竹野内豊さんが、映画の撮影での気づきを明かしました。
竹野内豊さん、山田孝之さんがW主演を務める映画「唄う六人の女」(石橋義正監督)が、10月27日(金)より公開されます。
本作は、竹野内さん演じるカメラマン・萱島と、山田さん演じる開発業者・宇和島が迷い込んでしまった森で、妖しくも魅惑的な6人の女たちと出会うことから始まるサスペンススリラー。
怖さと美しさ、強欲と慈愛、自然と人間、アートとエンターテインメント…表裏一体となりうるテーマを内包し、多層的でボーダレスな仕上がりとなった本作。
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冒頭から独創的で、謎が謎を呼ぶサスペンスフルな展開は、竹野内さんも「どんな撮影になるのか、想像がつかなかった」と話すほど。
2023年、映画「イチケイのカラス」、「シン・仮面ライダー」など出演作の公開が続く竹野内さんに、本作について聞きました。
<竹野内豊 インタビュー>
――最初に脚本を読んだ印象について教えてください。
感覚的な部分でしかとらえられないような脚本だと思いました。どんな撮影になるのか全然想像がつかなかったので、その分、クランクインするのがすごく楽しみでしたね。そこに飛び込んでいく醍醐味のある作品だなと感じました。
――撮影は、京都などの自然あふれる森の中で行われたそうですね。
石橋監督の作家性が強い作品なので、東京で脚本を何度読んで模索してもとらえきれていないものがあるような気がしていました。だから、実際にロケ地の大自然の中に入って、そこで感じる気持ちがすごく大事だろうな、と。
でも、撮影が終わるまで、作品や役柄についてしっかりとつかめていたかどうか自分ではよくわからないんです。その瞬間はやりきった気持ちがあって監督からOKが出ても、本当にこれでよかったのか、もっと何かできることはあったんじゃないかと思ってしまうときがあります。
以前、あるハリウッドスターの撮影現場に参加していたスタッフからうかがった話ですが、その方は、カットがかかるたびに、「今の演技、素晴らしかったでしょ?」というように、スタッフに対してポジティブなフィードバックを求め、それに対して周りも拍手で応える。
そういった光景をよく見かけていたそうですが、いつの日か自分もそんなふうに「満足できる演技ができた!」と思えるくらいになれたらいいですね。
今回の作品は、セリフひとつにしても監督が言葉の裏に込めたものを考えて、それをどう表現するべきなのか、試行錯誤しながらお芝居をしていました。
――東京の開発業者、宇和島を演じた山田孝之さんの印象を教えてください。
萱島が途中で原点に帰ることができた人間だとすれば、宇和島は人間の欲や滑稽さ、権力を感じさせる人物です。
山田さんとは一緒のシーンもありましたが、撮影中はそれほど会話をしていたわけではありませんでした。山田さんには独自の世界観がありますし、役柄としても互いにいい距離感で撮影できたと思います。
トラウマを抱える萱島に「何を言っているんだ」「しっかりしろよ!」と思ったことも
――“濡れる女”“撒き散らす女”など、一切言葉を発しない“唄う六人の女(桃果さん、萩原みのりさん、水川あさみさん、服部樹咲さん、武田玲奈さん、アオイヤマダさん)”との共演はいかがでしたか?
6人の女性たちは強さや弱さ、悲しみや悔しさというものを抱えた存在です。皆さんが監督とどのようなコミュニケーションを取ったのかはわからないのですが、それぞれに世界観を持って演じられていました。
セリフがないうえにあまり表情に出してはいけない役柄だったので、大変なところもあったのではないかと思います。実際に向き合ってお芝居をしてみると、あ、そう来るんだ、と思うこともあって。その都度、自分の芝居も変えていけたらいいなと思っていました。
――“刺す女”の水川あさみさんとは、これまでも共演していますね。
水川さんの指についたハチミツをなめあうというシーンがあるのですが、普段のよく笑う彼女のことを知っているので「目の前でそんなに色っぽい顔をしないでよ」と思ったりもして。
でも、自分が笑ってしまったらきっと彼女も吹き出してしまってアウトだろうから、我慢しなきゃいけなかったんですよね(笑)。
だけど、本当にいいお芝居をしていて、自分の目に映っている彼女のこの表情を観客のみなさんにも見せたいな、僕の肉眼がカメラだったらいいのにと思うくらいでした。
――萱島の年下の恋人・かすみを武田玲奈さんが演じています。
年齢的な違いを考えたら、ジェネレーションギャップもありますよね。最初にかすみ役を演じるのが武田さんだとうかがって、父と娘の役でもおかしくないなと思いました。
でも石橋監督の中で、この作品の中では人間社会で決められた道徳はあまり関係なかったのかな、と。これは僕の想像ですが、キャスティングも生物的な感性でとらえていたのかなという気がします。
武田さんは6人目の“包み込む女”と、かすみの一人二役を演じていすごく難しかったと思いますが、ふたつの役をしっかりと演じ分けされていました。
美しさの中に毒のようなものがあって、監督の中にインスピレーションが湧いた部分があったのではないかと思います。
――かすみは萱島のマネージャーでもあります。
脚本上ではかすみについて深掘りはされていないのですが、萱島はカメラマンとしてある程度の知名度があって、モデルをしていた彼女と出会ったのかな?と想像しました。
竹中直人さんが演じる地元の不動産業者の松根が「こんな若い子をつかまえて、罰でも当たったんじゃねぇのか」って言うシーンもありますよね(笑)。
――かすみとのやりとりの中から、萱島が抱えるものが見えてくるような気がしました。
萱島には父親と離れ離れになった幼少期のトラウマを抱えているんですよね。かすみは家族を作りたいと思っているけれども、萱島にはそれに対する怖さがあるんです。
客観的に脚本を読むと、萱島に「何を言っているんだ」「しっかりしろよ!」と思ったりもしましたけれども(笑)。
でも、自分が演じていく中で、萱島が抱えているものを出していけたらいいなということは、ひとつの課題でもありました。
かすみは宇和島や松根のような人間とは対照的な存在で、人間らしいところがある人ですよね。個人的には彼女のような日本人がこれから増えていったらいいな、という思いもあります。
――この映画で描かれている、萱島と父親の関係についてはどのようにとらえましたか?
萱島が4歳の頃に両親が離婚したということは、約40年会っていなかったわけですよね。けれどもある意味では、萱島は父親の存在によって人間が本来大切にするべきことに気づくことができたと思うんです。
今は情報があふれていて混乱してしまうような時代だからこそ、本能的な感覚が大事なのではないか。萱島にとっては亡くなった父親が、そのことを教えてくれる存在だったのだと思います。
――この映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
社会的な要素も入っている作品ですが、その奥には生命に目を向けたさらに深いメッセージが描かれていると思います。一緒に森の中に入って、それを探すような感覚でご覧いただけたらうれしいですね。
「唄う六人の女」を観て感じたことはどれも間違いではないですし、もしも何かを見つけてもらえたら、この映画を作った意味があるのかなと思っています。
撮影:山越隼
取材・文:細谷美香
スタイリスト:下田梨来
ヘアメイク:竹野内宏明
<作品情報>
出演:⽵野内豊 ⼭⽥孝之/⽔川あさみ アオイヤマダ 服部樹咲 萩原みのり 桃果 武⽥玲奈
⼤⻄信満 植⽊祥平 下京慶⼦ 鈴⽊聖奈 津⽥寛治 ⽩川和⼦/⽵中直⼈
監督・脚本・編集:⽯橋義正
脚本:⼤⾕洋介
⾳楽:加藤 賢⼆ 坂本 秀⼀
制作プロダクション:クープ コンチネンタルサーカスピクチャーズ
制作協⼒:and pictures
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
©2023「唄う六⼈の⼥」製作委員会
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