“目の保養”となるような麗しい男子を紹介する「眼福♡男子」企画のVol.57に藤原季節(ふじわら・きせつ)が登場。
公開中の映画「くれなずめ」では、友人の結婚式のために集まった高校時代の6人組の1人、田島大成(たじま・ひろなり)を演じ、笑いと切なさが入り混じる物語の中で、重要な一端を担った。
フジテレビュー!!では、藤原のインタビューを前後編に分けて公開。前編では、本作の現場で感じたことなどを語ったが、後編では藤原自身が今、感じていることなど、プライベートな一面も明かした。
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「進まなくてもいいんだ」と思えると、明るい気持ちになりました
――本作には観ていて「わかる~」と言いたくなるような、日常の何気ないエピソードがたくさんありますが、藤原さんが共感できたことはありますか?
具体的なエピソードにも共感しましたが、一番は、僕が抱いていた違和感のようなものを、(監督・脚本の)松居(大悟)さんも感じていたんだ、ということでした。
例えば、生きていて悲しい出来事に直面したときに、そこを乗り越えて前を向けない人はどうしたらいいんだろう、と。安易な希望の言葉が増えて、「がんばろう」とか「前に進もう」といった風潮が加速しているように感じます。そんなに白黒つけないでくれよ、もう少し待ってくれよ、そんな松居監督のメッセージに共感しました。
「くれなずめ」を観たとき、乗り越えられずにずっと悲しいと思っていてもいいんだ、と。「曖昧でいいんだよ」という背中の押され方をして、それが僕にとってはすごく心地が良かったんです。「進まなくてもいいんだ」と思えると、ちょっと明るい気持ちになりました。
――“くれなずめ”とは、前へ進もうとしても障害があってうまく進めないでいる状態を指す「暮れなずむ」を命令形にした造語ですが、藤原さんが「くれなずめ!」と思うことはありますか?
ちょうど昨日、布団の中で考えていたことなんですけど(笑)、思いを伝えることが大事、という固定概念がありますよね。でも伝えない、という伝え方もあるよな、と思って。
心に秘めることで、自分の中で伝えたいとか、伝えたかったとか、気持ちが残るじゃないですか。それって相手に伝えなかったとしても、何らかの形で表に出ると思うんです。例えば僕だったら、それが演技につながる、とか。伝えずに何か違う力に変えることもできると思うので、伝えることだけが正解ではないんじゃないか、と。
役としての“生活”を大事にしたい
――今、藤原さんが仕事をする上でポリシーとしていることは何ですか?
大成もそうでしたが、“役としての生活”を大事にしています。観てくださった方に、「どこかにこういう人が生活しているかもしれない」と思ってもらいたいんです。そう思ってもらうための役の構築の仕方をしています。だから、作品の中では描かれてない、役の“生活”を考えるのも好きですね。
「この人はどういう箸の持ち方をするんだろう?短く持つのか、長く持つのか」とか。「字はきれいなのか、汚いのか」とか。そのシーンごとに考えるのが好きで、そこから脱線するような演技は嫌だな、と思っています。例えば、400年前のイギリス人を演じたとしても、「わかるその感じ」って思ってもらいたいんです。
――人間を演じる以上、今を生きている人たちとそんなに変わることはないですよね。
どんなキャラクターでも、その感情を掘り下げていけば、すごくピュアで生々しいものがあると思うんです。子どもの頃に抱いた憧れであったり、誰かを好きになる気持ちであったり。そういう気持ちは誰にでもつながるんじゃないかと思うので大事にしています。
――藤原さんにとっては、そのやり方が合っているのですね。
日々のいろんなことが勉強だと思っています。僕、街を歩くことが好きで、片道1時間くらいの距離だったら、早く家を出て歩いて行くんですけど、その過程で人をよく観察しています。僕らが演じた作品を観てくださるのは、そういう街にいる人たちじゃないですか。だから、街で生きている人たちには、常にアクセスしておこうと心がけています。
こんな僕だからこそ、今回の大成のような生活感のある役をいただけることもあるので。そこから、大事なことにも気付けるのかな、と。
数年後に「全然楽しくないわ」って言える人であれたら
――藤原さんが今“眼福”しているものはありますか?
最近気づいたんですけど、陽の光に照らされているものって、何でも美しいんですよね。昼間に露天風呂に入ったとき、湯気が陽に照らされているのを見ながらそんなふうに思いました。それ以来、家でも花や観葉植物をベランダに出して、陽の光を浴びさせて、光合成をさせてあげています。
そこから人間も光を浴びないとダメなんじゃないか、とも思って、よく陽に当たるようになりました。この間は友人と湖に行って、ボートを漕ぎながら陽を浴びてきました。なので、今僕が“眼福”しているのは陽の光に照らされているものです(笑)。
――最後に、藤原さんが今後の自分に期待することを教えてください。
僕、自分に期待することってほとんどないんですよね。でも、数年後に「今、楽しい?」って聞いたら、「全然楽しくないわ」って言える人であれたら、ちょっと安心します。
――楽しい、ではなくて、楽しくない、なのですか?
楽しくない方がいいんです。世界で起こっている他人事を自分事として捉えて、仕事と向き合っていきたいです。将来の自分が、それを他人事と思うような人にはなっていてほしくない。そして、誰かの役に立つような仕事ができていたらいいですね。
――それは役者に限らずですか?
役者でなくてもいいので、何かしらの使命感を持って生きていてほしいです。もちろん役者をやれていたら、それはうれしいですけど、将来のことなんて、確実なことは何もないじゃないですか。1年後すら何をしているかわからない。それは誰にでも言えることだと思いますけど。だからこそ、(自分が)偉そうな人にはなってほしくないです。なんかすみません。“眼福男子”らしからぬ発言ばかりで(笑)。
撮影:稲澤朝博
<「くれなずめ」ストーリー>
高校の帰宅部仲間6人が、友人の結婚式に参加するため、5年ぶりに集まった。
優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、東京の会社に勤める大成(藤原季節)、地元の工場で働くネジ(目次立樹)。
高校時代、文化祭でコントをした結果仲良くなった6人は、卒業後も毎年集まってはバカ話に興じていた。だが、ある出来事を境に疎遠になっていたのだ。
欽一の呼びかけで久々に再会した仲間たちは、結婚式で披露する余興の打ち合わせを行ったり、カラオケでだべったり、これまでも変わらない時間を過ごす。
そして、結婚式当日。渾身の赤フンダンスを披露するはずが昔のようにはバカをやれず、盛大にスベってしまった6人は、すっかり意気消沈。さらには、2次会までの3時間余りをどう過ごそうか悩んでいた。会場近くの店はどこも混んでおり、6人は仕方なく道をほっつき歩きながら、他愛無いやり取りで場をつなぐ。
ふとした会話で脳裏にフラッシュバックするのは、過去の思い出。明石は、吉尾と出会った12年前の高校時代を回想し、ネジは大成と吉尾とお泊り会をした9年前を懐かしむ。欽一は仙台で働く吉尾を訪ね、おでん屋で飲んだ6年前に立ち返り…。やがて明かされていく、それぞれの胸にしこりを残した、5年前の“あの日”。
「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな。なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも」
そう、彼らは認めたくなかった。ある日突然、友人が死んだことを――。後悔し続けた明石と「はっきりさせようとすんなよ!」という欽一の取っ組み合いを発端に、それぞれは胸にくすぶる想いをぶつけ合い、わだかまりを解消させていく。
5年分のすべてをさらけ出し、再び団結した仲間たちは、「過去を書き換える」一世一代の大芝居に挑むのだった。
©2020「くれなずめ」製作委員会
2021年5月12日(水)より全国ロードショー
最新情報は映画「くれなずめ」公式サイトまで。