『めざまし8』美術デザイナーが明かすセットの秘密!通常はやらない白を基調にし、アートミュージアムのような空間に
毎週(月)~(金)8時~『めざまし8』
毎週(月)~(金)8時より、フジテレビで放送中の『めざまし8』。
朝8時、目が覚める一番のニュースを、谷原章介&永島優美(フジテレビアナウンサー)が「わかるまで解説」。最も視聴者の関心の高いニュースを、日本を代表するオピニオンリーダーたちとともに考え、解決の糸口を探り、視聴者と一緒に作る番組として視聴者の疑問にリアルタイムで答えている。
今回は、セットデザインを手がけた、齋田祟史にセット制作のこだわりについて聞いた。
この記事は、フジテレビジュツのヒミツから引用し、構成したものです。
<『イチケイのカラス』美術デザイナーが明かすセットの秘密「実際の法廷にはほとんどないものが…」>
<デザインのヒミツ『めざまし8』編>
――これまでも朝の情報番組のセットデザインを担当してきましたが、今回のセットはどのようなコンセプトですか?
齋田(以下、同):プロデューサーからはまず 、「番組ロゴをレインボーカラーにしたい」という話がありました。SDGsやLGBT等、「多様性、多面性」の意味合いも込められています。そこから、画面上に頻繁に出すレインボーのロゴが映えるように、セットの色は「白」に決まりました。
そしてもう一つ、「8を象徴的に見せたい」という要望も受けました。それでセットの中に「8」をかたどったオブジェを置いています。一番わかりやすいのは、セット中央の大きい棚で、もう一つは谷原キャスターの後ろにある「8」の棚です。飾り時計の針も、もちろん8時を指しています。
――「レインボーカラー」と「8」以外でデザインに取り入れたものは?
多面体ですね。番組のオープニングでは、レインボーの光がセンターの「8」に降り注いで放射線状に色づいていくのですが、その「8」のロゴが多面体にも見えて、そこからイメージを膨らませていきました。「多様性、多面性」というコンセプトを表現した形でもあります。
セットは、カウンターも背景もすべて多面体を集めたポリゴン造形で、素材はスチロールに見せたモク(木)です。「抜け」の部分にも、水色の多面体をあしらった幕をセットの奥に吊っています。
――セットイメージを一言で言うと?
「アートミュージアム」です。谷原キャスターの知的なイメージから、セットに本棚を置きたいと思ったのですが、プロデューサーが求める“抽象的な感じ”を出すために、本棚を斜めに吊って、中の本が傾いてあえて整然としていない感じを出してみました。
飾りにもアートっぽいものを置いて、トリックアート感のあるおしゃれな博物館を思い描きながらデザインを進めました。
――特にこだわったところは?
色の入れ方かな。白いセットに色を使う場合、ベタッと入れてしまうと白に対して強くなりすぎるし、奥行きも出なくなります。なので、布などの柔らかい素材で色を入れて白と交わりやすくしました。
布以外にも、青い紐などのカラーロープや半透明の色のついたアクリルを使ったり、さまざまな色の電飾をゆっくり動かしたりしています。緑も造葉で取り入れました。
――デザインで“遊んだ”部分はありますか?
多面体の凹凸の加減でしょうか。多面体の大きさや面の傾斜の角度を変えることで、影のつき具合を調整して、場所によって色の入り方に変化を出しています。
――苦労した点は?
白の強さの調整ですね。通常、白は光を飛ばして明るくなりすぎてしまうので、セットを白にすることは少ないんです。
今回も、放送開始当初には「白が強すぎる」という意見があって、照明を落としたり、セットの壁や床にグレーの影を入れたりして、白を徐々に弱めていきました。その上でレインボーカラーを全面に入れていくので、通常のセットで気にするカメラの画角ごとの見え方以上に、セット全体に対しての色の入り方に非常に執着しました。
セット丸ごとの統合感にここまで気を配ったのは初めてです。自分では、この全体のバランス感にとても気持ち良さを感じています。
<ビジュツのヒミツ①>
フジテレビの新しい朝の顔として放送中の番組。シンプルなフォルムに色が交錯する番組ロゴの世界観が、スタジオセットとして立ち上がった。
まず目に飛び込んでくるのは、シャープな直線が印象的な白いセットパネル。
一つとして同じ形が存在しないユニークな造形は、近くで見ると凹凸による立体感が際立っている。
直線を感じる溝は、合板の重ね技。照明や電飾の当て方によって、直線ラインが浮かび上がる仕掛け。
とある一面は、グレーの塗料が。光を当てずとも効果が得られる「描いた影」も随所で活躍している。
白い世界に散らばる「色」の演出は、組み合わせとバランスが大事。布やオブジェで、全体の印象を少し和らげている。
形が独創的なので、傾いた棚のオブジェも体勢維持が大変そう。
そして番組ロゴそのままに、カラフルな「8」オブジェを程よく配置。
吊りものの中には「ダブルの8」も。
恥ずかしそうに、のぞき見しているような「8」も。
プレゼン台も、2つ合わせて上から見れば「8」に見えなくもない?
<ビジュツのヒミツ②>
オープニングから情報満載のスタートダッシュ。MCの背景には、赤とオレンジで色分けされた巨大なランキングボードが登場する。
出演者の映像ときれいに合成されているのは、テレビ通のみなさんにはおなじみの表現法。ご存じ「クロマキー」と「バーチャルCG」。
『めざまし8』のクロマキーボードは、緑パネルが3枚。きっちり効果を出すためには、均一の明るさで照らさなければNG。だから大道具製作でも、光が反射しない“艶消し”塗料でムラなく塗って仕上げないと照明スタッフからNGが。
オープニングでは、この3枚のボードにそれぞれ違うビジュアルを合成。センターのボードには、番組ロゴやVTRがはめ込まれる。両脇には、ランキングCG。
この3つの画面は、バーチャルカメラと連動しているので、カメラの動きも自由自在。すべて、副調整室(サブ)にある1台のPCで制御している。
実は3つのクロマキーボードは、正確に15cmの間隔で建っている。そのわずかな隙間から、美術セットがチラッと見える。
バミっている(定位置を決める)とはいえ、人の手による設置なので、毎朝パネルの位置は微妙にずれてしまう。CGスタッフにとっては、合成のための微調整が日課。
バーチャルCGには欠かせないのが、キャリブレーション(※)作業。正確なデータを送らないと、不体裁な画面になってしまうことも。15cmの隙間の存在を、機械に覚え込ませるの。
(※)「較正(こうせい)」と訳される計測用語。計測や実験などに先立ち、測定器の狂い・精度を正すこと。重量、長さ、位置、電気、光、などの物理的な数値を扱う際、測定器に指示した値と、実際に取り扱う値との間に差が生じることがある。これは、測定対象の誤差や装置ごとの個体差、振動等で位置がずれたり、経年変化によって形状が変化してしまったりするため。この誤差を測定し、得た値を使って誤差を打ち消す方向に「較正」することが、「キャリブレーション」。
人の手で設置して、人の手で調整する。このアナログな手作業のセッティングが、「クロマキーなのに奥行きを感じる」という表現を可能にしている。
お天気コーナーでも、この3枚の緑パネルは大活躍。この時は、15cmの隙間はあけずにぴったりとくっつけて、大きなクロマキーパネルにする。もちろんこれも手作業。
時には、出演者の前にかぶさるようにフロントCGが登場することも。背景には「クロマキーCG」、手前には「フロントCG」。サブにある送出PCが、フル稼働する。
毎朝、生放送中も送出作業のために張りついているCGスタッフ。出演者のコメントに合わせて、色を変えたり、文字を出したり。こんなにテクノロジーが進化しても、ENTERボタンを押すタイミングは、やっぱり人が一番正確だという。
<『めざまし8』プロデューサー×美術デザイナー 動画対談>
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