあります」と同意した。

SNSから互いの作品の印象的だったシーンについて話題が変わると、宇佐見はプロテスタント系の高校に通う学生たちが、聖書を頭に乗せて突然の雨をしのいで教会に入っていくシーンを挙げた。

「敬虔なキリスト教徒からすると神聖な聖書が、生徒たちの間では日常と化している」と、そういった無意識のように描かれるギャップが物語の中で次第に影響していく様子を興奮気味に宇佐見が語ると、「聖書を頭に乗せるのはあるあるで、僕の実体験なんです(笑)」と明かした。

そして加藤は、“信じているもの”と“現実”の関係性において、「信仰はいろいろ作りだせる。何を信仰しているのかが、人間というものを表すうえでとても大事な部分」と、宇佐見の作品にも感じる共通点を語り、「僭越ながら、いい対談相手を選んだ自分を褒めたい」と自画自賛して笑いを誘った。

自意識まみれの20代、吹っ切れた30代

作品を書き上げた期間について、「4ヵ月かな、直す時間も入れたらもっとありますけれど。早いんです、僕たぶん」と加藤が明かすと、「これを4ヵ月ですか?やめたくなっちゃうな(笑)」と、芸能活動もしながらの加藤の執筆スピードに宇佐見が絶句する場面も見られた。

推しが炎上したファンの心境を描いた、宇佐見の「推し、燃ゆ」について話題が及ぶと加藤は、「僕は推してもらう側としてですが(笑)」と前置きし、「読みながら息苦しくなって気が気じゃなくなる、(炎上して)『ごめん!』って思ってしまう」とアイドルならではの感想を伝えると、「この作品を読んで“ごめん”という感想を伝えられたのが初めて」と宇佐見が笑う一幕も。

デビュー作「ピンクとグレー」(角川書店)を書き上げた時点でのインタビューで、「恋愛を描くのはこっぱずかしい」と語っていたという加藤だったが、今作で恋愛シーンにも挑戦した心境を、「高校生の恋愛は今しか書けないと思ったんです。自意識まみれの20代の頃は『ジャニーズが恋愛小説を書いたらしいよ』という色眼鏡に耐えられなかったと思いますが、今はもう吹っ切れたところがありますし、小説を若い人に読んでほしいという気持ちがあります」と自信をのぞかせた。

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大事なのは、初期衝動と熱量

ここでトークイベントに観客として来場している書店員から2人への質疑応答タイムが設けられた。

小説家志望の高校生、学生に対してアドバイス求められると、加藤は「まず書き上げることだと思います。そして自分の中のテーマでもありますが、“初期衝動と熱量”、これを書きたいと思える衝動、その火種を見つけること」とし、「その火種が見つからない場合は、たくさんのものを見る」と、「35歳まではたくさん旅に行け」と作家の伊集院静からもらったというアドバイスを例に出して回答。

宇佐見は加藤同様に「偉そうなことは言えないんですけれど」と前置きしながらも、「この感情は自分にしかないんじゃないかとか、感情を全部乗せで取り合えず書いてみたら、その先に行けるんじゃないかな」とコメント。

もし2人がいま高校生で、オルタネートが実在したら利用するか?と問われると、「私はLINEを始めたのも中学3年と遅かったので、アカウントだけ作ってみて、なじんできたら使ってみるかな」と宇佐見。

加藤は、「中3の時にLINEがあったというのが衝撃ですけどね、僕らの時代はPHSですからね」と笑いを挟み、「そもそも僕はSNSをやっていないし、高校生の頃も冷めていて好きな本を一人で読んでいるようなタイプだった。でも、本好きのコミュニティがあるんだったら、もっといい本をたくさん読めていたのかな」と思いを馳せた。

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