“目の保養”となるようなイケメンを紹介する「眼福♡男子」Vol.70は木村達成(きむら・たつなり)が登場。

2012年にミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズンの海堂薫役でデビューした彼は、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」やハイパープロジェクション演劇「ハイキュー‼」などの2.5次元作品で活躍した後、2018年にミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール~籠の中の道化たち~」でグランドミュージカルへ初出演。

その後、「エリザベート」、「プロデューサーズ」など話題作にも次々と進出し、そして、この秋、世界的に有名な未解決事件をモチーフにチェコで生まれ、韓国独自のアレンジを加えたミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」で、闇に落ちていく外科医・ダニエルに扮する。

こちらの<仕事編>では、実力派キャストとしのぎを削る心境や、ミュージカル界で着実にステップアップしている彼が現在、どのような思いで俳優という職業に向き合っているかをインタビュー。後日、公開する<素顔編>では、木村の“人となり”をクローズアップする。

実力派キャストの中に立つには、そこに負けないパワーと引っ張っていく力が必要

――田代万里生さんや加藤和樹さんなど、錚々たるキャストの皆さんが出演するこの作品において、木村さんの名前がトップにクレジットされていますが、どのような心境ですか?

恐れ多いです。この中に立たせていただくことがうれしい反面、皆さんに負けないパワーと引っ張っていく力が求められると思うので、皆さんと力を合わせてやっていけたらという気持ちです。

――皆さんの顔のパーツを合成したキービジュアルが話題になっていますが、木村さんはどの部分を担当されたのですか?

僕は「鼻」ですね。ファンの皆さんは一発でわかったみたいです。自分の鼻をまじまじと見る機会なんてないですし、「皆の顔を合成する」という発想が面白いなって。「目」とかならいいけど、「鼻」ってなんか恥ずかしいですね(笑)。

――日本人キャストでの上演は今回が初ですが、これまで韓国人キャストが演じたこの作品を観劇したことは?

観劇したことはなく、音源のみを聴かせていただきました。爆発的な歌声が印象的だったので、僕たちも負けないように稽古を頑張っていて、あちらとはまた違う日本オリジナルの作品ができるのではないかと期待しています。

――ちなみに、他の韓国発ミュージカルを観たことはありますか?

観劇経験はありませんが、今回、ご一緒する田代万里生さんが出演されていた「スリル・ミー」にとても興味があります。

――木村さん出演でぜひ観てみたいです!

そのうち、実現できたらいいですね!

――「スリル・ミー」といえば、2人の男性が演じる「私」と「彼」の濃密な世界が見どころですが、どちらの役を演じたいですか?

できるのなら「私」も「彼」も演じてみたいです。

白井晃さんからは「計算するな」と。そこを払拭するために迷っている最中です

――白井晃さんの演出を受けるのは「銀河鉄道の夜2020」に続いて二度目ですが、今回の稽古について聞かせてください。

ゆったりとしながらも苦しい時間が漂っていて、その場を歩いた“一歩”すらダニエルの動きとしてはダメなんじゃないかと今、迷いに迷っている最中です。僕の中ではごく自然に流れている思考なのですが、感情より先に見え方や面白いことを考えてしまって、白井さんから「計算するな」と言われるんですよ。それがなかなか払拭できずに困っています。

「銀河鉄道の夜2020」のときに白井さんから印象的な言葉をかけていただいたのですが、「(木村の)感情の作り方や考え方はすごいと思うが、それを表現するのが役者の使命。木村が考えた100%のものが、その状態のままお客さんに届いて、考えさせることができたらそれは正解だけれど、今はまだ100よりも少ない」と。

改めて考えてみれば、それはうれしいお言葉でもあったなと思う一方、これからも役者をやっていくうえでの課題でもあると感じました。日々成長ですね。

――共演の皆さんとの稽古の感想を聞かせてください。

いろいろな作品の真ん中に立ってきた方が顔をそろえているので、やっていて楽しいです。皆さんのお芝居を見ていると、こんなふうに勝ち上がってきたんだろうなとか、こういうことで苦労してきたのだろうなということが伝わってきますし、一緒に作品をつくりながらも戦っているような感覚です。

――Wキャストでダニエルを演じる小野賢章さんの芝居からはどんなことを感じましたか?

賢章くんは役者さんのほか、声優さんとしても活躍されているので、魅力的な声で瞬時に相手をその気にさせてしまうんですよ。劇中、急に時間が飛んで、ダニエルが愛を伝える場面があるのですが、賢章くんは遠回りをすることなく、最短ルートで胸に突き刺さる声を表現できていて、羨ましく感じます。

――小野さんの存在は気になりますか?

もともとのカラーが違いますし、ダニエルへのアプローチも違うので、気にしないようにしています。賢章くんの芝居を見ながら、まわりも見ることができるのは僕にとってもありがたい環境です。本来はダメなことなのでしょうが、まわりがどう動いているか、作品をつくるうえでは理解しておくべきことなので。

役者の仕事は求められて決まるものだけど、役柄は自分で必ず勝ち取ります

――作品の公式サイトインタビューで、「白井さんの前でいろいろなダニエルを提示しながら、自分に合ったダニエルを見つけていきたい」と発言していましたが、見つかりましたか?

稽古場で放出するエネルギーと、自分が見つけたいキャラクター像は、結局本番になると瞬間的に変わってしまうので、見つけなくてもいいのかなってちょっと思ってきています。

これまで舞台に立ってきた自信もどこかにありますし、僕たちの芝居は稽古場ではなく、お客様の前で披露することが本番。「見つからなくても大丈夫」と自分に言い聞かせるようにしています。

――本作への出演が決まった際、「罪を犯してしまうほどの愛を、ぼくはまだ知らないように思います」とコメントしていましたが、この発言について詳しく聞かせてください。

どの取材でもこの発言について深掘りされるのですが、本のタイトルやキャッチコピーになってしまいそうなワードを僕は出してしまったんですね(苦笑)。

愛する人がどんな状況であれ、良心のかたまりみたいな人間が壁にぶち当たると、罪を犯すことでしか救う方法がなければそうなってしまうのでしょうか…。僕も27歳ですし、それなりの「愛」は知っているつもりです。

――劇中歌を聴いて、韓国ミュージカルならではのダイナミックさとともに、とても難しそうな曲だと感じましたが、歌ってみた感想を聞かせてください。

最初は「何、これ?」の連続でした。日本語に訳してしまうと、1曲に対する情報量がとても少ないので、そこに動きを加えて表現しなければいけない。曲の難しさはもちろんありますが、“敵”はそこじゃないというか。

とはいってもミュージカルなので、“敵”はそこになってしまうのか…。歌うことに縛られ過ぎてもいけませんし、1フレーズごとに魂を込めてお客様へお届けしたいので、一番いい表現方法を本番までに探していければと思います。

――本作で注目していただきたいのはどのような部分ですか?

ダニエルは、心がいくつあっても足りないくらいに打ちひしがれる役柄なので、彼が決意を固める瞬間を観ていただきたいです。

――最後に、目標とする俳優としてのあり方を聞かせてください。

僕らの仕事は、声をかけていただいて決まるものですから、自分からあまり言うことではないと思うのですが、僕は性格的に「あの作品に出たいです。でも、大丈夫です。自分で勝ち取ってみせます」というスタンスなんですね。

画面やスクリーンを通したときや舞台上において、なんか目がいく人っているじゃないですか。そんなふうにオーラの幅を大きくして、今よりもっともっと高く飛べる翼がほしいなと。僕は身長が180㎝あるのですが、作品の中では2mぐらいに見えるような役者になることが目標です。

最新情報は、ミュージカル「ジャック・ザ・リッパ-」公式サイトで。

撮影:河井彩美