3月3日(水)放送の『林修のニッポンドリル 開かずの金庫3つ連続解錠&「瞬足」大ヒット物語』では、人気企画「大ヒット商品のナゾ」を放送した。

1957年、玄関で靴を脱ぐ日本の文化を学校現場にも取り入れようと、誕生した上履き。戦時中からゴム製品を扱っていた「アキレス株式会社」は、その技術を生かして、子どものための運動靴、なかでも上履きの製造に力を入れていた。

アキレスのまぶしいほどに純白だった上履きは、新1年生にとって憧れのアイテムだった。しかし、清潔感を表すその白い上履きが、アキレスの首を絞めることに。ライバル会社が、ゴム部分に色を付けたカラー上履きを発売したのだ。すると、アキレスの上履きの売上は激減。

そこでアキレスは、「デザインは一過性のもの。良いものさえ作っていれば、いつか子どもたちもわかってくれる」と、ゴム技術をいかした機能性で勝負に出る。

当時の上履きは雨の日に滑りやすかったため、シンプルな靴底を一新し、雨の日でも滑りにくい安全性の高い上履きを開発。だが、性能の高さがユーザーに伝わらず、シューズメーカー業界の5番手に沈んでしまう。

窮地に立たされたアキレスは、上履き以外の商品で勝負するため、1999年、営業部員の津端裕氏に“新たな運動靴”の開発を命じた。

会社の命運をかけた、いままでにない新しい運動靴の開発。商品開発のノウハウがない津端氏は、登下校中や運動会などで子どもが履いている靴を片っ端から撮影してヒントを探そうとしたが、なかなか突破口は見つからなかった。

しかしある時、6000枚以上も撮影した写真の中に、運動会で転んだ子の姿を発見。津端氏は、「運動会で足を滑らせずに走れる靴」の開発を思いつく。

活用したのは、かつて開発した雨の日に滑りにくい上履きの技術。校庭のトラックが左回りであることに着目した津端氏は、左カーブで転びづらくなるように左右非対称の靴を考案した。

2003年に「瞬足」というネーミングで売り出されたこの商品は、靴底を見せる斬新なディスプレーなどが話題を呼び、初年度の24万足から、2004年に70万足、2005年には159万足と、驚異的な売り上げの伸びを記録する。

そして、2011年に放送されたドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ)の中で、芦田愛菜と鈴木福が全編を通して「瞬足」を履いた効果もあり、2012年には、617万足を売り上げ、統計上、小学生の2人に1人が履いている計算になるほどの大ヒットを達成したのだ。