目にも麗しいイケメンを紹介する「眼福♡男子」Vol.51は、映像をはじめ、多くの舞台作品でも活躍する水田航生(みずた・こうき)が登場。

現在、出演中のミュージカル「GHOST」は、1990年に公開されたパトリック・スウェイジ&デミ・ムーア主演の映画が大ヒットを記録。ろくろを回す2人のせつないシーンが世界中で感動を呼んだ。

そんな作品をミュージカル化した本作で水田が演じているのは、銀行員のカール。主人公・サム(浦井健治)とは親友でありライバル。しかし、その素顔は…というキーパーソンに扮している。

誰もが知る名作にどのような思いで挑むのか、そして、昨年末に30歳の誕生日を迎え、これからますます脂がのってくるであろう30代の展望を尋ねた。

カールは人を妬む気持ちが強いけれど、最も人間味がある人物

――まずは「GHOST」にまつわる思い出から聞かせてください。

映画は両親の影響で週に2、3回観ていた時期もありましたし、ミュージカル版はブロードウェイと韓国でも観たぐらい、僕にとってとてもなじみ深い作品です。

――ミュージカル版の日本初演が2018年。カール役を、水田さんと同じ事務所に所属する平間壮一さんが演じましたが、今回の出演にあたり、平間さんと話したことはありますか?

壮ちゃんとは長いつき合いですし、つい先日、インスタライブも一緒にやったので、その時に少しだけ話を聞きました。彼の性格上「アドバイスなんて恥ずかしくてできないよ」と言っていましたが、カールの人物像や当時の稽古場の雰囲気、演出のダレン・ヤップがどういう人なのかを聞かせてもらいました。壮ちゃんが「とてもやりやすい環境」と言っていたように、稽古場に入って居心地のよさを実感しましたね。

――カールという人物からはどんな印象を受けましたか?

自分が演じることになってから、より深く考えてみたのですが、人間の悪いところや目を背けたくなる部分が前面に出ていて、ある意味最も人間味がある人物だと感じました。そして、だからこそ観ている人が一番共感できるんじゃないかって。人を妬む気持ちや、人がもっているものを羨む気持ち、野心が人一倍強い人物ですね。

――憧れと嫉妬って実は紙一重ですよね…。

そうですね。すごくいい表現をいただきました(笑)。憧れる気持ちが強ければ強いほど、愛情が愛憎へと変化し、その人を妬む気持ちが膨れ上がっていく。カールの場合も、サムに対してそんな思いを抱えていたから、ああいう行動に出たのかもしれません。

――ちなみに水田さん自身は、自分よりも実力が上の人を目の当たりにした時、どんな感情を抱きますか?

めちゃめちゃ嫉妬しますよ。嫉妬のあまり、テレビをつけるのもイヤになることがあります(苦笑)。

――芸能界は特にそういう感情が渦巻く世界ですよね。

本当にそうですね。自分と同世代ぐらいの役者が出演しているドラマなどを見たら「この人が出ているのに、なんで僕は出ていなんだろう?」と。それがいい作品、いい芝居をしていたらなおさら「クソー」と思いますし、同時に「スゴいなぁ」と感心もします。

でも、そういう生々しい感情こそが人間だと思いますし、逆にその気持ちをなくしてしまってはいけないんじゃないのかなと。悔しいと思う気持ち、向上心こそがまだまだ役者としてやっていきたいと思うバネになるのかもしれません。

語りかけてくる不思議な夢をみることが多い。この間も銀の龍が湖から…

――今回、森公美子さん以外の方とは初共演だそうですが…。

森さんとは2012年の「地球ゴージャス『海盗セブン』」でご一緒させていただいたんですが、浦井さんもモリー役のWキャスト・咲妃みゆさんも桜井玲香さんも初めての共演なので、とても刺激的です。

――浦井さんと水田さんが初共演とは、とても意外です!

そうなんですよ!浦井さんとも話したんですけど「実は初めてなんだよね」って。共通の知人が多いからか、勝手に共演した気になっていたのかも(笑)。この間も、浦井さんと高橋一生さんの話題になって「一生さんがよろしく言ってたよ」って。そうやってどんどん輪が広がっていくことがうれしいですね。

――稽古を重ねる中、浦井さんのどんな部分に魅力を感じましたか?

浦井さんが稽古場にいると雰囲気が和らぎますし、華やかなんですよ。シリアスな場面の稽古で空気が張りつめていたり、うまくいかなくて行き詰まったりした時など、ピリッとする瞬間もあるんですが、浦井さんがいることによって中和されて、向上する何かが生まれるのは、彼ならではのソフトな空気からきているのだろうと。柔らかさこそが魅力ですね。

――本作においてはサムとカールの関係性がとても重要だと思うのですが、どんなふうに表現したいと考えていますか?

実際の浦井さんと僕は約10歳離れているんですけど、お芝居になると年齢差が近づくというか、日本の兄弟よりも海外ドラマに出てくるバディやブラザーのような空気になるんです。同志であり、良きライバルであり、親友。そんな雰囲気が稽古序盤から自然とできていたので、本番でもそのまま表現できるといいなと思います。

――劇中、亡くなったサムがゴーストとなってモリーの前に現れますが、ゴーストの存在は信じますか?

信じます。一番大事なのは、「(ゴーストが)“存在する”と思っている人がいること」だと思うんです。たとえ、肉体は滅んでも、関わった人たちの心に残っていればその人の魂は生き続けるって言うじゃないですか。それこそがゴーストなのかもしれないし、永遠に居続けるんでしょうね。

――さらに、映画のラストではコインが宙に浮かぶ感動的な場面がありましたが、そういう奇跡的な体験をしたことはありますか?

僕は不思議な夢をみることが多く、予知夢なのか夢が僕に語りかけてくるんです。夢の中で誰かがしゃべっていたことが強く印象に残っていたり、誰かの話を真剣に聞き入っていたり。自分の精神状態が反映されることが多いので、その後には夢占いなどもよくします。

――特に印象的だった夢について聞かせてください。

先日、出演した「東京原子核クラブ」という舞台の開幕前のことなのですが、このご時世、ちゃんと幕が開くかどうか、千秋楽まで上演できるかどうかわからない状態じゃないですか。そんな不安を抱えていた時期だったからか、夢の中で僕は湖畔にいて、ボートに乗っているんですよ。そうしたら水面から銀の龍がブォーッと出てきて舞い上がり、その様子を共演のみんなで見上げているんです。

その夢をみたときに、「この作品、全公演できる!」と確信がもて、そして、実際に千秋楽まで続けることができた。何の根拠もない自信みたいなものを夢から受け取ることができたんですよね。調べたら、昇り龍には吉報が舞い込むという意味があるそうで、これはうれしかったですね。

朝、カーテンを開けて青空を見た時に、「幸せ」と感じられる自分が好き(笑)

――ここからは水田さんの素顔について聞かせてください。昨年末、30代へと突入しましたが、20代をどんなふうに過ごしましたか?

激動でしたし、あがきました。30代もきっとあがくんだろうなと思います。でも、そのあがき方自体も年齢を重ねるごとに変わっていったんですよ。経験一つ一つに“気付き”があり、成長していけた20代だった。正直、近道はできなかったし、20代のうちに気づけたらよかったと後悔することもありました。でも、人生を振り返った時に、遠回りはしたけれど、それは確かな軌跡として残っている。グルグルしていた道がとても有意義な時間だったのではないかと30歳を迎えた時に思えたので、遠回りは無駄ではなかったんじゃないかな。

――30歳に早くなりたかったですか?それとも、20代のままでいたかった?

早くなりたかったです。26、27歳ぐらいからもう30代の気持ちでいたので、実際、30歳になった時に「あぁ、30だ」とは思わなかったんです。いざ、なってみたら心地がいいというか、男として、人間としてちゃんと存在しなきゃと覚悟がもてました。

――30代をどんなふうに過ごしたいと考えていますか?

いろいろ迷っていた20代は、物事に対して自分なりのカッコいい理由をつけたかったんですが、30歳になってから考えがどんどんシンプルになっていって。小学生みたいな発言になってしまいますが(笑)、楽しく幸せに過ごしたい。ただそれだけですね。

以前はいろんな言葉を用いて理想を語っていたのですが、僕は単純に幸せになりたいだけなんだと気づいて。「人は何のために生きてるんだろう?」などと考える時期もありましたが、行きついたのは幸せになりたいから生きている、僕はそれでいいんだということ。日々に幸せを見いだせる、そんな1日を重ねていくことが生きている意味なんだと思いました。

浦井さんが、「僕たちが幸せというギフトを配り歩くことで、その人たちからお裾分けをいただける」と話していたんですが、そんなふうに幸せを分け与え、そして、自分も幸せを感じられる穏やかな30代を生きたいです。

――今を楽しめていますか?

楽しいです。毎日ちょっとした幸せを発見することができていますし、10代よりも有難さを実感することが増えました。朝、起きて、パッとカーテンを開けた時に青空を見ただけで「俺は幸せだ」と感じられる自分が好きです(笑)。

芝居をしている時に「僕は生きている。役者って楽しい」と実感できる

――今、最も楽しいのは何をしている時ですか?

ちょっとカッコつけた言い方になってしまいますが、芝居をしている時が楽しいんですよ。稽古場で本読みをして、自宅で台本を読みこんで、稽古場で初めてそのシーンを演じ、自分のセリフを聞いてもらった時、文字でしかなかった言葉を目の前の人が発して、言葉として耳に入ってくる。そして、それをお客様に観てもらえる。その一つ一つが楽しいです。あぁ、生きてるな、役者って楽しいなと思う瞬間がそこです。

――「生みの苦しみ」みたいなものはありませんか?

もちろん大変さはあります。でも、その苦しさ、大変さより楽しいと思う感情が勝るんですよ。先ほどもお話した舞台「東京原子核クラブ」ですが、専門用語ばかりで、さらに、膨大なセリフの量だったんです。演出のマキノノゾミさんからは、ミリ単位のさじ加減の芝居を要求されて、「うわー、どうしよう、どうしよう」と焦るけど、一歩引いたところでは楽しいって(笑)。「大変な思いをしている自分、めっちゃ幸せ」みたいな矛盾を感じたんです。きっとドMなんでしょうね(笑)。

――では、コーナー名「眼福♡男子」にちなんで、水田さんの眼福な存在は?

それはもう甥っ子しかいません。最近、兄に2人目の子どもが生まれまして、甥が2人になったんですけど、今の時代すごく便利ですね。写真をアップしたら登録している全員に送られてくるアプリをダウンロードして、その名も「みてね」というものなんですが、毎日更新されていくんですよ。毎日その画像を見るだけで、ただ寝顔だけで叔父さんは「今日も1日頑張ろう」という気になれます。

そして、貢(みつ)いでます(笑)。完全な“叔父バカ”ですね。Amazonで一番高いオモチャを買い与えることに喜びを覚える、ダメな叔父です。でも、今後も甘やかしまくりますよ。両親は厳しくしないといけないかもしれないけど、叔父さんに責任はありませんから(笑)。

夢は、20歳になった甥っ子たちから「航生叔父ちゃん、寿司が食べたい」と言われ、「いいぞ」って「ザギン(銀座)でシースー(寿司)」という昭和的なことを、この令和の時代にやること。そのためにももっと頑張って、財力を身につけないといけない。あと20年しっかり稼がないと、ですね。

――今年も早いもので3ヵ月が過ぎました。今後の展望を聞かせてください。

2020年は世界中が大変な思いをし、皆が暗い気持ちになってしまったと思うんですけど、その中で前に進んでいく活力や、手と手をとり合っていくことの重要さが沁みた年になったと思うんです。2021年は昨年できなかったことを実現していく年だなと。

もちろん、まだまだ実現できないこともたくさんありますが、一歩踏み出す勇気など僕たちはたくさんの人に与える側のお仕事なので、よりポジティブな影響を与えることを念頭において、過ごしていきたいです。そして、それを実現することで自分自身も何かを発信していくことにつながると思うので、しっかりと精進したいですね。

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撮影:河井彩美