9月11日(土)24時より、伊野尾慧主演、オトナの土ドラ『東海テレビ×WOWOW共同製作連続ドラマ 准教授・高槻彰良の推察』Season1 第6話が放送される。

本作は、完全記憶力を持つ民俗学の准教授・高槻彰良(伊野尾慧)と、人の嘘がわかる大学生・深町尚哉(神宮寺勇太)の凸凹バディによる謎解きミステリー。

『東海テレビ×WOWOW共同製作連続ドラマ 准教授・高槻彰良の推察』の記事はこちら!

第5話「呪われた部屋の怪」では、声優志望の女性を演じた鞘師里保と、怪しさ満載の不動産屋店主・螢雪次朗、『その女、ジルバ』で池脇千鶴演じる主人公・笛吹新の弟・光を演じた金井浩人ら個性派俳優陣が共演。

高槻と尚哉とともに一堂に会したクライマックスシーンは約10分間、5人だけの芝居で見せる構成となっており、視聴者からは「舞台みたい」「テレビドラマなのに攻めてる」「芝居に引きこまれた!」などの声が多くあがった。

ドラマの影響もあってか、原作本も売り上げ好調だという。ドラマ化とともに重版がかけられたものの、予想外の売れ行きに売り切れになる書店が続出。

7月に二度、8月に入ってからもさらに重版がかかるなど、出版元の角川文庫キャラクター文芸編集部も「売れすぎて何度目の重版かわからない!」と、うれしい悲鳴を上げている。

今回は、そんな原作本の魅力について考察してみる。

<『准教授・高槻彰良の推察』原作を考察>

異能×異能による謎解きと人間ドラマの二重奏

そもそもキャラクター文芸とは何なのか。小説の分類として最近定着してきた分野で、明確な定義はまだないものの、総じて主人公やその周囲の登場人物たちが漫画やアニメのように個性的で、かつ舞台設定も特殊な小説をカテゴライズしたものと言っていいだろう。

今作は、完全記憶能力(瞬間記憶能力)を持った主人公と、嘘がわかる大学生という凸凹バディによる謎解きミステリー。

それぞれ単独であればどこかで見たことのある設定かもしれないが、この2つの異能が重なることで、実は物語が掛け算的に面白くなっている。

例えば、原作の「針を吐く娘」のエピソード。(ドラマでは「わら人形の怪」として第2話で放送)女子大学生が「針の呪い」に追いつめられる中、それぞれの「嘘」が謎を深める構造となっている。

面白いのが、「嘘」は必ずしも「悪意」を持った人間だけが吐くものではない、というリアリティだ。その場を盛り上げるため、相手に忖度したため、人を傷つけないため……「嘘」の裏にある人間の弱さ、悲しさを准教授の高槻が完全記憶能力によってその背景を浮き彫りにし、登場人物が抱える本当の思い、悩みをやさしい解釈で救っていく。

このミステリーと人間ドラマの二重奏は、一度ハマるとクセになってしまう。

面白雑学の宝庫「へえ!」な高槻の民俗学講義

原作の魅力としてもう一つ上げられるのは、面白雑学を楽しむことが出来る高槻の講義シーンだろう。

民俗学とは、古い文化や民間伝承が歴史的にどう形作られてきたのかを研究する学問。高槻は、幽霊や呪いなどの怪異現象や、都市伝説の研究を専門にしている。

講義のシーンでは、実際に作者の澤村御影氏が文献などで調べた都市伝説の成り立ちなどが、細かく高槻のセリフとしておこされており、実際に高槻の講義を受けたかのような満足感を得ることができる。

出てくるワードもキャッチーなものが多い。「不幸の手紙」や「きさらぎ駅」、「紫鏡」に「ジェットババア」。読めば誰かに話したくなる、そんな雑学が満載で、民俗学入門書としても充実した作品になっている。

何より「民俗学ってこんなに面白かったのか」と気づかされることも。ドラマを見た視聴者からは「大学時代に民俗学の講義を取ればよかった」という声もあがっている。

登場人物の見事なキャラクター造形

最後に、この原作の最大の魅力は何と言っても、登場人物たちの魅力的なキャラクター造形だ。

主人公の高槻は、「イケメン」「聡明」「博識」なのに「絵心がない」「怪異に触れると理性がぶっ飛ぶ」など、イケ要素×残念要素が混在。この魅力の掛け算が、登場人物を1カラーにせず、高槻の言動に深みを与えている。

バディを組む大学生の深町尚哉は、「地味」×「中身イケメン」。高槻の幼なじみの刑事・佐々倉健司は、「強面」×「おばけが怖い」。

「〇〇なのに△△」と対比するような魅力を掛け合わせることで、そこにギャップが生まれ、キャラクターの魅力がより際立つ作りになっている。

読者は、そんな登場人物たちのどこかに自分を投影でき、怪異と言うファンタジーの世界観の中でも素直に感情移入しながら物語を読み進めることができるのだ。原作には、EXエピソードとして主要人物たちのそれぞれのドラマも収録されている。自分の推しキャラクターの物語を楽しむことができるのも、この原作の魅力だ。

第6話は、原作にもある「図書館のマリエさんの怪」。原作オリジナルの都市伝説がテーマになっており、これまでのドラマエピソードとは一線を画す、すべての登場人物の純粋な思いがあふれる感動作になっている。

第5話「呪われた部屋の怪」を見逃した方、もう一度見たい方はFODをチェック!

<第6話あらすじ>

女子中学生が“図書館のマリエさん”に呪われたかもしれないという話が高槻(伊野尾慧)のもとに舞い込んでくる。

図書館にある何冊かの本に書かれた数字を声に出して読むと呪われるという。呪われた少女・美弥(横溝菜帆)と友人の柚香(平澤宏々路)に話を聞き、謎を解くため図書館へ行く高槻と難波(須賀健太)。

一方、数字を読み上げてしまい留守番をする羽目になった尚哉(神宮寺勇太)は、瑠衣子(岡田結実)の様子が少しおかしいと感づき…そんな中、高槻は図書館職員の雪村桃子(松本若菜)が何か隠しごとをしていることに気づく。