長江俊和監督『アイゾウ』ドラマ化の発端は「こんな結末が!?」という事件との出会い
11月22日(火)25時30分~第7話/11月29日(火)24時40分~第8話 火曜ACTION!『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』
話題のミステリードラマ『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』の長江俊和監督が、作品への思いを明かしました。
現在放送中の夏子さん主演、津田寛治さん共演のミステリードラマ『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』(フジテレビ)。
アメリカで実際に起きた衝撃の“男女愛憎劇をめぐるミステリー事件”を、「もし、今の日本で起きたら?」という視点でドラマ化。
夏子さん扮する刑事たちが、複雑怪奇な“愛憎”事件の真相を追及していきます。
連続ドラマ枠「火曜ACTION!」の第1弾として10月11日からスタートしましたが、半年前の3月29日に単発ドラマが放送されたのが始まりのこの作品。
放送後すぐに「面白かった!」「シリーズ化、希望です!」などの声があがり、放送後1週間の見逃し配信で、再生数20万回を超えるなど話題に。その後、連ドラとして“拡大”し復活しました。
その総合演出を手がけるのが、長江俊和監督。熱狂的なファンを持つフェイクドキュメンタリー『放送禁止』シリーズの生みの親で、『奇跡体験!アンビリバボー』『世界法廷ミステリー』(すべてフジテレビ)の再現VTR制作でも、映像手法が評価されています。
今回、長江監督にインタビュー。好評を博す『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』について聞きました。
制作で困ったら「実際の事件はどうだったんだっけ?」と、立ち返る
――単発ドラマが話題となり、半年後には連ドラ化が決まりました。
3月にパイロット版的に単発を作り、10月から連ドラ化という、結構なスピード感でした(笑)。単発が好評で、TVerでの再生回数もよかった、というのにも驚きましたが、うれしかったですし、手応えのようなものを感じました。
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単発を作るにあたり、主人公の刑事・安座間霧子(あざま・きりこ)役のオーディションをしたとき、集まってくれた俳優さんがみな「脚本がすごく面白かった」と言ってくれたんです。
安座間霧子は刑事なのに、恋愛体質で過去に上司をストーカーし左遷された…という設定も面白い、と。僕らおっさんは面白いと思っていましたが、若い女性から言ってもらえたことで、「ちょっといけるかもしれない」と感じていました。
――モチーフとなる事件は、長江監督が再現VTRを手がける『世界法廷ミステリー』がベースになっているそうですね。ドラマ化への経緯を教えてください。
『世界法廷ミステリー』のプロデューサーの荒木(勲)さんとは、ずっと仕事をしてきて、実録の愛憎事件なんかをもとに再現VTRを作ってきました。
そんなとき、フジテレビで企画募集があったので、そこにそういった実録をベースにしたドラマの企画を出したら面白いんじゃないかって話になりまして。
今まで『世界法廷ミステリー』や『奇跡体験!アンビリバボー』で、再現ドラマを作り、その中に実際の映像をはさむというのは何本もやってきましたが、ドラマだけでがっつり作るというのは、僕もやったことがないですし、今まであまりないんじゃないかな、と。
しかも、まさに“事実は小説より奇なり”で、「本当にこんな結末があるんだ」という実際の事件がたくさんありまして。そういうものを使えないか、というのが企画の発端ですね。
――アメリカなど海外の事件を日本に置き換えていますが、難しさはありましたか?
国の違いや、古い事件もあるので時代の違いもありますし、あと銃を使った犯罪も多いので、そこは置き換えますが、犯人の動機や事件の経緯はもちろん、細かいところもできる限り踏襲するようにしています。
シナリオを作る際も、面白くしようと脚色するのですが、いろいろ考えて困ったときには、「実際の事件はどうだったんだっけ?」と、事件に立ち返ります。“実際の事件原理主義”じゃないですけど、そこは大事にしています。
それと、事件には被害者…亡くなっている方もいますし、ご遺族や関係者といった悲しみや痛みを被(こうむ)った方々がいるので、下手にいじり回すものではない、とも思っていて。そういった方々の思いを損ねることがないように、ということは意識しています。
――一方で、凄惨な事件を描きつつも、クスッとできる部分があるのもこのドラマの特徴です。
猟奇的であり怖い事件を扱うからこそ、コメディの要素は重要で、そこを“狂言回し”的に、三人の刑事(夏子さん、津田さん、水石亜飛夢さん)のセリフのやりとりでできたらいいな、と思いました。
シナリオの諸橋隼人さんや橋本夏さんが絶妙に書いてくれていて、刑事役の三人もそこを意識して演じ、ときには、シナリオにないようなアドリブも加えてくれるので、いい雰囲気が出せているのかな、と感じています。
夏子の魅力は「勘の良さ」ディスカッションするほど「芝居がよくなる」
――夏子さんはオーディションでの抜擢だったそうですが、経緯と魅力を教えてください。
3月のパイロット版を作る際、オーディションをしたのですが、有名な方、キャリアのある方にお願いする選択肢もありましたが、それ以上にフレッシュで、世界観にハマる方を選びたい、という思いがありました。
オーディションには200人ほど応募があり、そのなかから50数人を選抜し面談したのですが、その最初が夏子さんでした。抜群の透明感、お芝居が上手だったことに加え、イメージしていた安座間霧子にぴったりだった。
その後、全員を見て、僕やプロデューサー、ほかのスタッフも、満場一致で夏子さんがいいということで決まりました。
全米が震撼した事件をドラマ化!夏子「生半可な気持ちでは負けてしまう」
夏子さんの魅力はいろいろありますが、僕が一番感じるのは「勘の良さ」です。ディスカッションすればするほどお芝居がよくなる。最初はお互い探り探りだった部分もありますが、こちらが提案したことに、すぐ応えてくれる適応力があるんです。
それを感覚的なところでやっているように見えるから、すごいな、と思っています。
――次回、放送になる第7話、第8話は連ドラの最終章となります。見どころを教えてください。
第6話までは、男女の恋愛がらみの“愛憎”事件がモチーフとなっていましたが、第7話、第8話は、ちょっと違う愛憎が描かれます。ある一軒家を舞台にした話で、想像できないような結末を迎えるんです。
それこそ「これが実話なの?」っていうほど、すごく奇妙な話、結末です。
そのラストも実際の事件をそのまま踏襲しているのですが、これをドラマ化しようと思ったとき、結末をそのままにするなら、最終話に持ってくるしかない、という話でして。ちょっと恐ろしい物語です。
安座間霧子もすごく手こずる事件ですし、そういった意味では今までと違った霧子の表情を見られますので、そこも期待していただければ、と思います。
――霧子がストーカーをしていた上司の村瀬警視正は登場しますか?
そこは、登場するのか、しないのかを含めて、楽しみにしていただければと思います。
監督自身が“愛憎”を覚えるものは?
――監督といえば、映画化もされたフェイクドキュメンタリー『放送禁止』シリーズの続編を待ち望む声も根強いですが、いかがでしょうか?
続編を期待してくださっている方も多いですし、僕自身もまた作りたいので、どういう形になるかはわからないですけど、やりたいな、という思いは持っています。
最後の作品から7、8年経って、社会の状況も変わってきているなか、『放送禁止』に向く題材もいろいろありますので、現代ならではの『放送禁止』を作ってみたいですね。
――ほか、今後手がけてみたいことはありますか?
テレビはもちろんですが、テレビ以外の映像制作もやっていきたいです。お金をたくさんかけてやるのではなく、自由に好き勝手できるようなもので、だけど、見たら、みなさんが驚いたり、ゾクッとするような仕掛けのあるものを、例えばゲリラ的に出していきたい、という思いはあります。
アイデアはありますし、実際にやろうと思っていることでもあるのですが。
――ゲリラ的なコンテンツはテレビでやるのは難しいでしょうか?
僕が…ということではないですが、テレビでもできるのではないでしょうか。特にフジテレビは、そういう新しいものを面白がってくれる人が多いと思いますので。
――最後に、『アイゾウ』にかけて監督が“愛憎”を覚えるものを教えてください。
ちょっといい答えかどうかわからないですけど、レビューですかね。小説にしてもドラマや映像作品にしても、褒めているレビューを見るとすごくうれしいですし、半面、けなされているものを見ると、まあ、落ち込みますよね(苦笑)。
ただ、辛辣なものを書いている人も、作品に触れてくれているわけだから、無関心よりはいいのかな、と思ったり。
さらにそれがすごく的確だったりすると、「なるほど!」と思い、次回作に生かしたりすることもあります。
だからやっぱり、感想をいただけるのはありがたいです!
長江俊和監督公式サイト:https://www.ne-bula.jp/nagae-web/index.html
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