初めまして。作家でタレントの篠原かをりと申します。好きなものは生物と観劇。得意なことは料理です。
現在は、日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程でミツバチとカイコの表象について研究しています。以前は、慶應義塾大学政策・メディア研究科で食と健康をテーマに分子生物学の研究をしていました。
この連載では、気になるサイエンストピックを身近な形で扱っていきたいと思います。
最近気になっているサイエンストピックは、「最強にカリカリな食べ物を作ること」です。料理は科学で芸術です。
昨年結婚して、料理は私が担当しています。とにかく食べ物をカリカリにして出すと夫が喜ぶということに気付いてから、昨日より今日、今日より明日、よりカリカリな食べ物を制作したいと思ってこのテーマを選びました。
最強のカリカリを目指す上ではカリカリとはなんたるかを理解することが必要だと思います。今回は「カリカリとは何なのか」について学んでいきたいと思います。
人間を魅了する「カリカリ」…その正体は?
時代・年齢・地域を問わず、「カリカリ」は人間の味覚を魅了してきました。
日本は比較的カリカリに出遅れた食文化を持っています。天ぷらはポルトガルから、唐揚げは中国からと、主な和食のカリカリは異国からもたらされています。
元々、自然界に存在するカリカリは多くありません。最も代表的なものが昆虫でしょう。独自のカリカリ食文化がない日本にも古くからカリカリとしたイナゴの佃煮があります。
カリカリ食感の数を爆発的に増やしたのが、調理という工程です。
調理によって、人類はより効率的により安全に栄養を摂取できるようになりました。即ち、カリカリとは人類が獲得した文明の音なのです。
調理することで様々な化学反応が生じ、新たなおいしさが生み出されます。
たとえば、糖が加熱変化することで褐色になり、カリカリとした食感を獲得し、豊かな香りを生み出す「カラメル化」。クレームブリュレの上のカリカリはこのカラメル化によるものです。
そして、糖とアミノ酸の反応によって生じるメイラード反応。こんがり焼けたステーキやカリカリベーコン、きつね色のパンケーキやサクサクのクッキーもこのメイラード反応によるものです。
さて、この辺りからさらに複雑に分岐します。
一口にカリカリと括られる食べ物でも、細かく見ていくとそのカリカリを支えるメカニズムは様々です。フライドポテトとクッキーと大学芋にはそれぞれ違う秘密が隠れているし、当然、唐揚げとカリカリ梅も違います。
次回はそれぞれのカリカリの秘密に迫るとともに、いよいよ学びを活かして最強カリカリレシピを考えていこうと思います。

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