“目の保養”となるようなイケメンを紹介する「眼福♡男子」Vol.50は舞台、映像と幅広く活動する猪野広樹(いの・ひろき)が登場。
舞台で活躍する若手俳優の中で、トップクラスのキレとスピードを誇る彼のダイナミックな殺陣は、観る者の心を瞬時に鷲掴みにする。そんな彼が今回、扮するのはシリーズ5度目の上演となる「『双牙~ソウガ~』新炎」の主人公・オウカ。
固い絆で結ばれたもう一人の主人公・ツムギ(伊崎龍次郎)との友情をどのように表現しようと思っているのか、そして、今回のアクションの見どころは。また、多忙な彼を癒やす日常のワンシーンについても尋ねた。
猪野広樹ならではの、深みが加わったオウカをつくり上げたい
――5度目の上演となる本作ですが、どんなところに魅力を感じていますか?
魅力は“義”でしょうか。そして友情。シンプルなテーマだからこそ丁寧に演じないとダサいものになってしまう可能性があるので、そこはきちんと突きつめないといけないと思っています。
――今回演じるオウカの印象を聞かせてください。
台本を読む限り口も悪いですし、一人で突っ走ってしまうような性格。これまで4回上演されている作品ですので、過去のオウカと似た感じになってしまうのはイヤだなと。個人的に二面性のあるキャラクターが好きなので、僕なりの+αを考えています。
――今回の座組の印象を聞かせてください。
最も若いメンバーで24、25歳と、意外とオッサンな座組なんですよ(笑)。そんな僕たちが活劇をやったら、こんなに面白くなるんだよということをアピールしたいです。オウカというキャラクターは、若い役者が演じたほうが、より勢いが出るんでしょうけど、それだけにしたくないという思いもあるので、オッサンならではの重厚さが光る作品にしたいです。
――W主演を務める伊崎さんとは、1、2月に上演された「GHOST WRITER」から引き続きの共演となりますね。
龍次郎とは年齢も一つ違いですし、目から伝わってくる熱さがあって、その情熱をきちんとキャッチしたい、互いに刺激を与え合いたいと思っています。龍次郎が演じるツムギと僕が演じるオウカの絆を、笑えるところは面白おかしく、そして、切ない場面ではよりせつなく表現したいです。
――今回は、かつてオウカ役を演じた町田慎吾さんが演出を担当することも話題ですが、町田さんの演出はいかがですか?
パネルを使ったり、布を使ったり、パルクールをとり入れたりとゴリゴリのマンパワーに溢れています。カッコいいセットになりそうですし、照明にもとてもこだわられていて、劇場に入るのが楽しみです。僕は今回の出演にあたって、過去の映像等を一切見ていないんです。見てしまうと影響されてしまいますし、猪野広樹ならではのオウカをつくり上げたいです。
刀を持った僕は最強!4年間連戦連勝です
――「GHOST WRITER」の演出家・西田大輔さんが猪野さんの立ち回りの動画をSNSで紹介していましたが、スピードに驚いてしまいました。
あの立ち回りはラバー刀を使っているのであそこまでのスピードが出せるんですけど、今回は竹光を使用していて、下手したら折れる可能性もありますし、相手にケガをさせてしまってはいけないといつも以上に気を使わなければいけません。とはいえ、“スピード大好きマン”なので、共演の皆さんとの間合いに慣れてきたら、どんどんスピードを上げていきたいです。
――殺陣に関して、「若手で最も動ける俳優のひとり」と言われていることにはどう感じていますか?
刀に関しては、確かに同世代の役者に負けてないという自信があります。でも、それは刀だけであって、アクロバットなんかはできないんですよ。
――「最強の矛」と名高いオウカですが、猪野さんが最強になれるのはどのような時でしょう?
刀を持った時ですね。もともとはそこまで得意じゃなかったんですけど、戦い続けたらこうなりました。もう連戦連勝ですよ(笑)。4年前に出演した舞台『刀剣乱舞』義伝 暁の独眼竜からずっと戦ってるんじゃないかな。それなのに、なぜか痩せないんですよね。
舞台に立っている時間だけは、演じられる幸せを噛みしめたい
――立ち回りはかなり体力を消耗すると思いますが、普段の食事はどうしているんですか?
ほぼデリバリーです。だって作るの大変じゃないですか。
――確かに稽古や本番を終えて帰宅した後に料理をするのは、大変な労力ですよね。健康や体調管理のためにやっていることは?
乳酸菌飲料を摂取しまくって、腸内環境を整えるようにしています。そして、睡眠をしっかりとります。
――肉体的にも精神的にもより神経質にならざるを得ないと思いますが、昨年から続く新型コロナウイルスの影響を受け、エンタメ界の現状について考えたことはありましたか?
テレビをつけたら暗いニュースや憤りを感じることばかりで、いろいろ考えさせられてしまいますよね。「双牙~ソウガ~」というのはフィクションですけど、オウカやツムギのような人たちが現代にいたら、人々の生きる希望になれたのではないか、こういう人たちにこそいてほしかったと思うんですよ。
お客様もまだまだ安心して観劇できる状態ではないと思いますが、それはステージに立っている僕たちも心境的には同じで。それでも観劇中、お客様にはイヤなことを忘れて楽しんでほしいですし、その時間だけは幸せなひと時であってほしい。僕たちも同じように、演じている間は世の中のいろんなことを忘れて、演じられる幸せを噛みしめたいです。
温かくてほっこりする光景を目にした時に、生きていることを実感する
――エンタテインメントに携わる方ならではの願いですね。多忙な毎日が続いていると思いますが、今最も楽しいのは何をしている時ですか?
最近、ギターの練習を始めたので、その時間が一番楽しいです。芝居から離れている時間が最もリラックスできます。
――ギターをやろうと思い立ったきっかけは何だったんですか?
先輩からいただいたんです。自分から積極的に弾きたいというものではなかったのですが、いただいたからにはやってみようと、弾き始めたら楽しくなっちゃって。ようやく指も痛くなくなってきて、今はDISH//の「猫」を練習中です。
――ファンの皆さんの前で披露する機会などは考えていますか?
まだ人様の耳にお届けできるレベルではないので、ゆくゆくはという感じですね。もっと頑張ります。
――そんな猪野さんにとって、眼福な存在は何ですか?
温かくて、ほっこりするような光景が好きなので、公園でピクニックしている家族連れや、バッグからネギが飛び出している人を見た時に眼福を感じます。
――猪野さんもネギをバックからのぞかせて、街を歩くんですか?
刻みネギは配達員さんが持ってきてくれますからね(笑)。最後に買ったのは、去年のハロウィンあたりです。
――早いもので2021年が始まって3ヵ月が経ちました。今年の展望を聞かせてください。
昨年は仕事の比重が大きくなり過ぎてしまったので、2021年はプライベートの自分を大事にする時間を設けようと考えています。今、体力的なことで限界を感じているので、一度リセットしようと。
――ずっと戦い続けてますからね。
殺陣ってとても緊張するんですよ。自分はもちろん、相手にもケガをさせてはいけないし、刀を客席へ飛ばしてしまってはいけませんから。4、5年もよくやってると自分でも思いますよ。今年は計画的に少しゆっくりしようと思います。
――公演を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
決して若くはない座組がプライドをもって作品に臨んでいるので、重厚な作品になると確信しています。殺陣もパルクールもすべてマンパワーで、生身の人間の底力をお見せしたいと思っているので、皆様には健康面に気をつけつつ、お越しいただければと思います。
<あらすじ>
領土は小さいが豊かな経済力をもち、他国の侵略を許さない椎名家で、「椎名の矛」と呼ばれる武将・オウカと、「椎名の盾」と呼ばれる軍師・ツムギ。2人がいる限りは安泰と思われた椎名家に、日本の3分の1を手中に収めたゲンシュウ軍が襲来。城内が混乱に陥る中、オウカとツムギはバラバラになってしまう。1ヵ月後に再会したⅡ人は、敵同士となっていた
「『双牙~ソウガ~』新炎」
3月5日(金)~14日(日)シアター1010
演出:町田慎吾/脚本:羽仁修
公式サイト 公式Twitter:@souga_2021
撮影:河井彩美