高岡早紀の怪演が話題を呼んだ『リカ』(2019年10月~11月)の前日譚となる『リカ〜リバース〜』(2021年3月27日~4月3日放送)。

『リバース』では、リカを演じた高岡が、リカの母親である麗美を演じ、「死ねばいいのに」「28歳」などの“名ゼリフ”や“お約束”を散りばめながら“純愛モンスター”=リカの誕生秘話を描き出した。

『リバース』に続き、6月18日には『リカ』の続編となる映画「リカ〜自称28歳の純愛モンスター〜」も公開決定と、ますます注目度が上がっている『リカ』シリーズ。

中毒性の高い本作の魅力を、ドラマが大好きな編集&ライターの信子(自称28歳!?)と、ライターの庸平(現在38歳)がネタバレ満載で語り合った!

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信子&庸平のドラマ対談『リカ〜リバース〜』編>

左)信子は、編集・ライターとして当サイトをはじめ多くのメディアで取材、執筆中
右)庸平は、当サイトの試写室でもおなじみのドラマ通ライター

――高岡早紀さん演じる麗美の双子の娘(山口まゆ、田辺桃子)のどちらが、後のリカになるのか…という謎を軸に突っ走った全3話。エンディングまで見た今の感想は?

信子:期待を裏切らなかった!今回も怖かったですよね〜。

庸平:<試写室>でも書きましたが、最初はこのドラマを笑っていいのか、ちょっと心配だったんですよ。リカも麗美も一生懸命生きているんだから、それを笑ってはいけないような気がして。でも、やっぱりこらえきれず、大爆笑でした。

信子:ドラマを見た後、ミートソースが怖くなりませんでした?

庸平:普通のドラマなら「おいしそう!食べたい!」ってなるんでしょうけど、ニチョニチョした感じの効果音まで付けて。

信子:お皿とフォークが擦れる音も、鳥肌もの!パスタをかき混ぜるのが、早回しになったりスローになったりするのが怖くて、いろいろ想像しちゃうのよね。もしかしてソースに血が入ってるのかしら…とか。ああ、ミートソース、怖いっ!

庸平:あんな豪勢な家の食卓なのに、お母さんの作る特別な日のご馳走がミートソースとサラダだけ。それだけでも笑えちゃいましたが、リカにとってミートソースは母の味なんですよね。(『リカ』の劇中で)1人でレトルトのミートソースを食べていたリカにも、家族で楽しく食事をしていた過去があったんだな、と思ったら悲しくなっちゃいました。

「麗美が走っただけで『リカと同じDNAだ!』って盛り上がるのに、娘たちまで登場して。天才的でした!」(庸平)

信子:それにしても、タクシーを追いかけるシーンは、今回も最高でしたね!決して速そうには見えない走り方なのに、すばらしい脚力で!

庸平:まさか娘2人まで出てくるとは!麗美が走っただけで「リカと同じDNAだ!」って盛り上がるのに、娘たちまで脈絡もなく登場して。天才的でした!

信子:しかもあんなに爆走したのに、3人とも息切れしていないの。スポーツに生かせば、すばらしいアスリートになれたわよね(笑)。

浅香航大演じる宗像が乗るタクシーを追いかけ、追いついてしまう雨宮麗美(高岡早紀)

庸平:3話のハイライトにもなり得るこのシーンを、2話の「次回予告」で見せたじゃないですか。“出落ち”を先に見せちゃうのかと思ったら、あれを凌駕する物語が3話で展開する。「死ねばいいのに」「雨宮麗美28歳」などの“持ちギャグ”も1話から連発して、サービス満点でしたよね。

信子:「死ねばいいのに」は、私自身、ちょっとムカつくことがあると口から出そうになるし、あの舌打ちもマネしたくなる(笑)。昨今のコンプライアンス的に、大丈夫だったのかしらね?

庸平:高岡早紀さんが上品に言うからOKなんでしょうね。あるいは、『リカ』だから許されるのかも。

信子:高岡さんが面白がっているのが伝わってきたし、コミカルにならないギリギリのところに収めたさじ加減が素晴らしかったです。

庸平:高岡さんは、前作よりも若くなっているんじゃないかと思うほどの美しさで。花柄のワンピースがあんなに似合う人、他にいないと思います。

リカも麗美も花柄を好んで着る

「『一緒に前を向いて生きていきましょう』って言うくだり。あれは忍さん(浅香航大)が悪い!」(信子)

信子:高岡さんじゃないと演じられない役になったし、彼女の存在感だけで『リカ』の世界観を成立させた。高岡さんが生き続ける限り、永遠に演じてほしいくらいです。

庸平:信子さんは高岡さんの魔性ぶりに、だまされたりしませんでしたか?僕は「リカも麗美も人を殺したりしない!」と思いたくなってしまって(笑)。まぁ、実際に、麗美は誰も殺していなかったわけですが。

信子:私はだまされはしなかったけど、麗美に共感できる部分はありましたよ。夫を喪った麗美に、忍さん(浅香航大)が「一緒に前を向いて生きていきましょう」って言うくだりとか。あれは忍さんが悪い!

麗美も娘たちも魅了してしまう罪な男・宗像忍(浅香航大)

庸平:麗美が勘違いしても仕方ない、と。

信子:忍さんは「一緒に」じゃなくて「お互いに」って言えば良かったのよ。浅はかな大学生が、深く考えずに言っちゃうもんだから(ため息)。福引で当たったチューリップを「プレゼント」だと脳内変換しているような女性に向かって、そんなこと言っちゃダメ。

庸平:麗美がどんな人間か理解した上で、言葉を発しなければいけないわけですね。

信子:麗美のロックオンの瞬間は、たまらないんですけどね。でも、娘たちが帰ってきたのがわかっていて忍さんにキスしちゃうとか、やっぱり共感よりも怖さが勝ちましたね。

庸平:あのシーンは、(演出的に)あえて唇を映さないことで、“娘たちにキスを見せつけるのが目的”という麗美の意図を明確にしましたよね。あと『リカ』ファンとしては、プラトニックな部分を残してくれたのもよかったです。

信子:麗美が母であるより女でいたいタイプだとはいえ、娘たちはかわいそうすぎますけどね。

庸平:テストで99点取っても怒られるとか、ひどい話ですよね。でも、父親である武士(小田井涼平)もひどかった。バレエシューズを梨花(田辺)だけに渡したり、梨花だけ溺愛したら、そりゃあ、結花(山口)もモンスターになるだろうっていう感じで。武士はちょっとエッチだし、不倫もしてるし…。

信子:家政婦の幸っちゃん(福田麻由子)にまで抱きついちゃって…あんなピュアな子に抱きついちゃダメよ。不倫相手の千尋さん(阿部純子)ならわかるけど。

左から)雨宮武士(小田井涼平)、花村幸子(福田麻由子)

庸平:「誰でもいいのかよ!」って言いたくなりました。

――麗美の娘たちはいかがでしたか?

信子:梨花役が田辺桃子さんで結花役が山口まゆさん。キャスティングを見ただけで、「結花が怪しい」ってなんとなく察しちゃいました。芝居の上手な山口さんが、おとなしいままで終わるはずないもの。

庸平:田辺さんもよかったですよ。定規で自分を傷つけて付けたアザ(※)で「梨花=リカ」とミスリードさせるんですが、田辺さんに華も色気もあるから、そこに疑問が生じない。一方で、山口さんも奥底にある強さを垣間見せて「結花には何かある…」と感じさせていて。

※リカの手首の内側には、アザがある。

信子:フランス人形のような梨花を全編に渡って立たせておいて、日本人形のような結花が最後にバーンと弾けるのよね。

左から)結花(ゆか/山口まゆ)と梨花(りか/田辺桃子)。梨花がリカになるのかと思いきや、最終話で結花がリカになる、という逆転(リバース)が

庸平:僕は最初、母親である麗美が“最恐”で、リカもお母さんには敵わないっていう結末になるのかと思っていたんです。でも、麗美よりリカのほうが凶暴だった。母親である麗美の“純愛DNA”が歪んで凝縮して、純愛モンスターであるリカが誕生したという展開に持っていったのがすごかったです。

信子:このあとリカがどういう軌跡をたどって大人になるのか、いくらでも展開が考えられる。山口さん主演で続編も見たいですね。

庸平:(『リカ』で)看護師になるまでにどんな人生を送って、いったい何人殺したのかも、気になります(笑)。

――他の共演者もクセのある人が揃っていました。

庸平:『リカ』の「第2部」の“運命の相手”=隆雄さん(大谷亮平)もそうだけど、“ガタイのいい男は純愛モンスターには勝てない”っていうのが定番になってきましたね。

信子:小田井さんも確かにガタイがいい。そして、隆雄さんよりちょっとスケベな感じがいいのよね!昔、戦隊モノや昼ドラに出演していたことを知らない人は、「なんで純烈の人が?」って驚いたそうですよ。

『リカ』の世界観にピッタリ!と2人も絶賛

庸平:この世界観にピッタリで絶妙なキャスティングでしたよね。僕もキャスティング会議に参加したかった!(笑)

信子:幸っちゃん役の福田麻由子さんも、やっぱりお芝居が上手でしたよね。幸っちゃんは一度、雨宮家を離れたのにまた戻ってきちゃって。「ダメよ!」って言ってあげたくなりました。

左から)麗美(高岡早紀)、家政婦の幸子(福田麻由子)、結花(山口まゆ)、梨花(田辺桃子)

庸平:家政婦の“覗き見感”も出しつつ、事件の傍観者でもありつつ。同じ家政婦役の峯村リエさんも、下世話さを抑えてフラットに演じることで、何を考えているかわからない感じを醸していて、怖かったです。

信子:芝居が上手な人が計算して演じているから、普通のおばちゃんに見えるんだけどね。目のアップの怪しさには圧倒されました。

――改めて、『リカ』シリーズの魅力はどんなところにあると感じましたか?

庸平:松木創監督は、ドキュメンタリーや実録モノのドラマを多く手掛けている監督です。キャラクターの中の「人間」を真摯に撮る人だから、多少“サービス過剰”な演出でも、見ている側が冷めちゃう感じがないんでしょうね。こういう作品は、一歩間違えると視聴者が置いてきぼりになりかねないけど、「よっ!待ってました!」というテンションで受け入れられました。

信子:作り手が悪ノリしている感じが一切なくて、しっかりとした愛情を感じられるのよね。

庸平:『リカ』の第1部と第2部、『リバース』は別の脚本家が担当しているんですが、三者三様の“リカ”を作りつつ、同じ世界感を成立させているのもすごかったです。高岡さんの作り上げたキャラを作り手が楽しんだ結果が、この作品のスゴさにつながったんでしょうね。そういえば、番組のHPが「rika-28.com」なんですよ。遊んでますよね〜。

信子:それは気付いてなかった!

庸平:「オトナの土ドラ」の枠としてのつながりも絶妙なんですよ。1月放送の『その女、ジルバ』で「女は40歳から」って言っておいて、次に放送した『リバース』の冒頭のセリフが「永遠の28歳」って。開き直り方がハンパない(笑)。

信子:4月からは『最高のオバハン 中島ハルコ』ですもんね。「土ドラ」のファンと作り手の信頼関係を感じました。

――さて、6月には映画版が公開となります。予告編はご覧になりましたか?

庸平:リカ、空を飛んでましたよね!?ドラマと同じことはやっていられないという気迫がスゴいです。

信子:「スパイダーマン」みたいに壁をよじ登ったりしていたし、蓋を開けたら「アベンジャーズ」みたいなことになっていても、驚かないかも(笑)。しかも相手役は、“ガタイいい系男子”の市原隼人さん!

庸平:映画なんだからワイヤーアクション入れちゃおうよ、みたいな勢いがすばらしいですし、絶対に大きいスクリーンで楽しみたいと思います!

対談の一部を動画でも配信中