みなさん。土曜の深夜、最高にヒドいドラマがはじまりますよー!!

あ、もちろんいい意味でのヒドいですよ。いい意味ってなんだよって話ですが。

冒頭から最後のオチまで全力でヒド過ぎて、「なわけねーだろ!」とか「うぜぇー!」とか一人でツッコミ入れながら笑いっぱなし。ここ最近の土曜の深夜はドン引きするか、眉間にシワが寄るかばっかりで(これもいい意味で)、たとえ笑ったとしてもあまりの衝撃で感情がバカになっちゃった末の笑いだったのに、今回は純粋な心からの笑い。だって、お花畑で全裸の塚地(武雅)さんがルンルン♪って、これもう爆笑とかシュールとか通り越して“ヒドい”としか言いようがないじゃないですか。だけど塚地さんの裸体がかわいらしくって、幻想的にすら思えてくるマジカル…それはつまり、愛すべきヒドさということでしょうか。

きっとこのドラマを見る前に想像するのは、『パパがも一度恋をした』というタイトルの“も一度”らへんから滲(にじ)むライトさ、「ある日、死んだママが、おっさんの姿で帰ってきた――。」というたった1行のあらすじからでも感じる珍妙さ、そして、その“おっさんママ”がドランクドラゴンの塚地さんというあからさまに“狙いにいった”感じでしょう。

だけどそのどれも間違いではないんですが、そのどれも想像の斜め上をぶっ飛ばしていくので、期待している方もそうでない方もどうぞ安心してオンエアをお迎え下さい。

特に前半に訪れる“ツカミ”が最高にヒドいんです。まず皆さんはドランクドラゴンの塚地さんが“おっさんママ”を演じる姿を想像してみてください。その時ちょっとニヤっとした人、もしくは若干失笑しちゃった人、どちらもいるでしょう。

だけどそんな想像、甘っちょろい!っと強烈な往復ビンタをくらわす目が覚めるほどのツカミが待っているのでお見逃しなく。まず、あまりにもヒドすぎるパロディで登場する塚地さんに左頬をひっぱたかれ、その興奮冷めやらぬうちに全速力で畳みかけてくる塚地さんに右頬をひっぱたかれます。そのツカミは開始4分ごろに訪れますが、その時、どうかモノを口に含まないでください。噴き出しちゃって、ドラマどころじゃなくなります。

また、そのシーンの“雷”に注目。これまでの「オトナの土ドラ」やその前身「昼ドラ」で登場した“雷”は、視聴者を驚かせてテレビ画面に向けさせる、“不穏”を意味する東海テレビ伝統の演出手法だったんですが、それがまさか今回は爆笑を促すための効果として使われているんです。50年以上の歴史を誇る東海テレビ制作ドラマの新しい歴史を作った、まさにエポックメーキングな作品と言っても過言ではないでしょう。

そしてヒドいのは何も“おっさんママ”の塚地さんだけではないんです。小澤征悦さん演じる主人公もヒド過ぎて最高です。妻に先立たれたことで消沈し、娘をほったらかして、仕事もしないで3年間引きこもるという、いくらコメディとは言っても全く共感できない主人公のはずなのに、突然反復横跳びをしてみたり、あまりにポエミーな遺書を達筆でしたためたりと、端正な顔立ちの小澤征悦さんが振り切って演じていることでよりアンバランスが強調され、なぜだか愛すべきパパに仕上がっています。

その他、個人的には強烈な風貌なのにないがしろにされる麿赤児さん演じるおじいちゃんにも注目ですが、画面に出てくる登場人物全員がふざけててヒドいのでどのシーンも気が抜けない仕上がりになっています。

で、次週予告も、“おっさんママ”がベッドで「やさしくしてね(ハート)」って、やっぱり最高にヒドい。見逃せるわけない。

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)