<コラム>フジテレビ『シグナル 長期未解決事件捜査班スペシャル』
(劇場版へ向けてどう終わらせるのか…というイヤらしい視点)
緊迫感が半端ない、三枝(坂口健太郎)VS石川(青木崇高)の、
“上杉胡桃(桜井ユキ)殺害事件”に関する取調室での攻防戦!!
完落ち寸前だけどなかなか落ちない石川…
三枝「あなたが彼女の部屋で何をしたのか、そのすべてを証明します!」
扉、バンッ!
胡桃「あなたが殺したのは私じゃないッ!秋川理保よッ!!!」
うろたえまくる石川
フゥ~!!これぞ、カ・タ・ル・シ・ス!!
三枝「中本管理官(渡部篤郎)を殺したのもあなたですね!」
石川「“あの銃”は…、この世にもう存在しないんだ…。ヒャー!(高笑い)」
キィィィィーーーーーー!!!一回、こっちを気持ちよくさせといて、この続きは劇場版へ…って手法ね!!クソゥ!!なんて戦略!!うん、だけど…それも、間違ってない!!テレビだってビジネスだよ!!!乗った!その戦略、俺も乗った!!見るしかねぇだろ!おんどりゃあ!!!
事件の真相があまりにも凄まじすぎて、その攻防戦も凄まじすぎて、
すっかり忘れてたこのドラマの肝…“過去と交信ができる無線機”…大山さん(北村一輝)と繋がる…
大山「俺が“その拳銃”を、見つければいいんですね!」
大山さん、あからさまなひょうきん走りで“あの銃”、発見!!
“20年前の”石川を見事に逮捕!!
そういうこと!?今、そこと、そこ、繋がるのね!?!?なんてビューティフルエンド!!!美しすぎる!!カ・タ・ル・シ・ス!!って一瞬、ぬか喜びさせといて、若干のガッカリ感を味わわせ、だけど、それでも映画見るよ!!見りゃあいいんだろ!!って逆ギレさせといての、ビューティフルエンド!!素晴らしい!!テレビ視聴者ファースト!ありがとうカンテレさん!!もうこんなに楽しかったんだもん、そりゃあ、だから、僕も、劇場版、素直に…、見るね(ハート)
どうしたってうまくいきそうにない“封筒”を持って告発を試みる大山さん
なんか、やばい…大山さん、やばい…絶対やばい…あんなアホみたいなデカ文字で出版社名書くやついるかよ!…うん、だけど、それでこそ、大山さん!!
人気のない鉄橋上
ドーーーーーンッ!!!
銃弾に倒れる大山さん
えーーーーーーーッ!!!???
獄中自殺した…?
…え!?見せかけられた?石川…
デカデカと出版社名が書かれた封筒…川に沈む…
23時23分…再び無線機が交信…
「このドラマはフィクションです。」
行くしかねーーーッ!!映画館行くしかねーーーッ!!
っというわけで(?)クライマックスだってのに、僕の邪念でしかない視点に長々とお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。
うん、だけど「劇場版はどうなるの?」とか、そういう視点は邪念だとしても、視聴者の皆さんがこのスペシャルから感じた衝撃と興奮は、粗方そんな感じ…、だったと思います。…だって、もう…、すっごかったもんね!!?
まずホントに申し訳ない話。僕、前回の連ドラ版『シグナル』、面白かった記憶はあるし、ちゃんと最後まで見てたはず…ではあるんだけど、ほっとんど覚えてなかったんですよ。最終回、怪しい音楽をBGMに、車乗った三枝の上空映像と、「えー!そこで終わるのーーー!?」って絶叫した自分、それしか記憶になかったんです(ひどい記憶…だけどさっき見返したら、だいたいは合ってた)。
そんな僕だってのに、冒頭の前作振り返りによって、“過去と交信できる無線機”の存在(もうそれすら忘れてるひどさ)、過去が変わると現在のホワイトボードに書かれた文字がガタガタ揺れながら更新されていくという斬新さ(これこれ!この衝撃に3年前、興奮したんだった!!)、過去パートの大山さんの少年っぽさ(この北村一輝さん新鮮で、すっごく良かったよね!…忘れてたくせに)、桜井さん(吉瀬美智子)という超重要人物が突然爆死するというハードさ(あれにはビビったよね。あんなあっさり重要人物が爆死って…ないよね…もちろん、その未来は変わったけど)によって、『シグナル』の思い出がみるみるよみがえる…、んだけど、そんな思い出に浸ってる隙もなく、”“20年前の自殺したはずの恋人探し…”という興味深すぎる事件を捜査することとなり、だからいい感じで“過去と交信すること”で事件解決へ導くというこのドラマのアイデンティティーも発揮させ、だけど新しい事件だけじゃなく、ちゃんと連ドラ時代の物語…管理官の死と、その濡れ衣を着せられた大山の行方も、並行して動かしつつ、そこへ浮かび上がってきたのが今回のキーマン石川で、それがまた超胸糞悪い最低な奴で、そうは言ってもその手ごわさと吸引力によって最後まで見届けてやる!という気持ちにもさせ、“ドイツ書”、“駆け出し女優”、“ドナー”、“MD”…と散りばめられた点が、どんどんラストに向かって繋がっていく…その展開に気持ちよさを覚え、そもそも過去と未来という時間軸に加え、連ドラ時の物語も進行させる…って、もうそれだけで十分ややこしいのに、事件の真相が、実は、20年前に自殺したと思っていた恋人=上杉胡桃は、ホントは生きていて、あの時殺されたのは…秋川里保でした!!っていう、上乗せしてくるややこしさ!!
だけどだけど、それをなんら混乱させることなく、丁寧にわかりやすく、深みも与えつつ視聴者を導き、加えて取調室での“攻防戦”の面白さも今回は十二分に出しちゃったりなんかして、最後は圧巻のビューティフルエンド!!とか思ってたら、絶妙な塩梅で劇場版へと繋げる…。…って、…作った人、凄ない?普通、映画化ッ!!って鼻息荒くなって、そのスペシャルドラマも大概荒くなっちゃいがち…(どのこと言ってる?)なはずなのに、なんて冷静に、だけど視聴者は興奮できちゃう!そんなエンターテインメント!!に仕上げるって、凄ない!?こりゃ、もう、劇場版、どうしたって、気になっちゃうよね!?
…うん、だけど、最後に、一個だけ、一個だけね…言わして…。
秋川さんが、不憫すぎる!!!
キャラクター的にもセリフはほぼなかったし、中盤、殺害シーンが流れたとき、秋川さん、なんでそこで寝てた!?なんで胡桃さんちで寝てた!!!え!?僕、見逃した?って結構前まで巻き戻しちゃったよ…。だけどやっぱり謎だったし、そしたら、その後ちゃんと描かれた(そらそうだろ)秋川さんの悲惨すぎる末路…。で、最後の最後、未来が変わった胡桃さんは、あの時恋人だった武田さん(古川雄輝)と結婚し、子供も生まれましたとさ…って、やっぱり、どうしたって、秋川さんが、不憫すぎる!!!あの“未来が変わった”は、一見ハッピーエンディング!ではあるけどさ、おそらく胡桃さんも一生秋川さんのこと、背負いながら生きていくんでしょう…ではあるんだけど、そうなんだけど、そうだとしたって、秋川さん、不憫すぎるよ!!!
なんで、あの時…、胡桃さんちへ行って、先に寝ちゃったのよ…。そして、そこへ偶然現れてしまった、石川…。あぁもう、悲惨すぎる…。うん、だから、このレビュー読んだ人だけでもさ、劇場版はさ、きっと秋川さん出てこないんだろうけどさ、関係してこないとは思うんだけどさ、このスペシャルは、秋川さんのおかげで、ドラマを楽しませてくれた!!とこあるんだからさ、僕らは、秋川さんの思いを胸に、劇場版、見に行こうぜ!!そうじゃないと、秋川さんというキャラクターが…、浮かばれないよ!!
あー、もうこんな具合の面白さだったら、映画の後、もっかい、ドラマで、戻って来ても…いいんだぜ?…もうお前のこと(=『シグナル』)、忘れないからさ!!!!
text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)