永野芽郁さんと奈緒さんが、初の2ショットで取材に答えました。
2018年に放送された連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)で、主人公・楡野鈴愛(永野)と幼なじみの菜生(奈緒)役として共演した2人。そこから4年の月日を経て、映画「マイ・ブロークン・マリコ」で、シイノトモヨ(永野)とイカガワマリコ(奈緒)として、再び親友役を演じます。
今回、4年ぶりの共演で、初の2ショット取材が実現したことを喜ぶ、永野さんと奈緒さん。プライベートでも親交のある2人に、再び親友役を演じることへの気持ちや、親友だからこそ知るお互いの「優しい部分」、さらに理想の連休の過ごし方などを聞きました。
「奈緒ちゃんがマリコ役じゃなかったら、もっと苦労しただろう」(永野)
――今回、『半分、青い。』以来の共演になりますが、出演が決まったときの心境を教えてください。
永野:『半分、青い。』が終わってからも奈緒ちゃんと交流はあったので、この話が来たときに「どう?」っていう話をしてたんです。「すごく縁があるね」って話しながら、(『半分、青い。』とは)また違うタイプの親友役で私たちを求めてくれる人たちがいるのはうれしさもありましたし、「一緒に全力で応えていこう」っていう気持ちでしたね。
奈緒:私もこの仕事を続ける上で、個人的に「また芽郁ちゃんと何かの作品でお芝居をして、時間を共に過ごせたらうれしいな」というのが、目標の1つになっていました。
それが今回こんなに距離の近い役をいただけて。「シイノ役を、芽郁ちゃんがやる」ということ自体に私はすごくワクワクしましたし、そして、その側にいられるのはすごく光栄でした。
出演の話を聞いたときは「この2人だからこそ、生まれるものがあるんじゃないかな」と思いました。
――今回、改めての共演で、何か気づいたことはありましたか?
永野:『半分、青い。』のときもそうでしたが、今回はさらに奈緒ちゃんの素の人柄に魅力を感じました。繊細ではあるけど、強さ、優しさ、温かさがある人です。それがいつも役に反映されているなと思いながら、『半分、青い。』のときは見ていました。
今回のマリコ役は、特殊ですし演じながら、自分自身が苦しめられる瞬間も多々あったかと思うんですけど、「ただかわいそうとか、ただの悲しい子」というふうには、まったく見えませんでした。
奈緒ちゃん演じるマリコが、私を突き動かしてくれたので、この役は奈緒ちゃんがやってくれなかったら、本当に私はもっと苦労しただろうなって、スタートのときから思っていました。
また「お芝居なんだけど、お芝居じゃない」って感じる瞬間がすごく多い方。現場でひとつひとつのシーンに立ち向かう姿を見て、刺激を受けていました。
奈緒:私は…会ったときからもう、芽郁ちゃんはすごかったので。そのときの記憶も「もう4年経ったのか…」って思うくらい鮮明に覚えています。
『半分、青い。』でも、今作でも、芽郁ちゃんが座長として、華奢な体の中に、ものすごく大きな器を持って立っていてくれて。私たち俳優部が、思いきりそこに飛び込んでも、全部受け止めてくれる。
年齢や経験とかも関係なく、芽郁ちゃんは「飛び込んでいける」器を常に持っていて。そういうすごみがある方なので、本当に心から尊敬してます。
永野:なんか、すごく褒め合ってるの恥ずかしくない(笑)?
奈緒:分かる。(永野さんの)顔が見られないくらい(笑)。
――本作への出演が決まったとき、お互いに連絡はしましたか?
永野:しましたね。最初に私がお話しをいただいたときに、「マリコ役は、奈緒さんにお願いしたいと思っています」というところまで聞いていて。でもそれを、お互いに言っていいのか、ダメなのかみたいな。
仲は良いけど、やっぱりお仕事だし。お互いに、なんとなく探り当ってて…。
奈緒:そうそうそう…(笑)。
永野:「なんかこれ知ってる?」、「いやーこれなんかでも…。もしかしたら(連絡)来た?」みたいな(笑)。そんなふうに、お互い探り合ってました。
(本作では)奈緒ちゃんもすごくいろんな葛藤があって難しい役ですし。私自身もすごく葛藤があったので、「どうかな?」って言いながら、「でも、私たちなら大丈夫だね」って確認し合って、「一緒に挑戦しよう」っていう、やりとりがありましたね。
奈緒:手をつないで飛び込んだという感覚は、最初からすごくあったね。
シイノとマリコは「この関係性だからこそ、描けた」(奈緒)
――2人の関係性があったからこそ、「この映画ができたな」という感じですか?
永野:間違いなく。「ここまで元々の関係性が影響する作品ってあるんだ」って思いました。
これが「初めまして」で、ここから距離をちゃんと縮めていかなきゃいけない方だったら、多分そっちに一生懸命になりすぎて、シイノとマリコになるまでにすごく時間を要しただろうなと思います。
撮影期間が約20日間だったので、その短い間でここまで思い合えたのは、本当に奈緒ちゃんだったからだろうなと思います。
奈緒:私もそうですね。マリコは、過去のシーンと幻影のシーンしか出てこないので、毎回芝居をしているときに、「マリコの人生を回想シーンのみで描くって、難しいな」と思ってました。
その中で、シイノ役が芽郁ちゃんだったので、(シイノに対して)最初から埋めていける気持ちと、勝手に湧いてくる感情というものは、知っているものでした。
芽郁ちゃんがシイノとしてそこにいてくれたことで(改めて気持ちを)作るという必要はなかったので、そこは本当に「この関係性だからこそ、描けたものがあるな」という実感がありました。
――シイノとマリコを演じてみて、お互いに「永野さんに重なる」「奈緒さんに重なる」と感じたところはありましたか?
奈緒:悲しいね、重なると。
永野:人間が誰しも持ってる脆さ(もろさ)みたいなものは、私にも似ているところはあるんでしょうけど。奈緒ちゃんに重なる気がするのは、少し間違えたら、全部が崩れちゃうんじゃないかと思うような、繊細なところです。
すごく人に優しさを与えられる人だから、どこかで自分が我慢することによって、崩れてしまわないだろうか…、みたいな。繊細な人だからこそ人に優しくできるし、お芝居できると思うんですけど…そこは見ていて「守りたいな」って感じます。
永野芽郁としてもそうなったし、シイノとしても「奈緒ちゃんとマリコを守りたい」って思わされることが多かったので、そういうところですね。
奈緒:今、パッと思いつくのは喫茶店での、シイちゃんがマリコに怒るシーン。終わってみて、今あのときのことを考えると、芽郁ちゃんって普段はすごくほわんとした空気もあって、柔らかさを持っている方なんですけど、人のために怒れる人なんですよ。
きっと私が自分を大事にしてなかったら、芽郁ちゃんもシイノと同じように怒ったり、もしかしたら私よりも先に泣いて、怒るかもしれない。「自分のことを大事にして」って、強く言ってくれるかもしれない。
あのとき見せたシイちゃんの強さって、真ん中に優しさがあって、そこの芯の強さっていうのは芽郁ちゃんともすごく重なるところがありましたね。そういう強さがあるから、「この人のそばにいたいと思うんだろうな」って感じました。
2人揃って「考えすぎるタイプ」
――マリコは、愛らしさがある半面、面倒くささもあるキャラクターですが、お2人には、そういう部分はありますか?
奈緒:私は、めちゃめちゃめんどくさいです(笑)。
考えすぎちゃうところですかね。きっと「もういいよ。もういいか。まあいいか」って、言える自分になりたいと思いながら、今を生きてるんですけど。気が付くと「考えすぎてるな」と思いますね。
永野:そっか。でも(私は)考えられる人、好きだけどね。
奈緒:芽郁ちゃんは、こうやって言ってくれるんですよ(笑)。
永野:自分たちには台本もあるし、言葉をすごく大切に扱う仕事だと思っているので、ちょっとした言葉のニュアンスも大事にしています。だからこそ、自分が(セリフを)言って「なんか、伝え方が違う」と感じたり、誰かに(違うと)言われると「それってどういう意味?」って考えちゃうとか癖になっているところはあります。
お芝居のことを考えつつ、「初めまして」の人がたくさんいる現場に飛び込むとなると、「この人たちに正確に伝えるにはどうしたらいい?」と考えることもありますし。自分の気持ちをちゃんとまっすぐに、でも相手に対しても失礼じゃない伝え方って何だろう、とか。
日々、常に考えながら過ごしてるから、「そんなに考えなくてもいいんじゃない?」みたいなこともあるよね。
奈緒:職業病でもあるのかもしれないですね。
私は、自分の言葉が、顔も名前も存じ上げない方たちにも思っている以上に届くっていうのは、この仕事を始めてからすごく考えるようになりました。
だから余計に、今までよりも考えちゃうところはあるかもしれないですね。
――永野さんが周りのことを考えているからこそ、共演者は飛び込んでいきやすいのでしょうか?
奈緒:そうだと思います。すごく考えてくれていて、見てくれているけど、それを見せない。芽郁ちゃんはそういう人だから、気が付くと私たちは飛び込んでいけるという感じです。
私は仲良くさせていただいているので、(普段、永野さんの)近くにいて「ここまで考えてくれたんだ」っていうことを、身に染みて感じるんですけど。やっぱり、そこは大きいですね。
――お互いの“優しさ”について話していましたが、お2人だからこそ知る「優しさエピソード」をぜひ教えてください。
永野:それはお互いの秘密です(笑)。
(改めて)優しいエピソードですか…なんかちょっと恥ずかしいね(笑)。ただ、大前提として、誰が見たって奈緒ちゃんは優しい人なんです。人のことを素直に褒められたり、良いところを言えたり、自分が「こう思ったんだ、楽しかったんだ」っていう話をすごくうれしそうに話してくれるんです。でも、それって本当に優しい人じゃないとできないことだなと思っています。
奈緒:今の芽郁ちゃんの「一緒にいると自分のことを好きになれる」っていうのは、私もすごく似た感覚があって。芽郁ちゃんと一緒にいると、「もっと自分でいていいんだ」っていうふうに毎回思えて。
会ってお話しして帰ると、「もっと自分に目を向けようとか、自分らしくいようとか、自分を大事にしよう」と、すごく思わせてくれるんです。
一緒にいるときもそうですし、きっといないときでも、(永野さんは)これまでに出会って大事だなって思う人を、すごく心から思って、相手の存在をすごく肯定してくれるというか。
私以上に私のことを考えてくれる瞬間があったり、自分を蔑ろ(ないがしろ)にしている瞬間を見逃さずにいてくれることもある。すごく優しくないとできないと思います。
「人に優しく」というのは、余裕があるときにはできることがあっても、芽郁ちゃんは大変なことや、いろいろな責任を抱えている中でも、常にそれができる方。
そういうところが芽郁ちゃんの優しい部分だなと思うし、一緒にいることで助けられている部分でもあります。
「自分で自分のモチベーションを上げられたら、すごくステキ」(永野)
――お2人が「人生をかけて守りたい存在」はいますか?
永野:私は「自分」てなっちゃいますね。自分のことを守れない人は、人も守れないと思っていて。まずは自分を大切にしていきたいなと思っています。
奈緒:私はずっと家族だと思っていましたけど、「家族の幸せって何だろう?」って考えると、やっぱり私が幸せでいることがすごく大事だなと思って。
守りたい人や、大事にしたい人はたくさんいるんですけど、芽郁ちゃんと同じで、その人たちを大事にするためにも、まず自分が幸せじゃないといけないなというのは、すごく感じています。
――自分を大事にしなきゃいけないなと感じるのは、どういったときですか?
永野:人を傷つけたり、救ったりするのも、結局人だなと思ってるんですけど。
人に期待したり求めたりする前に、まず自分で自分のモチベーションを上げられたら、すごくステキだなと思いますし、傷ついても、自分で自分を励ませる人になった方が強いと思います。
だから自分の1番の味方は、自分でいたいし、常に自分で何かができる人でありたいって思いました。なので、きっかけがあったというよりも、少しずつ歳を重ねてですかね。
奈緒:私は母と一緒に暮らしているのですが、お仕事が増えてきたタイミングで「(母が自分の)鏡だな」って気づいた瞬間があって。(母は)家にいて、違う時間を過ごしていても、私が疲れて帰ると、母も疲れているんですよね。
最初は「何で元気がないんだろう」と思っていたんですけど、「私が疲れてるんだ。私の元気がないから、お母さんも元気ないんだ。私が笑うと、笑ってくれるじゃん」っていうことに、気づかされる瞬間があって。多分そういう日々の、小さなことで(自分を大事にしなきゃと)強く感じるようになってきたと思います。
奈緒、永野芽郁とは「この先もずっと相棒」
――永野さんは本作で共演するにあたり、奈緒さんを「最高で最強の相棒」と表現していましたが、奈緒さんの最高な部分、最強な部分を教えてください。
永野:私にとってすごく挑戦的な作品だったんですけど、奈緒ちゃんがいたこと向き合うことが怖くなく、頑張れて乗り越えられたんです。
私にそう思わせてくれる奈緒ちゃんって、すごく最高で最強だと思いました。
――奈緒さんにとって永野さんは、どんな相棒ですか?
奈緒:「この先もずっと相棒」だと思いますね。もちろん出会った役柄の関係もありますし、今回も親友役をやらせていただきましたけど。今回また改めて、よりバディ感のある相棒といえる役柄でご一緒して、また欲が出てきちゃって(笑)。「また数年後、違う関係性でやりたい」と想像しちゃう自分がいて。
芽郁ちゃんとご飯を食べるときとか、結構、2人きりなんですよね。2人でしかできない話をずっとしたりとか、芽郁ちゃんとの間にしか生まれない会話があるので。「この先もずっと…」って、未来を思ってしまいます。
――例えば、一緒に過ごせる連休があったら何がしたいですか?
永野:旅行?ちょっと遠出したいね。
奈緒:自然があるとこがいいな。
永野:キャンプとかね。
奈緒:キャンプいいね!
永野:2人でお泊りしたことない、よね?
奈緒:ないね。
永野:お泊り会!
奈緒:お泊り会したいね。時間を気にせず話せるしね。
永野:好きなお酒を一緒に飲んで、美味しいご飯食べて、いいよね。
――キャンプに行ったら、何をしますか?
奈緒:魚を釣る。最近、捌(さば)き始めたから。家でめっちゃ捌いてるの、魚。
永野:すごいね!
奈緒:川魚だったら丸焼きにすればいいし。
永野:川魚の丸焼きは、私も食べたいって思っているけど、多分、食べたことない。
奈緒:そうなの?じゃ、そうしよう!それで。
永野:うん、それで!
――奈緒さんが魚を釣って捌いている間、永野さんは何をしますか?
永野:準備とあと片付けと…。
奈緒:1番大変なことを…(笑)。
永野:一緒にキャンプするなら、おしゃれで実用的なキャンプにしたいんで、そういう飾り付けや準備も、全部私がします。火起こしは、簡単なやつを使います。
奈緒:うふふふ。そうだね。
撮影:今井裕治
作品概要
ブラック企業に勤めるシイノトモヨ(永野)の元に、親友のイカガワマリコ(奈緒)が「マンションから転落死した」という衝撃的な報せが…。彼女の死を受け入れられないシイノでしたが、大切な人の遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立ってもいられず遺骨を奪いに行き…。
映画「マイ・ブロークン・マリコ」は、9月30日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国公開。
©️2022 映画「マイ・ブロークン・マリコ」製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA